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第18話 五次元に並ぶ世界(個性が読めない先輩)

レイラが対峙した相手は?

◆頼もしさ◆


「え、ええっ・・・?」


 レイラの見上げる視線の先に、まーるいものがぽっかりと顔を出した。

 と、言っても満月が浮かんだ訳ではない。少し縦長で目鼻もあれば、荒立った茶色いほつれカールの毛もふさふさと生えている。間違いない。本物の顔だ。

 しかも、血色も良好なのだから、きっと胴体も繋がっているはず。

 

 突然のお出ましにレイラは二、三歩後退する。でも、既に身構えてはいない。少し驚いただけである。

 何故ならば、大きな口をにんまりと横に広げたその顔には、微塵も敵対心を感じさせない妙な安心感があったのだから。


 誰なのかしら?


 レイラは一時ポカンと口を開けて間抜けな顔を彼女に向けていたが、直ぐに落ち着き直すと、記憶から彼女の正体として一人の人物を絶対的な候補として挙げた。

 首から少し見える白いモノが、彼女の正体を物語っている。 


「も、もしかして・・・」


 今考えられるのは一人しかいない。そう思った瞬間に声が詰まる。

 名前は分からない。分からないけど絶対に間違いない。そう思う。


 4年前にこの世界に送られて来た時に出会うはずだった仲間の一人と。


 レイラは、そう思えば思うほど言葉にならない。

 でも、万が一間違いだったらどうしよう。そんな気持ちも頭を過る。

 首に巻いている白いものは何処ぞの粗品のタオルで、首から下は建物の陰に隠れて見えないが、恐らくは薄紫色のニッカポッカにベスト。とび職姿のはずだ。

 さっき、公園で奈々枝から、彼女の話を聞いたばかりのその彼女。


 彼女は健太くんと麗美ちゃんを助けてくれた。

 それに、この間奈々枝のマンションに来た時にその影はレイラ自身も目にしている。彼女もこの辺りを探っていたに違いない。

 その時、レイラは彼女を不信者と思い彼女を追い駆けたが、レイラでさえも彼女に追いつことも出来なかった。その身体能力の高さ。

 それから考えても、多分、頼もしい自分の仲間に違いない。それ以外には考えられない。


 多分・・・私の仲間。


 レイラには”多分”としか言えない不安がある。

 それは、例え想像通りの人物だったとしても、レイラには仲間と呼ばれる自信が無いからだ。

 何故ならば、レイラがこの世界に送られて4年間、今まで放って置かれていたのである。何のコンタクトも持たれずに、一人見知らに地で必死で生活して来たのである。

 

 「こんな、使えないヤツなんか相手に出来ない」何て思われていたのかもしれない。そう思ってしまう。だから、仲間だなんて思って貰えていない可能性は十分にある。と言うより、冷静に客観的に見るとそちらの可能性の方が高いのかもしれない。


 なんて思われているのだろうか・・・。


 そでれも、敵で無いことは間違いないし、そのぽっかりと出した笑顔はレイラ自身がすっ呆けていない限り、好意的であると受け取っても間違いない。


 だから、レイラは確かめたい。聞いてみたい。もし、間違いなくフィンラウンダーと言う組織の仲間であるのなら、聞きたいことはそれだけでは無い。山ほどある。


 なぜ、今まで自分の前に現れなかったのか?

 自分がこの世界で行って来たことは間違いがなかったのか?

 それに、何よりフィンラウンダーと言う組織について。


 まだまだ沢山ある。沢山あるのに、何故か出て来ない。言葉が出て来ない。

 瞳から湧いて来るものが声を詰まらせる。


 これが嗚咽っていうのだろうか?


 レイラにとっては、初めての経験なのだ。

 顔で幾ら笑って見せても、平静を装っても、瞳から出てくるものは止められない。嗚咽が止まらない。


 こんなことで、泣き顔は見せられないと思う。まだ、何も確認していないのだから。

 彼女が本当に想像通りの人なのか、現在の自分の置かれた状況が彼女に、彼女達にとって何なのか?

