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第61話「村を襲った奴らに必ず復讐せねばな」

「マルス! よく無事だった!」


「アルミンは……アルミンは来ていないのか?」


 ゾブリに対する聞き取りを終えた頃、救護所の外から大きな声がした。呼ばれているのは、アスミタ村から逃れてきた子供達の名前ばかりだ。いや、ここまでこれなかった子の名前も混じっている。


「あれはまさか……」


「俺の指揮下には、アスミタ村出身の者が居てな。連絡して呼び寄せた所だ。その方が逃げてきた子供達も安心するだろうと思ってな」


「残念な事になってしまった人もいるようですね」


 久しぶりに父と子が再開できたのは幸いであった。長らく互いに会う事が出来ず、しかも村が襲撃されたばかりなのだ。子供達にとってこれほど頼りになる事はあるまい。しかし、ここまで逃げて来れなかった子供もいる。我が子と会えるかもしれないと思っていたのに、それが叶わなかった父親の気持ちを思うと哀れである。


 だが、子供に会う事が出来た父親とて手放しで喜べるわけではない。妻や年老いた両親はこの場まで来ていない。どこか別の場所に逃げ延びたのかもしれないが、殺害されてしまった可能性も高い。また、子供がいない者の中には、恋人を残して来た者もいる。しかし、彼女らが生き延びていると言う保証はどこにもないのだ。


「彼らを、アスミタ村の探索に連れて行っても構いませんか?」


「許可しよう。人選はお前に任せる」


 アスミタ村の地理には、休暇中に滞在する事である程度詳しくなったのだが、それでも村の出身者には敵わない。彼らを連れて行くのが一番良い。


 アンリ大将に許可をもらったゼニス大尉は、救護所の外に出てその件について話に行くことにした。


「せっかく会えた所だが、少し良いかな?」


「なんだ、あん……あなたは?」


 突然何者かから話しかけられたアスミタ村の男は、当惑した表情だ。一応、ゼニス大尉の階級章を見て言葉遣いを修正したのだが、邪魔しないでくれとの意思が伝わって来る。


「父ちゃん。この人が村に居た隊長さんだよ」


「ああ、あなたが……」


 どうやら手紙か何かで第1中隊の事を聞いていたらしい。表情がかなり和らいだ。


「村のために、相当戦ってくれたそうですね。感謝します」


「いえ、当然の事をしたまでです。そして、この様な事態になってしまい、何と言ってよいか……」


「そうですね。俺はこうしてマルスが生きてくれていたからまだ良い方ですが、見つからない者も大勢いますから。ああ、申し遅れました。私はシャポーと言い、伍長をしております。村では、狩猟関係の取りまとめをしてました。あと、こちらの者を……」


 自己紹介をしたシャポーは、近くにいた男を手招きして呼び寄せた。シャポーは三十代前半位に見えるが、もう一人の男は二十代前半位に見える青年だ。


「あなたが、第1特別歩兵連隊第1中隊長の、ゼニス大尉ですね? 私はボルトンと言います。父からは手紙で色々聞かされています」


「父?」


 少尉の階級章をつけたボルトンと言う青年に、ゼニス大尉は聞き返した。この青年の父親とは、アスミタ村にいたどの老人であろう。


「父の名は、ノールといいます」


「ああ、村長さんか」


 あの村長は、かなりの年配だった様だが、この様な若い息子がいるとは思っていなかった。


「確認しておくが、ボルトン少尉がアスミタ村出身者の代表と認識して構わないかな?」


「……父の安否が不明な今、そう言う事になりますね」


 階級的にもそうなるだろう。まさか、徴兵された中に少尉よりも高い階級の者が居るとは思えない。


「ならば君に言うが、これから俺は部下を率いてアスミタ村の探索に向かう。生き残りがいるかもしれないからな。そこで、アスミタ村出身の者にも来てもらいたい。その方が効率が良いからな。軍団長の許可も得ている。適当な人間を選んで、五分以内に俺のところまで来させて欲しい」


「それは望むところです。ここに居ない者が全員死んだなんて、認めるわけにはいきません。必ず、無事な者を探し出しましょう」


「では、俺が見繕っておきますよ。子供がここまで来れなかった奴が主体になりますが、あまり人数が減らない様に考えておきます」


「頼む」


 シャポー伍長は、アスミタ村出身の兵士達の方に進んで行き、集合させると指示を始めた。


「彼が、村の若い男の代表格と言う事かな? ああ、君を除いてと言う事だが」


「いえいえ、確かにその通りですよ。腕っぷしも強いし、勇敢で情に篤い男なので誰からも慕われています。私は次期村長と言う立場なので気を使って貰ってますが、実質彼が若衆のリーダーと考えてくれて結構です」


 ボルトン少尉はシャポー伍長をかなり持ち上げているが、ゼニス大尉に見た所、ここまで客観的に自分自身も含めて評価できると言う事は、ボルトン少尉も中々の人物だと言える。


「ところで、君は少尉に任官している様だが、士官学校を出たわけじゃないんだよね?」


「ええ、大学を卒業しているので、徴兵後に士官待遇となっただけです」


 辺境の農村から大学に進学しているのだ。相当優秀だったことは疑いようも無い。


「そうか、君を大学まで送り出してくれた村の人たちに、感謝すると良い。そして……」


 ここで、それまで穏やかであったゼニス大尉の口調と表情が一変した。


「そして、村を襲った奴らに必ず復讐せねばな」


 断固たる口調で言ったゼニス大尉を見返しながら、ボルトン少尉も決意の固い眼差しで頷き返すのだった。

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