表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/24

家族を紹介


 オルファが着替えを終え、ソファでウトウトしだした頃、ドアをノックする音がした。


「どうぞ」


 とオルファが応じると、ドアがスッと開き、メイド長が、


「お食事の用意ができました」


 と告げた。


「分かりました。向かいましょう」


 そう言ってソファから立ち上がるオルファ。


「こちらにどうぞ」


 と案内され、廊下を移動する。

 そしてドアを開けられ室内に入ると、広い部屋に大きなテーブル。

 ドアから見て一番奥の席の横に立つのは、当主であるリーゼス伯爵。

 そして、他にも席に座らず立っている人達。

 おそらくリーゼス伯爵の家族であろう。


「ほう! そのような服もお持ちだったか」


 と、リーゼス伯爵に話しかけられ、


「戦闘服以外はこれしか無いんですけどね」


 と答えたオルファに、


「どこに出ても恥ずかしくない服装ですな」


「ミッドランド王国での正装ですから」

 と答えたオルファ。


 ミッドランド王国は、15年ほど前までは小さな国であったが、その小ささゆえ他国から攻められやすかった。

 攻め込んできた敵国をことごとく撃ち破って逆に攻め返して吸収し、どんどん大きくなって今のミッドランド王国があるので、正装はどこか軍服のような雰囲気がある。


 その初期からミッドランド王国に食糧の支援をしたのが、隣国でもあり友好国である、リーゼス伯爵が爵位を受けているオルコ王国だ。

 オルコ王国としては、宗教や統治の仕方が似ているミッドランド王国を防波堤代わりにして、ミッドランド王国に戦争を吹っかけてくる、異教徒の国を弱らせて欲しかったという思惑もあったが、結果的に隣国が力をつけた形になったが、友好国だったので今のところ問題はないとの判断である。


 話がそれたが、オルファの服は全体は黒にまとめられ、紫色の縁取りのようなデザイン。 


 キース傭兵団の正装は、パーソナルカラーの縁取りが違うだけで、全員同じデザインである。


 ちなみに団長だったキースは赤である。


 襟は高く立っており、肩には銀で出来た鷲の頭部をあしらったモチーフのようなものが取り付けられている。

 このモチーフは、ミッドランド王国内では、王に認められた者しか、付けることがゆるされない物である。

 家ではなく個人に与えられる物だ。


 袖に銀のカフスボタン、光沢のあるシューズ。

 頭髪はというと、オールバックというのが1番適切であろう。

 服装や髪型などは、立派な青年が装いなのだが、ただオルファは見た目が幼く少年に見えるので、似合っていると言えるのかは少し疑問が残るが。


「どうぞ、座ってくだされ。家族を紹介しますので」


 と着席を促すリーゼス伯爵。


「では、失礼します」


 そう言ってオルファが席に座ると、リーゼス伯爵が、


「息子のアンドレスです」

 

 と、伯爵の右側の席の所に立っていた、三十路半ばの男を紹介した。

 180センチには少し足らないくらいの背丈に、細い体付きで少し繊細な印象を受ける。

 

「初めまして。父と娘を救って頂き感謝を」


 アンドレスが、オルファに感謝の意を伝える。


「その妻、エルサ」


「エルサです。私も貴殿に感謝を」

 

 とこちらも三十路半ばの細身の女性。アンドレスより10センチほど身長が低い。

 長く真っ直ぐ伸びる金髪が印象的だ。


「孫のエドワードとパトリック」


「エドワードです。よろしく」


 18歳くらいの青年。

 短く刈り込んだ金髪に、程よく鍛えているだろう体躯。


「パトリックです。妹を助けてくれてありがとう」


 こちらは少しエドワードより細身だが、それでも鍛えていそうな少年。


「最後に一緒に助けていただいたエレナです」


「改めましてエレナです。オルファ様には感謝しきれません」


 とエレナが頭を下げる。


「傭兵をしております、オルファと申します。粗忽者ですがよろしくお願いします」


 と、全員の挨拶が終わってから、名乗ったオルファ。


「では、食べながら話そうか」


 リーゼス伯爵の言葉で、家族が席に付く。


「まずはお礼の話をさせていただきたいのだが、金以外に何か欲しいものは無いだろうか?」


 と単刀直入に聞いたリーゼス伯爵。

 それとなく聞くと言っていたのではないのだろうか?


「欲しいものですか? 急に言われても思い浮かぶ物が無いのですが」


「我が領には、いつまで滞在されるので?」


「目当ての魔物を倒すまでは、とりあえず滞在するつもりです」


「その魔物とは?」


「鎧竜が居ると聞いてきたのですが」


 鎧竜とは、この世界に数多く種類が存在する竜の一種で、翼は無いが強靭な鱗を持つ、四本足の竜である。

 センザンコウという生き物を、凶暴そうに魔物化させた姿を想像してもらえるといいかもしれない。


「鎧竜ですか! 確かに居ますな。ここからそう遠く無いヒエン山脈に数匹確認できておるが、何故鎧竜を?」


「キース団長……まあ、今は子爵ですけど、鎧竜の鱗や皮で鎧を作りたいらしく、狩ってきてくれと頼まれましてね。自分で行けばいいと言ったら、領地改革で忙しくて手が回らないと言われましてね。世話になったし、お礼の意味も込めて取ってこようかと」


「なるほど。しかし鎧竜は手強いですぞ? 攻撃は体当たり一辺倒ですが、とにかく固い。一人で大丈夫ですか?」


「翼竜よりは弱いと聞いたのですが?」


 翼竜とは、四本の手足とは別に、背中に翼を持つ竜であり、竜種の中ではかなり凶暴で強力な種類である。

 ちなみに空を飛ぶ竜は他にワイバーンという、二本の足と翼を持つ竜も存在するが、ワイバーンは翼竜ほど大きくも無いし強くも無い。

 それでも人にとって脅威には違いなく、村や町ならばワイバーン一頭で壊滅させられたりする。


「確かに翼竜と比べれば弱いですが、翼竜は大人数の魔法使いで空から撃ち落としてから、大勢で囲んで倒す魔物でしょう?」

 

 と、アンドレスが口を挟むのだが、オルファは、


「いや、一人で狩れましたけど?」


「「「「「え?」」」」」


 その場の者達の声が揃う。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] アンキロサウルスが真っ先に脳内に出て来ちゃった(笑)
[一言] (*ゝω・*)つ★★★★★
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