 それも分からずに、感動して泣く訳にはいかない。

 そんな心が弱いとは思われたくない。だから、必死にレイラは堪える。


 レイラは、瞼を動かすと零れそうで、目を見開いたまま表情も動かすことが出来ないでいた。

 でも・・・・。


 そんなレイラを察してか、彼女はレイラから視線を外し、屋上の出入口の子屋根から飛び降りて来る。そして、レイラの前に進み出る。その姿は、淡く、だけど鮮明な薄紫色。サヤナお気に入りの一張羅(いっちょうら)。余所行き用の作業着。

 

 それを確認した瞬間、レイラの目に一杯に溜まったものが溢れ出した。

 少なくても想像の人であることは間違いがない。


 レイラはサヤナが視線を逸らした間に、慌てて黑いコートの袖で涙を拭い表情を引き締める。

 でも、慌てて拭ったので涙の跡は頬骨の辺りをしっとりと湿らしている。しかし、サヤナはそれを無視して語りだした。その眼が温かいが、


「あ~ら、初めまして~ん。

 じゃあなくて、お久しぶりぃかな?

 覚えてるかしら?前に一度話しているのよー。

 レ・イ・ラ さ~ん」


 口調はいつものお姉言葉。その口調に、一気に気が抜けるレイラ。

 そんなレイラにサヤナは微笑みながら近づいて来る。


 じょ、女性・・・よね?


 と、一瞬口調に気を取られたが、いやいやこの際性別などどうでも良いと思い直す。

 それよりも、一度会っている。それも話をしていると言っている。


 どう言うことなの?


 この間すれ違った以外にもどこかで会っている?話しているってこと?

 記憶を辿るが、思い当たらない。もしかすると、以前会った時の姿は今とはまるっきり違っていたとか?


 瞬時に色々なケースを考えてみる。

 それでも、思い出せない。

 大切なことを忘れるはずがない。記憶力には自信があるのだ。

 覚えておこうと意識したことは忘れる訳がない。毎日高田町商店街で予報したお客さんであれば会話の一つ一つを復唱だって出来る。いや、そうでなくても、最近のことであればほぼ全てのことが記憶に残っている。


 と言うことは、何てことだろう。自分が重要としないで流してしまった時間の中の何処かで会っていたことになる。自分が大切な出会いと思わなかったことになる。それは信じられない。だが、事実として記憶にない。だったら。


 彼女のキャラクターのお蔭ですっかり涙も嗚咽も止まっている。考えていても(らち)が明かないと思ったレイラは、大変失礼とは感じながらも思い切って聞いて見よう。そう思う。

 

「あの~、私、何処かでお会いして・・・」


 とそこまで言ったところで、サヤナはレイラの言葉を遮った。口をへの字に曲げ後ろを振り返る。それは、レイラの質問に気を悪くした訳ではなく、背後のマンションで好ましくないことが起こったからだ。


「あっ!しまったぁ・・・」


 一瞬、サヤナの行動にビビってしまったレイラも、その理由に気づき声を上げる。サヤナに遅れて起こったことに気づいたレイラが顔を歪める。自分の失敗なのだ。


 なのに、向き直った顔は・・・余裕綽々《よゆうしゃくしゃく》に、もう笑っている。全く慌てることはない。


「あ~ららー、やっぱり能力が大きいから気づかれちゃったみたいね」


 二つの能力がマンションを離れる時に使った身体能力なのだろう。急速に二つの能力が離れて行くのが分かる。 恐らく、サヤナがこの二人を見張っていたことは聞くまでもない。


