伯爵邸
昨日、私の作品である、転生したら兵士だった?!のコミックスが発売となっております。
是非お手に取ってくださいませ。
暫く進むと、護衛が一人だけ馬を駆け出す。
当主の帰宅を屋敷に先に伝えに行くためだ。
やがて見えてきたのは、屋敷を取り囲む塀の上に見える、大きな屋敷。
伯爵の屋敷なのでデカイのは当然かもしれない。
門番の居る門の前に馬車が到着すると、門番は何も言わずに門を開ける。
ゴーレムに乗るオルファを、門番がチラリと見はしたが、止められることはなかった。
そのまま馬車とオルファは進み、屋敷の玄関先に到着すると、すでに屋敷で働く者達が勢揃いしていた。
オルファはベガから下りると、ベガを魔法倉庫に収納した。
そして、馬車からおりたリーゼス伯爵に、
「閣下、大変なことに巻き込まれたとのことで、ご無事でご帰宅なされなによりです」
家令か執事か分からないが、初老過ぎの男が優雅に腰を折りながらそう言う。
「ああ、護衛が8人もやられた。そこのオルファ殿に助けて貰えなければ、帰って来ることは出来なかっただろう。狙いはワシだった。何処の手のものか直ちに調べろ!」
そう命令するリーゼス伯爵。
「はっ! オルファ様、家令のトーマスと申します。屋敷で働く者を代表してお礼申し上げます」
オルファにも腰を折る。
オルファは、
「こりゃ、ご丁寧にどうも。お助けできて幸いでした」
とトーマスに会釈して返す。
「オルファ殿、今日は泊まっていってくれ。謝礼も用意せねばならんしの」
とのリーゼス伯爵の言葉に、
「では、御好意に甘えまして」
と応じたオルファ。
「客室にオルファ様をご案内せよ」
トーマスがそう言うと、
「承知しました」
と、少し年配の女性が一歩前に出て言う。
「オルファ様、メイド長のエリーゼと申します。どうぞこちらへ」
そう言ってエリーゼが、オルファを屋敷内に誘導する。
そうして通された部屋に入ったオルファは、
「ふぁあああっ。ちょっと私には豪華過ぎる気がするのですが?」
とエリーゼに言うと、
「閣下とお嬢様の命の恩人です。これぐらい当然でございます」
と、優雅にお辞儀しながら言うエリーゼ。
オルファの通された部屋は、大きなベッドに豪華なソファ。
見るからに高そうなテーブルに椅子。
オルファがソファに座ってみると、程よい反発力としっとりした革の感触。
座ったまま天井を見上げたオルファが、
「天井にまで彫刻が彫ってあるのか」
と感嘆の声を漏らす。
「後ほどお食事のおりにお呼びに参ります。部屋にシャワールームがございますので、汗をお流しください。洗濯物はこのカゴに入れて、廊下に出しておいてくだされば、すぐにメイドが洗濯いたしますので。あ、着替えはございますか?」
そうエリーゼが言うので、
「ありがとうございます。着替えは持っていますので、大丈夫です。まあ、綺麗な服というと公式用が一着あるだけですが、大丈夫だと思います」
と答えると、
「それはどのような?」
「世話になった人の陞爵パーティーで着たやつです」
「それなら充分でございます。何かありましたら、呼び鈴でお呼びくださいませ」
エリーゼは一礼してから、部屋を後にする。
「団長達も、こんな部屋で生活してるのかねぇ?」
オルファは、ソファに座ったまま部屋を見渡し、そう言うと、シャワーを浴びるために服を脱ぎ始めるのだった。
♦︎♢
「お客様の様子は?」
家令のトーマスがエリーゼに聞く。
「先ほど洗濯物を出されたので回収しましたが、見た目は普通なのに、素材は肌着まで高級な物だったので驚きました。おそらく竜種などの素材を使った高級品かと」
とエリーゼが答える。
「ふむ。金には困っていないという事か。閣下に報告してくる」
トーマスがそう言って、主人の下へと向かう。
そして、リーゼス伯爵に報告すると、
「だろうのう。あの腕があれば金は稼げるだろう。傭兵といっても腕があれば、報酬は莫大なものだろうからな」
と頷きながら伯爵が言うと、
「御礼はどうされます?」
トーマスが尋ねる。
「悩むのう。夕食の時にそれとなく聞いてみるか」
リーゼス伯爵が頭に右手を当てながら、そう言うのだった。