第27話「あれはウランという鉱石です」
ジェシカ少尉の爆発実験により、爆心地の近くの山肌が崩れて横穴が現れた。かなり奥深い横穴の様で、流石にこれだけの穴が爆発で空いたとは思えない。そのため、ゼニス大尉とジェシカ少尉は穴の正体に興味を覚え、調査を開始した。
「そういえば、村の人がこの山は元鉱山だったとか言ってたな。どこかの商人だか何だかが、採掘していたらしい。多分、その採掘抗だろう。閉鎖して穴を塞いでいたのが、爆風で出てきたんじゃないか?」
「その、鉱山の話は私も聞きましたが、妙なんですよ」
「妙?」
「鉱山と言う割には、何の鉱石が出ていたのかはっきりしません。村人は採掘に関わっていなかったそうですから、そこまでは分かります。でも、地質学上、この山から鉱石が出るはずないんですよ」
「ほう?」
ゼニス大尉は、ジェシカ少尉の意見を聞き、直感的にきな臭さを感じた。
まずもって、現地の村人を労働力として使わない事が怪しい。労働者を外から連れて来るのは金がかかる。宿泊所やら食事やら、設置するにはかなりの投資が必要なのだ。その点、地元の住人を雇えば、住む場所などの費用が抑えられる。
それに、ジェシカ少尉の言う事が正しければ、どれだけ穴を掘っても鉱石など出てはこない。穴を掘るのにも金がかかる。鉱石が採掘出来れば採算が取れるのだが、出ないのではそうはいかない。これではまるで、穴を掘る事が目的になっているみたいではないか。
きな臭さと同時に、興味も湧いてくる。二人は火を起こして松明を作り、穴の中を直接調べることにした。穴の入り口には、特選遊撃隊のメンバーを待機させておくことにした。爆発で地盤が緩んでいる可能性があり、土砂崩れで入り口が塞がってしまう可能性があるからだ。何か緊急事態が起きたなら、救助してくれるだろう。
坑道はまっすぐな作りで特に迷うような事は無かった。少しばかり歩くと、すぐに突き当りに到達した。これはやはり妙である。村人の話によると採掘は数年間に及んでいたらしい。数年間かけてこれだけしか掘れないとは思えない。そもそも坑道の地肌を見る限り、何かの鉱石が採掘できるような場所でない事は、素人のゼニス大尉にも分かる。
坑道の最深部は、少し拓けた作りになっていた。松明をかざしてみると、そこにはいくつもの木箱が山と積まれている。これも妙な話である。鉱山ならば坑道の最深部はこれから掘り進むために、物資が積まれている訳がない。これはどうやら、この木箱を隠していると判断するのが正しいだろう。
「開けてみるぞ。松明を持っていてくれ」
松明をジェシカ少尉に手渡したゼニス大尉は、木箱の一つを選んで開けてみることにした。木箱は釘を打たれて封をされているが、腰に差していたナイフでこじ開ける。
松明しか光源が無い中苦労しながら封を開けてみると、中には茶色っぽい石が入っているのが確認できる。他の木箱の中身も同じであるとするならば、ここには何かの鉱石が山と積まれている事になる。
それならば「ここは鉱山ではなく何かを隠しているのでは?」という予想は、単なる邪推であったのだろうか。それにしても、この様な何の変哲も無さそうな石が隠されているとは、一体どうした事か。
「何だろうな? この石」
「ちょっと待ってください! 私が確認します。持っててください」
言うが早いか、ジェシカ少尉は松明をゼニス大尉に押し付けて、茶色い石を詳しく見始めた。いつものジェシカ少尉からは想像もできない剣幕に、ゼニス大尉は驚きを隠せなかった。
しばらく見ていたジェシカ少尉は、ゼニス大尉に向き直っていった。
「いったんここを出ましょう」
「ああそうするか。どうする? 一応箱をひとつ位持ってくか?」
「それはいけません!」
「お、おお?」
ジェシカ少尉の鋭い声に、ゼニス大尉は手に持っていた石を取り落とした。
「私の見立てが間違っていなければ、この石は危険です。一つも持って行ってはいけません。それに、あまり長居をするべきではありません。すぐに戻りましょう」
「分かった。少尉がそこまで言うなら、従おう」
どうやら、この石の正体は、ジェシカ少尉が専門とする科学の分野に関わる物らしい。ならば、科学の素人であるゼニス大尉はプロの意見に従うべきだ。
「ところで、あの石は一体何なんだ?」
坑道の来た道を戻りながら、ゼニス大尉はジェシカ少尉に尋ねてみる。
坑道に、何か隠されているのではないかという予想は当たっていた。だが、ゼニス大尉が予想していたのはもっと別のものだ。金や銀などの貴重な財宝であったり、反乱のために集めた武器弾薬などだ。まさか、あの様な小汚い石が隠されているなど、全くの予想外であった。
「あれはウランという鉱石です。場合によっては人体に影響を及ぼす放射線というものを発していたり、加工して使う事により核分裂という現象を起こすことも出来ます。これを爆弾として使えば、街が一つ壊滅するでしょう」
ジェシカ少尉の語るあの小汚い石の正体は、ゼニス大尉の想像をはるかに超える途方もないものだった。