 この事実を起こしたのは、明らかに少し前にレイラが無防備に能力を外に出してしまったせいである。

 だからと言って、今から追っても追いつかない速さで移動しているのはレイラにも分かる。もう、取り返しがつかない。


「すみません」


 レイラは、肩を落とし頭を下げる。謝るしかないかった。情けない気持ちで一杯である。

 しかし、サヤナはそれを軽く流してしまう。


「あん、いいって。良くあるってことよ」


 と右手を、顔の前で左右に振る。


「それよりも、謝ったって待ってはくれないのよね。

 取り敢えずはーちょっと追ってみましょう。

 だから、感動の再開は後でゆっくり、し・ま・しょ・う・ね」


 ニヤッと嬉しそうにウインクをすると、サヤナは即座に踵を返す。その後が速い。


「はい」


 と返事を返した時には、「そーれっと」と言う声だけ残して、既にサヤナの姿は消えている。

 レイラも、慌てて、直ぐにサヤナの後を追う。


 レイラの心は躍ってしまっていた。失敗したのに、申し訳ないと思っているのに、多分追いつけないと思いながらも不謹慎にも嬉しさが先に立ってしまう。

「追うわよ」と、自分を誘ってくれた仲間、レイラに取っては初めての先輩になる。その彼女のその言葉がそれ以上に嬉しくて堪らない。貴く重く心に染みる。


 自分が仲間と認められている。彼らの一員になったと実感に包まれ、レイラの体に力が湧いてくる。

 絶対探し出してやる。そんな気負いが止められない。


 サヤナは楽しげに5回建社宅の屋上から何の躊躇いも見せずに、先に飛び降りる。

 それに少し遅れてレイラもサヤナの後を追う。もちろん、レイラに躊躇いはない。と言いたいところだが、 誰かに見られたらどうしようと言う不安を抱きながらキョロキョロと周りを確認しながら付いて行く。


 サヤナは二度、ひょいひょいと。レイラは三度華麗に、ベランダや換気口に足を掛け、人目と加速を避けながらあっという間に建物を下りていく。


 向こうは手加減無しに逃げるが、こちらは人目のあるところでは本気で走る訳にはいかない。彼らも相当身体能力が高いのであろう。レイラは既に見逃してしまっている。


 しかし、サヤナは何の迷いもなく追っている。速い。それだけではない。人目を瞬時に避ける能力が物凄く高い。黒のパンプスでは正直なところサヤナの気配を追うことも厳しい。さすがは先輩と、思いながらレイラも歯を食いしばり追い掛ける。


 5分も追っただろうか?

 右折をしたサヤナを数秒遅れで同じ道を曲がった時には、既に彼女の姿は何処にもない。追った彼らの気配も何処にも感じない。


 しまった。置いて行かれちゃった。

 パンプスなんて履いているからだ・・・。


 またやってしまった。行先を失ってレイラは脚を止めた。折角仲間として扱って貰えたのに、気負っていられたのも僅かであった。

 体の力が抜ける、足元からひんやりとした、失敗への後悔が襲って来る。


 先輩に見限られてしまったら、どうしよう・・・。


 そんな恐怖がレイラを襲う。

 でも、そこに喝が、優しく飛んできた。真上だ。


「ま~た、何をボッとしちゃってるのかしらぁ?」


 頭上からサヤナが降って来る。飛び降りたと言うよりもそんな感じだ。重力に従って加速度しない一定のスピードだ。でも、顏は今もニヤニヤしている。ずっと、そんな顔のまま追っていたのではないかとも思わせるくらいに、彼女に似合いすぎている。


 うそっ、どこから?


