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第18話 五次元に並ぶ世界(大反省大会)

レイラは、一昨日、予報をした奈々枝と出会う。

◆反省一人目<お見舞い>◆

 ピンクのガーベラを基調とした花束を手にしてレイラは、緊張の面持ちで健太君の入院する病院に到着した。時間は午前10時を回っていた。

 本当は朝早くに家を出たのであったが、途中、花屋の開店時間を待った為に、丁度病院に迷惑の掛からない時間の到着となっていた。

 お見舞いに花束を選択したところまでは良かったのだが、開店時間までに気が回らなかったと言う基本的な落ち度に、既に落ちている肩を骨格の許す最大限まで落としてしまう。背筋も丸まる。

 今日の肩の筋力は重力に勝てそうもない。それでも、元々姿勢が良すぎるくらいに良いので、丁度人並み程度ではある。


 昨日、レイラは先にお見舞いに行っていたもえちゃんから、不覚にも健太君の様子を詳しく聞きくことを忘れてしまっていた。そのため、早く健太君の状態を知りたい。そんな気持ちがレイラの行動を急かせていた。それもこれも、突然に現れたネリアのことが、レイラの冷静な判断を狂わせていたからであった。

 結局レイラの知っているのは、健太君が腕を骨折したと言うことと、健太君は大丈夫?と言うもえちゃん的な独特な判断のみである。正確な怪我の程度や、今後の入院については何も知らないままであった。

 その事実を、朝方ふとベッドでウトウトしている中で思い出してからは、そわそわと落ち着かない状態が続いていたのだ。


 レイラが病室まで来てみると、ちょうど健太君は看護師さんと付き添いの母親と一緒に病室を出るところであった。先に健太君が口を開いた。


「あっ、レイラさん。来てくれたんですか。

 母さん、レイラさんが来てくれたよ」

 

 凄く嬉しそうにレイラを迎えてくれた。

 話を聞くと、頭を打った為の念ための精密検査だと言う。


 ただ、レイラには既に検査結果は分かっていた。それは、未来を無断で覗いたからでは無く、健太君の体の気の流れに異常がないことを感じ取ったからである。それに、思っていた以上にと言うより、全く精神的なショックを受けていなかったことに、レイラはホッと一安心する。

 一ヶ月前に健太君の未来を予報していたにも関わらず、気付けなかった自分にレイラ重く責任を感じていたレイラにとっては何より救いとなった。

 二言三言を交わすのみの時間しか持つことが出来なかったが、こちらに関しては心が救われた。心が通じていると感じた。

 ただ・・・、


 病院に向かう道すがら、健太君に何て謝ろうか、どうやって元気づけようようと詫びる練習から、励ます為の笑顔の練習までを何度も行なっていたのだが、幸いにも実質無意味となってしまった。それは良かったのだが、初めての経験に対し臨機応変さに欠けるレイラは、取り敢えず練習通りに作り笑顔を健太君に向けていた。落ちていた肩も上げて、明るく振舞ってみた。

 そのつもりだったのに・・・。


「レイラさん、どうしたのですか?

 全然、元気がありませんけど、何かあったのですか?」


「えっ、そ、そんなことないよ。もう、元気モリモリ」

 と、ホウレンソウの缶詰を勢い良く食したと時のポパイの様に、上腕二頭筋で筋肉モリモリポーズを作って見せる。が、


「やっぱりだ。これから検査なので、何にもお役に立てなくてご免なさい」

 

 なんて言われ、返ってレイラの様子の方が沈んでいることを心配されてしまった。お見舞いに来た自分が心配されてしまった。


 全然ダメ、しっかりしなきゃ・・・。


 レイラは、作り笑顔すらも上手く出来なかったことに更に落ち込んでしまう。


 最近になって、レイラはこの世界に来てからのそれなりの成長を自分なりに評価をしていた。しかし、こうして未経験な出来事に出合うと、依然として全く対応が出来ない自分に気付かされてしまう。


