神無:暇
謎の女性が消えたあとで、神無は唯と緑香の稽古を眺めていた。
緑香もそれなりに心得はあったのか、素手になると俄然強くなる。対して唯はかなりの強者だ。
また、組み合いで緑香が飛ばされた。が、受け身をとって直ぐに立ち上がる。
(暇だなあ)
あくびをかみ殺し、神無は「故郷」を見回す。
主の言っていた人物はまだ現れない。
と、緑香が神無の方に飛んできた。それを慣れた様子で受け止め、唯に投げ返す。
「暇そうだね」
「暇なんです。彼はいつ現れるのか、分からないんですか?」
淡い浴衣の彼だ。
「さー、わぁかんないね」
主の言う「呆けた爺」は世界各国を旅しているため、なかなか見つからないらしい。
唯が二人に歩み寄ってきた。緑香はと視線を巡らせると、地面に埋没している。
「……彼女は放置してもいいんですか?」
「陰陽師の練習も兼ねている。緑香殿が自分で回復しなければ意味がない」
そう言った唯は溜め息をつきつつ、神無のとなりに座る。
唯は、神無が異界に与すると気付いていない。
(今なら)
今なら、主の望み通り、彼を殺せるのではないか?
「神無君、だっけ?」
名無しの彼が、腕を掴んだ。
「思うだけならまだいい。でも、それを実行しようと腹を決めた時、君は故郷から放り出されるよ」
見透かされての警告に、殺意は急速に萎んでいく。
「? 俺に何か遺恨でもあるのか?」
「……あまり気にしないで下さい」
今回は彼に救われた、と思っていいのだろう。
緑香が起き上がり、唯を呼んだ。唯が立ち上がり、彼女に飛びかかる。
「…………胃痛は感じませんが、かなり退屈ですね」
「なーにか言った?」
何も、と嘯いた神無はまた寝転び、眠りについた。
お久しぶりですー・・・
風邪でゲポゲポしてたらいつの間にか一ヶ月ぐらい経ってました・・・