 レイラがサヤナの降って来た方向を見上げると、そこには電柱しかない。


 いつの間に上ったのだろう?もしかすると、降りるよりも、登る方が速いのではないだろうかとも思わせる。

 サヤナは驚くレイラに平然と話を続ける。


「アイツら巻いたと思って、今は気配を消して歩いているわね。まあ、一応念のためなのでしょうけど、二手に分かれたわ。

 どうしましょ。

 ん~、そうね~、レイラさんは女の子がいいかしらね。黒の少しだけ豪華なゴスロリ姿だから、見間違うことはないわよ。

 今は、そこを左に曲がって、次の十字路を右に50メートル行ったところ。彼女は余り体力がなさそうだから大丈夫」


 そこまで、言ったあとで、サヤナは急に瞳を輝かせ、うっとりした顔で、


「そんでもって、私は男の子ちゃんと遊ぶから、邪魔しちゃや~よん」


 嬉しそうに体をくねらせる。凄い余裕。

 自分の度重なる失態にもサヤナはそんな仕草を見せる。ひいき目に考えてもそれは、自分の不甲斐なさに対する気遣いにしか思えない。

 それが、心に染みるレイラは直立不動で、


「はい、分かりました」


 と、もちろん真剣な眼差しでサヤナのボケに生真面目にかしこまる。

 しかし、そんな模範的な応対にサヤナはちょっと不満そうな顔をレイラに向ける。つまらなそうに、口を尖らせて小石を蹴るマネ。


 えっ?ええええ?

 な、なんで?


 私、何か拙い事を言ったかしら。


 寛大だと思っていたサヤナの行動に不安が過るレイラ。


 ど、何処で先輩の地雷を踏んじゃったのかしら?


 先輩後輩の間柄と言うのは、レイラにとってほぼ初めての経験といってもいい。初めてのことに極度に弱いレイラにとって、知識でしか無かったこの関係を熟すことは、過敏にならざるを得ない。

 新米としては先輩の一挙手一投足に気を配り、過不足ない対応を瞬時に探るが思いつかない。

 戸惑うレイラ。そこに、何故かサヤナは身振り手振りでレイラに何かをアピールしてくる。


 えっ?な、何を・・・。

 先輩、何を期待しているのかしら?


 焦るレイラ。その気の焦りに合わせて、サヤナの動きが早くなる。


 えっ、何で早くなるの?


 なおさら焦ってしまう。


 落ち着いて、落ち着いて私。よく見るのよく見るのよ。今の状況に拘ってはダメ。視野を広く持って・・・。


 そう言い聞かせながら、見ていると何やらその行動が漫才のマネであることが伺える。一人で横並びに立つ二人を演じている。そして、必ず最後は、裏手でもう一人の胸を叩く。


「もしかして、突っ込みを入れろ!ってことなの?」


 その微かな呟きを抜群の聴覚で拾ったサヤナは、GOODのポーズ。

 レイラはサヤナのキャラクターを知り、上手く返せなかったことを反省。

 それでも、テレビで多少は勉強したフレーズをどぎまぎしながら言ってみる。


「ね、ねーさん、邪魔はしません。ごゆっくり堪能してきて下せぇ」


 少しドスを聞かせて、言いなれない言葉を、噛み噛みで突っ込んでみる。

 どちらかと言うと、いつももえちゃんに突っ込まれっ放しで、突っ込めたことなど記憶にない。


 ドキドキしながら、自分より背の低いサヤナを不安気に上目使いで合否判定を待つ。すると、


「やだ~もん、レイラちゃんのエッチ!

 ああ、そうそう・・・更に不動産屋さんのある交差点を左に曲がったみたい」


 会話が動き出した。それにレイラはホッと一息。

 なぜ、喋れば一言で済むことを、なぜ身振り手振りなのか全く理解不明だ。

 それに、そんな意味不明な行動をとりながらも、きっちりと気配を読み取っている。いや、それどころか、この辺りの地図まで頭に入っているのも会話の中から読み取れる。

 こんな時に凄い余裕だと感心しながらも、やっぱり一番は、


 意外と難しいのね、先輩後輩の関係って・・・。


 と思ってしまう。

 そんなことを、つい思っていたら、満足した後のサヤナは速かった。

 あっという間にレイラの前から消えていく。


 それに慌てて、レイラも気持ちを戻してゴスロリ少女を追い掛け始める。

 名誉挽回をしなければならない。ただ、少女の次の潜伏先を突き止めることが出来るかも心配であったが、この後どうやってサヤナと再会すればいいのか、レイラにはそちらも不安である。それに、


