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レキ:見えない思惑
改めて、異界の主は溜め息をついた。となりでレキも溜め息をついている。
あの女性はにこにこと底の見えない笑みを浮かべつつ、最大限に二人の混乱を引っ掻き回してどこかにとんずらした。
「もっと知りたかったのに…………」
ぶつくさ呟くレキをよそに、異界の主が立ち上がり、名簿を手にとる。確か、異界の者の名前を記した名簿だったはずだ。
レキが主の横から名簿を覗き込むと、ちょうど彼は頁をめくる手を止めたところだった。そこに書いていた約五十名のなかの一人の名前を、主は凝視している。
「主?」
「イルードゥを覚えているか。あいつを使いたい」
彼を忘れるはずもない。
「使う、って」
だって、彼は。
「彼、確か異界を裏切ったんじゃありませんでしたっけ?」
お久しぶりです!
そして短くなってすみません!もう一本上げます!