 やっぱり、成長してないのかな・・・。


 一つの出来事が・・・、全てに昨日のネリアの出現が影響してしまっている。心がネリアに捕らわれてしまっていて、自分をどうすることも出来ない。息苦しくさえある。


 廊下で振り向きながら健太君が申し訳無さそうに頭を下げて検査に向かうのを、レイラも負けじと更に多く頭を下げてそれを見送り、レイラの視界から姿が消えるとレイラは邪魔になら無い様にと、そのまま病院を出た。

 外に出て立ち止まって溜息をつくと、再び肩が下がってしまう。首を左右に二度振り、そっと歩き出す。


 昨日は殆ど眠りに付けなかった。と言うよりも、多少は眠りについたのかもしれない。ずっと起きていたにしては時間が経つのが早い。そんな感じだった。

 

 体が重い、心の底から重い・・・。


 もし昨日、もえちゃんに会えていなかったらどうであっただろうか?

 きっと後悔の念に押し潰されていたかもしれない、そう思う。未だに一人じゃ何も出来ないんじゃないか?そうも思う。


 やっぱりネリアは今でもレイラを憎んでいた。それは分かっていたことでもあった。

 でも、もしかしたら・・・過ぎたこととして笑って会ってくれるのじゃないかと、心のどこかで、そう思おうとしていた。しかし、それも、ただの身勝手な思いと分からされてしまった。


 当然、か・・・。


 レイラが思い出すのは、11年前の最終試験。

 レイラが気付いた時にはエリートと呼ばれる集団の中に居た。決められたレールの上を凄いスピードで進まされていた。

 始まりが何人だったかは分らない。気づいた時には10人の同じ年齢の子供が、同じレールの上で競争をしていた。でも、その全員が最後の最後までレールに乗っていた訳ではない。最終試験までたどり着いたのは半分に満たない4人であった。6人は、捨てられて孤児となった。


 そして、最終試験、その初日。今までの試験とは異なっていた・・・。


 あの時、どうして彼女のプライドに気付けなかったのだろう、どうしておもむろに手を差し伸べるようなことをしてしまったのだろうか?

 いや、そんなことは考えるまでも無い。分かっている。


 嬉しかったのだ。優越感とか、そんなものじゃない。ずっと、感謝していた彼女に恩返し出来ることが、ただ嬉しかった。それだけであった。


 ”助けることが”嬉しい・・・。

 ”助けたい”と言う気持ちとは少し違う。いや、全然かもしれない?


 助けるってなんだろう? それまで、そんなこと考えもしなかった。物理的な行動としてしてしか考えていなかったのかもしれない。


 単に恩返しが出来ることが嬉しかっただけでは無いのか?

 彼女の心を理解しようとしただろうか?

 相手有ってのもの、自己満足の道具では無い。

 果たして、あの時本当にネリアに対してそんな気持ちがあっただろか?

 自分でも自身が持てない。


 今なら、今の自分ならこの世界で色んな人から学んだ方法で、彼女の心を含めて救うことが出来たかもしれない。この世界の人達から今まで学んだ方法で・・・。

 いや、無理かもしれない。昨日もネリアの心に何も届けることが出来なかったのだ。

 何せ、全く成長していないんだから・・・そうレイラは思い首を振る。


 最終試験は二週間続いた。今までの試験で一番長かった。今までの試験と違っていたせいか、ネリアは戸惑って、イライラしているように見えた。

 もちろん、最終試験二日目以降も彼女を助ける努力はしてみた。”自分なり”に彼女を傷つけないように。しかし、当時の自分にはそんな状況で出せる能力なんて何も無かったに等しい。

 結局、彼女の助けにはなることが出来ず、最後の最後で彼女は残ることが出来なかった。エリートと言うレールから捨てられてしまった。


 自分は何も出来なかった。程度の低い”自分なり”の意味の無さを知った。

 今まで沢山貰った恩に対し、何も返すことが出来なかったと同じ結果となってしまった。

 それだけではない。自分本位に差し伸べた事実によって、自分は間違いなく嫌われてしまった。

 全て自分の安易な行動が原因なのだ。


 そして、今、その彼女と対峙しなければならない事実が目の前に訪れようとしている。いや、間違いなくその機会は訪れるだろう。彼女が合法的にこの世界に来ることは不可能だから。