「まだ、先輩の名前も聞いていないのに・・・」


 レイラは、まだサヤナの名前も聞けずにいた。


◆頼もしさも格が違う◆

 夕方のラッシュが始まろうとする頃、レイラは地袋(ちぶくろ)駅の繁華街を抜けた直ぐの住宅地に居た。追っていたゴスロリ少女の気配は完全に見失ってしまっていた。


 この辺りは大きなマンションが多い。何処かに入られたのかもしれない。


 一度はサヤナの指示に従い気配を追うことが出来たのだったが、気づかれてしまったのか、それとも彼女が用心深かったのか、人目の多い繁華街で能力を使って常識を超えた速さで走られてしまった。

 まさか本気で追いかけて自分まで都市伝説的な怪物になる訳にもいかない。人前では、常識的な速度よりちょっぴり早く走ることに留めたレイラは、すっかり気配を見逃がしてしまったのだった。


 ただ、普段は躊躇うのだが、この際そんなことは言ってはいられないと割り切り、通り行く人の過去を最小限無断で覗くことで、気が引けながらも諦めないで追跡を続けていた。


 その結果、有り得ない速度で走った時は当然ながら、そうでなくても、どうやらゴスロリ姿の少女は人の記憶に残り易いのだろう。覗いた人の記憶の時間関係から言って、大まかな場所までは追うことが出来たはずではある。


 しかし、道行く人の過去を除いた時の能力を感じ取られてしまったのか、どうやら途中で、近づき過ぎて人通りの無いところを通ったのだろう。結局は見逃してしまった。だから、このままでは同じことである。


 どうすれば良かったのだろう・・・。


 レイらにとって相手が同じ世界の、それも高い能力者と言うのは、訓練の頃を除けば初体験であった。それに、やっと出会えた仲間、既に心の中で先輩と呼んでいる彼女とのコンタクトを取る方法も無いままだ。名前さえも聞けないまま逸れてしまったのだ。

 この先どうしたらいいかも分からない。


 後悔を始めると、色々なことが悔やまれてくる。

 レイラの予想通り、全員が一緒に来たのであれば、奈々枝の部屋の上にネリア達が住んでいたことはもはや間違いが無い。

 自分の予報を信じすぎて、最初にここに来た時に奈々枝の上の部屋を疑わなかったこと。この世界に慣れ過ぎて、自分の予報を壊してしまう能力者の存在を考慮しなかったこと。それが悔やまれる。


 更に、今も迂闊に能力を出し過ぎて、気づかれてしまった。彼女は、自分を敵であるかもしれないと疑った時でも、背後のマンションに気を配っていた。


 全く持って、自分は劣っている。反省しなければならない。と感じ得る。

 でも・・・。


 心の何処かで、彼女は自分を探し出して、目の前に現れてくれそうな気もする。

 そんなことを考えた途端、耳にキーンとする耳障りな音が聞えて来た。


 この音色って、まさか・・・。


 何年も聞いていなくても、この音を忘れたりはしない。と言うよりもこの音が聞き取れるように、癖のように今も怠っていない。通信の為の高周波の搬送波に乗せた可聴音。携帯電話が存在しない時代に彼らが近距離で互いの場所を確認するための手段。


 丁度、ラジオを聴くときに聞きたい放送局の周波数に合わせるのと同じ原理である。それを能力と、特殊な笛で行う秘密の通信方式。その周波数はこの世界に来る前に教えられた。


 この音が聞えるということは、恐らく発信先は半径500メートル以内であることは間違いない。レイラは目を閉じ発信先を探る。


 多分、近い・・・。


 レイラは、直ぐに走り出す。もちろん能力は使わない。

 それでも、走り出したレイラは、僅か10秒足らずでサヤナの姿を見つけることが出来た。


 サヤナは、この辺りでは一番高いマンションの付属された公園でブランコに揺れている。

 一見、逃がしてしまった様な雰囲気を漂わせているが、彼女に限ってそんなことは無いとレイラは思う。それに、お互いに追った先が直ぐ傍だった訳だから、彼らはこの辺りで落ち合うと考えるのが普通である。

 レイラはそう思うと、ホッと安堵するレイラであった。


<つづく>


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