その頃キース傭兵団は
書面を読み終えたリーゼス伯爵は、顔を上げて、
「なんか色々ヤバイ人が揃ってそうだな。前にオーガの革製の小さな鞄や地竜の鎧などを作っていたから、職人だろうとは思っていたが、やはりな。職人ならば工房を我が敷地内に建てて、贈ろうかのう。そうすれば我が領で長く活動してくれるやもしらん」
そう言って、書面を自身の机の引き出し、それも鍵のかかる引き出しへと片付けると、しっかり鍵をかけた。
「ご苦労だったな、下がって良いぞ」
「は! 失礼致します」
「友好国だと言うのに、知らない事は多いものだな。というか、こんな重要な情報教えてもらって、アイツよく生きて帰らせてもらえたものだ。いや、知らせる事により歯向かうなという牽制の意味もあるのかな?」
リーゼス伯爵は、一人ごちた。
その頃、ミッドランド王国の東にある、とある屋敷。
「なんか王都でオルファの事を調べてたやつがいたそうだぜ」
と言ったのは、精悍な顔つきの青年。
この屋敷の主でもある。
「殺してこようか?」
と、物騒な事を言ったのは、橙色のドレスを着た女性。
「やめとけ。なんかオルファに世話になったやつがお礼に困って、何を贈ればいいか調べに来たんだってよ」
屋敷の主がそう言うと、
「アイツに必要な物とかあるのか?」
と口を挟んだ大きな男。
「オルファのやつ、やらかしてねぇだろうな?」
と言ったのは、太っちょの男。
「魔法は出来るだけ使うなって言ってあるから、大丈夫だろ。アイツの魔法だけはヤベェからな」
主が二人の男にそう言う。
「自分の身体に魔法かけるとか、命知らずも大概にしてほしい。心配するこっちの身になってほしいわ」
青いローブの女性がそう言うと、
「それを言うならカリス国の万の軍勢に放った魔法のほうがヤベェだろ。万の軍勢が一瞬にして死んだんだぜ? 体中から血を噴き出してよ! その後出てきた悪魔にもビビったけどよ。いくら寝起きで機嫌悪かったからって、アレはねぇぜ」
と特徴のあるハットを被った男が言う。
「アレは私、死を覚悟したわ」
そう言ったのは、黄色のドレスの女性。
「とにかくアイツは発想がヤベェんだよなぁ。【人体沸騰】と【悪魔召喚】とか言ったかあの魔法? 悪魔が実在するとか、初めて知ったぜ」
主が昔を思い出すかのような表情で、そんなことを言う。
「それな! 悪魔が死体を一瞬で吸い取ったのは、寒気がしたぜ。とりあえずハンマーの修行しろって言いくるめておいたし、あのポンコツハンマーで苦労してるうちは大丈夫だろ?」
大柄な男がそう言うと、
「なんか国を出る時、コツを掴んだとか言ってたから、使いこなすのも早そうなんだけどな」
と、白い服を着た女性が、不安気な表情で言う。
「才能の塊だからなぁ、オルファは」
主も少し不安そうだ。
「まあ、俺たち皆んなの弟子であり、皆んなの息子でもあるんだ。あれだけ働いたんだし、他国でのんびり息抜きしてくれりゃ良いさ」
太っちょがそう言うと、
「まあな。そのうちふらっと帰ってくるだろ」
大柄な男が同意する。
「嫁とか連れて帰ってきたりしてな!」
と笑った主に、
「私の可愛いオルファに嫁とか許さん!」
と橙色の女性が、拳を握りしめる。
「リリス、姑みたいな事言うなよ」
主が、リリスと呼ばれた女性を、そう言って諌めるのだった。