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英雄は最後に笑った  作者: 蝶佐崎
第二章
115/117

アンヌ:過去


 アンヌは目を見張った。

 目の前、むしろ切り立った崖の上で青年と男が切り結んでいる。喚声(かんせい)を聞いて振り返って見れば、人間の兵が入り乱れて戦っていた。どちらも人間だ、異界の姿は無い。

 男に見覚えは無いが、青年には見覚えがある。異界の主だ。トレードマークと()している左頬の痣は無い。

 つまり、ここは過去だ。

 屋敷を漁っていたアンヌは、師匠が言っていた「時を(さかのぼ)ることのできる鏡」らしきものを発見した。さっそく使ってみようと思い立ち、主が居た時代が分からないので、師匠が覗いた形跡のある時代からと決め、その三つ目で偶然にも主を発見した。

 異界の主が兵士達を見ようとして、アンヌを見つける。

「あんた、ここは危険だ!」

 そう言いながら手で何らかの合図を送る。アンヌも見たことがある、兵に陣形の変更を命じているのだ。

 男も同様に叫び、また二人は一段と激しく戦う。

 アンヌの時代で主が生きているのだから、この時代でも異界の主が勝つだろうと思い、戦いが終わったら話を聞こうと、アンヌは物陰に引っ込む。

 が。

 不意に崖が崩れ、二人とも下に落ちていった。

「!?」

 兵士も動揺している。だが、副官らしき人物が兵士らを纏め始めた。

 それよりも。

 アンヌも崖から飛び降り、二人を追う。

 下に着地して辺りを見回すと、滝壺の中に男の死体が有った。

 異界の主の死体は、どこにも無い。

「アンヌ?」

 不意に呼ばれ振り返ると、師匠が居た。

「貴方、アンヌ・ホーストンよね?」

「はい」

 恐らく、昔この時代に入った師匠だ。

 それに彼女も気付いたらしく、ああ、と自己紹介を始めた。

「私は貴方が十五歳の時の人間よ」

「それから千年程、経ちました」

「あらぁ…………」

 のんきに手を頬にあてる師匠は、やはり強者だ。そう痛感しつつ、アンヌは口を開く。

「異界の主がどこなのか、ご存知でしょうか?」

「知らないわ。ただし、昔の彼なら知っている」

 師匠は、ある年代を教えてくれた。

「鏡でその時代に行きなさい。決して、誰にも見つからないように」

 アンヌは屋敷に戻った。

 戻ると「アンヌさん」と呼ぶ声に気付く。「道」を開けると、そろそろと警戒しながら玲奈が入ってきた。

「ようこそ、屋敷に」

「お邪魔します。しかし、かなりの閉鎖空間ですね……」

「でしょう? ああ、そうだわ」

 玲奈の襟を掴み、片手で鏡を操作、師匠が教えてくれた時代に合わせる。

 見ていた玲奈の顔が、青ざめた。

「ア、ア、アンヌ、さん!?」

「私も一緒に行くから」

「そういう問題やないですよぉッ!?」

 玲奈を鏡に叩き込み、アンヌも鏡に飛び込んだ。




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