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英雄は最後に笑った  作者: 蝶佐崎
第二章
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トーラ:悪夢



 お手洗いと称して部屋を出たトーラは、嫌な動悸が収まらず、その場に座り込んだ。

 今、二人の放った言葉のどれかが、記憶に引っ掛かった。どれかは分からない。

 が、その言葉は昔の自分には嫌な言葉だったようなのだ。

(怖い)

 目の前が赤い。


 血。鎌。床。城。赤毛の少女。目。動かない。心臓に鉈。

(オレ、は)

 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だいつか殺される殺される殺される殺される殺される殺されるコロサレルコロサレルコロサレルコロサレルコロサレルコロサレルコロサレルコロサレルコロサレルコロサレルコロサレルコロサレ


「トーラ!?」

 目の前にギンがいて、思わずその腕を掴み、倒れ込む。

「トーラ、どうした!?」

「二人とも、何があっ……トーラ!?」

 顔を上げると、二人の心配した顔があった。震える、自分の手が見えた。

 ここは、安全だ。

「…………今、別の景色、見えて」

「フラッシュバックか?」

 ギンが勢い込む。それを制した五十嵐が、肩を掴んできた。

「ギン、落ち着け。それからトーラ。俺達がそばに居るから、顔を洗った方がいい」

 そのまま洗面台に引き摺られる。言われるがままに顔を洗って、少しだけ落ち着いて、息を吐いた。

「悪い、ユーイチ。すっとした」

「ああ」

 慣れた様子で摘まみ上げられ、椅子に座らされる。ギンのあっけにとられた顔が、ちらりと見えた。

「ユーイチお前、慣れてねーか?」

「分かるか? 相方の家に子沢山な夫婦が居てな、相手をしているうちに慣れた」

 子供扱いされていたらしい。

 トーラは思わず噴いて、笑った。

「笑ったな」

 五十嵐が顔を覗き込み、目を細めて笑う。が、直ぐにその笑みは引っ込んだ。

「正直、トーラが今思い出した光景を話した方が、記憶を取り戻す近道にはなる」

 思わず、顔が強張った。

「だが、無理矢理思い出す必要も無いだろ? 地道に、今までの計画通りに、知り合いの商人に会いに行く。それでもいいんじゃないか?」

 あっさり言う五十嵐。ギンはトーラを見て、肩を竦めて笑った。

「どうせ知り合いのおっさんには会いに行くんだ。話すのが難しいんなら話さなくてもいいんじゃねーの?」

「ふ、二人とも」

「俺の目的は変わらない。ならば、行く過程も問題無いだろ?」

 ケロッと五十嵐は話し、ギンは頷く。

「あ、話したいなら話してもいいぜ!?」

 軽いノリで言われて、トーラも笑いながら返すことができた。

「お言葉に甘えて止めとく」

「ん。じゃー話を変えるが、ユーイチ」

 いきなり矛先を向けられた五十嵐は俺か!? とやや戦きながらギンを見る。ギンはトーラが見たことが無い、妙な顔をしていた。

 目は厳かに輝き、存在感がビシビシと出ている。なんだか、凄い。

 ギンはすいと腕を上げ、五十嵐を指す。一瞬僅かに風がなびき、輝く銀髪を揺らしていったのは気のせいだろうか。

「タンコーでは何が起きた。全て話せ」



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