鼻歌
「うわっ!」
とオルファが驚くと、
「今、四元素全て使ってましたよね?」
と、エルサが問いただすかのように聞く。
「はい」
「四元素全て使える人など、初めて見たんですけど?」
「キース傭兵団には居ますよ? 副団長のアリスの姉御が」
「そうなんですか? 知る限りは神聖国の賢者様だけだと思っていたんですが、我が国に居ないだけ?」
と言ったエレナ。
「ミッドランドでは、私とアリスの姉御の二人だけだと陛下が言ってたかも?」
「でしょうね! しかし四元素使えるとか、オルファ様は凄いんですね!」
でしょうねの声が一際大きかったエレナだが、それは仕方ないだろう。
「姉御に叩き込まれましたから。あの修行はキツかったなぁ」
遠い目をするオルファ。
「とりあえず革は完成したので、工房に戻りますよ」
いまだに放心状態の人々を捨て置き、オルファは屋敷の中に戻る。
「オルファ殿って、何者なんでしょうか? もしかして賢者様ですかね?」
エドワードが言うと、
「賢者様は神聖国に居られるから違うとは思うけど……」
とパトリックが否定する。
「お爺さまの怪我にポーションを渡してくださったから、治療魔法は使えないと思うの。賢者様なら治療魔法を使うはずだし」
と考察するエレナ。
「ならば違うか。そもそもミッドランドで戦など賢者様はされないだろうし」
エドワードがそう言った時、
「と、とりあえずオルファ様を追いませんか? 工房でも何か凄いことしそうですし」
と執事が言うと、
「「「「「間違いない!」」」」」
「急ごう!」
エドワードが走り出しながら言う。
「ふんふふーん♪」
上機嫌なオルファを見て、
「今は何を?」
とエルサが尋ねる。
「弟子と言うとおこがましいですけど、エドワード様とパトリック様とエレナ様用に、戦闘用ブーツなどを作ろうかと思いましてね!」
そう言って足型に革を当てて、採寸しているオルファ。
「その足型のようなものは?」
と聞いたエルサに、
「土魔法で作りました。サイズは見たら分かるので」
「見ただけで?」
「エドワード様は、27センチの幅9.5センチでしょう?」
とエドワードの方を見て聞いたオルファ。
「合ってる……」
と答えたエドワード。
その後、三人分のブーツを瞬く間に作り上げるオルファ。
足首の上まで覆う感じの、動き易そうなブーツであった。
見た目はバスケットシューズに似ているのだが。
「革もまだまだあるし、何か作ろうかなぁ。あ! 鞄作ろうかな。うん、そうしよう。とりあえず小さめで普段使い出来るやつがいいかな」
周りがブーツを見ながらガヤガヤ言っているが、そんな事は気にもしないオルファは、革をどんどん切っていき、縁に穴を開け細く長く切り分けた革で、どんどん結んでいく。
「はい! 皆さんどうぞ。さしあげますよ」
「いいんですか? 私達まで頂いて」
「構いませんよ。使っていくうちに革に色がついて味が出てきますので、どんどん使ってください。小傷や日焼けも味ですので!」
オルファは、リーゼス伯爵の屋敷で働く人達全員に、小さな鞄をプレゼントしたのだった。
20×10センチほどの、財布程度しか入らないような物であるが。
しっかりと自分のパーソナルマークでもあるベガの横顔の焼印とナンバリングまでした。一番をリーゼス伯爵に。
二番を次期当主である、アンドレスにという感じで。
予備に何個か多く渡してあるので、使用人が増えても大丈夫だろう。
ちなみに0番は自分用である。




