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英雄は最後に笑った  作者: 蝶佐崎
第二章
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玲奈:黙秘


「それで?」

 声は、案外平静に出た。

「それが、何か?」

「死ぬ前の言動に注意なさい。貴方の言動が、あの子…………アンヌの運命を左右してしまうのだから」

 自分のような、ただの外国人にアンヌが左右されるはずがない。そう、胸を張って断言できる。

「せやったら、あたしはいつ、死ぬんですか?」

「言ったら面白くないわ。敢えて言うなら、そうねぇ…………」

 光が向きを変え、女性を照らす。

 長い黒髪を束ね、着物についた草を払う女性は、口元に手をあてくすくすと笑った。

「貴方の妹が、貴方の敵の手先になるか、もしくは、娘を生んだ時かしら」

 その言い草に、ぞっとした。

「手先やて………………異界の!?」

「名前は知らないわ。ただ、妹は死体となり、魂を入れられ、別の者として生まれる」

 本に記してあった、そのように妹は狙われるのか。

「それを防ぐ方法は!?」

「さぁ…………始神にずっと側に居てもらうぐらいしか、予防法は無いわよ」

 女性はそれだけを言い、物憂げに林を見る。玲奈もつられて見ると、アンヌが立っていた。

師匠(せんせい)

 師匠!? と玲奈がビビっている間にも、二人の会話は進む。

「やはりアンヌだったのね。どうして此処に? 未来の私が寄越したのかしら?」

「そのようなものです。…………師匠が、ここに来れば良いと」

 ふうん、と女性は頷き、玲奈の背を押してアンヌの方にやった。

「では、私は彼と話しましょう。あなた方は帰りなさい」

 やんわりとした言葉と共に、二人に闇が巻き付く。アンヌは観念したように目を閉じ、玲奈の目をふさいだ。

 玲奈が最後に見たのは、楊志の元に歩いていく、女性の姿だった。


 気が付くと、玲奈はアンヌが居た屋敷に戻っていた。アンヌは彼女を下ろすと、縁側に座り込む。そのまま何かを考え始めた。

「あのー…………アンヌさん?」

「何? そういえば貴方、師匠と何を話していたのかしら?」

 玲奈が死ぬ云々の話など、彼女には言えまい。

「あー…………すみません、邪魔するんも嫌なんで、退散します」

「待ちなさい」

 ひょい、と襟首をつかんだアンヌはどこからか紙を取り出し、何かを書き始めた。書いた紙を玲奈に突き出す。

「これ、お使いね。享に渡して」

「はい?」

 紙を見るが、丹洪とも組織とも違う言語に首を傾げた。だが、無粋だろうと何も聞かない。

「分かりました」

「余計な詮索をしないでくれていたのは助かるのだけれど…………まあいいわ、貴方が見た私達の会話も、享に伝えて頂戴」

「はい」

 立ち上がると、酒瓶を渡された。

「お駄賃よ。またおいでなさい」

 林が動き、道ができる、玲奈が屋敷の庭らしきところから足を出し、林に入ると、屋敷は消えていた。

「何やったんや、今のは…………」

「だから行ったデショ? 屋敷だって」

 耳元で聞こえた声に飛び上がる。享がくつくつと顔の見えない笑いを立てていた。

「どうでした? 結構広い屋敷デショ? 初めて来た人間はよく迷うんデスヨ」

「いや、その…………」

 玲奈は享に紙を渡し、鏡の中で見た出来事を話した。ただし、死ぬ云々は伏せてある。

 話を聞いた享の反応は、とても早かった。玲奈の襟首を掴み、国王のいる鈴無屋敷に向かう。その速度が馬より早いとも伝えておこう。

(アンヌさんも楓さんも、襟首を掴むんやな。義兄弟て言うてたし…………あの女性と関係あるんかな?)

 そう玲奈が考えている間に、享は国王に組織に戻る旨を話し終えていた。

「玲奈、また来い」

「あ、うん」

 享は玲奈を掴んだまま、窓を開けて飛び降り、

「わ!?」

 片手で目の前に現れた窓にしがみついた。もう片方の手は玲奈を掴んでいる。



 お久しぶりです。蝶佐崎ダイです。

 身勝手ながら、個人の事情で更新が停滞しています。

 更新も受験が終わるまで満足にできそうにありません。

 重ね重ね、大変申し訳ありません。


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