 疑っている自分がいる。疑わざるを得ない。それが自分の仕事なのだから。だから、今度会うときは必ず彼女がこの世界に居るその真実を直接確かめなければならない。


 自分と彼女との過去がどうであっても疑わなければばらない。

 今の自分が居るのが彼女のお陰であっても。力の及ばない彼女であっても。また萎縮して、何も出来ないまま見逃すわけにはいかない。自分はフィンラウンダーの一員としてこの世界に派遣されているのだから・・・。


 レイラは気負ってはみる。が、自分が配属されたこの世界に5人居るはずの同僚なかまと言うべき人には、誰一人として未だ出会えていない。残念ながらその情けない結果が現状だ。


 最初はこの楽しい生活がいつまでも続けばいいなんて、身勝手なことも思っていたが、ここまで放って置かれると正直不安と言うレベルはとっくに通り越している。

 未熟さが生んだ結果としか言いようがない。だから、だから自分一人しかいないのだ。全て自分のせいだ。自分一人しかいないのならば、一人で解決するしかない。


 ネリア達の仲間が何人いようとも。それに、自分より能力が高かろうが、ずっと自分の心をさせてくれた恩人であろうが、この世界を乱すのであれば、自分の成すべきことは悩む余地もないことだ。

 それは、自分に幸せを教えてくれたこの世界の人達、もえちゃん達や、ノシさんや、梢さん。和美さんに、高田町商店街の皆さん。レイラの予報に来てくれた人達。その優しさを守る為に。

 それは、過去の、この世界との”歴史の過ち”を繰り返さない為に・・・。


 それが自分に課せられた任務、いや、自分自信が望んでいるのだから・・・。


 でも、今の弱い自分、たった一人で出来るだろうか・・・。

 現状が重く圧し掛かる。


 気が付けばレイラは高田町商店街に向かっていた。このまま大通りを5分も歩けば、商店街の入り口だ。今や商店街の顔であるレイラにには、そこに行けば快く迎えてくれる誰かが居る。それは意識をしなくても体が覚えている。少なくても商店街唯一の八百屋の直志商店に行けば、ノシさんがいつでも温かく迎えてくれることは心配の余地もない。だから向かってしまう。


 甘ったれに、なっちゃったのかな・・・。


 自分はすっかり、幸福にどっぷり浸かってしまっている。それが、自分を弱くしているのではないか? 自分の本分を忘れてしまったのではないか?

 そう思うと、そのまま商店街に向かうのは躊躇われた。レイラは、ひとりでに脚の向いていた方角を変え、脇道に入ろうとする。そこにはもえちゃん達が良く集まる小さな児童公園がある。


 やっぱりすがってるみたい・・・。

 もえちゃん達が来るんじゃないかと、心が期待している。


 どうしても高田町商店街の人たちに関係ある場所を選んでしまう。それが当たり前の行動になっていることに気付き、満たされている自分に苦笑するを浮かべるが、恐らく満たされていないネリアのことを思い出すと、苦笑すらも戸惑われる。


 レイラは、無人の公園に入るとブランコに腰を掛けた。揺られながら、同じことを何度も巡らせていた。

 その内に、すっかり陽の位置は一日の後半に入っていた。いつしか公園内にも数人の小学生がやって来ている。レイラは子供達にブランコを空けようと立ち上がった。


 その時だった、ふいに背後から声を掛けられた。


◆反省二人目<母さんは正しい>◆

 一昨日、レイラのところに予報にやって来た奈々枝は、昼前から自慢のマンションのバスタブに長々と浸かっていた。大切な考え事は、決まって長湯をしながら考えるのが奈々枝の習慣である。


 昨日は、親宿しんじゅくでバッグを引っ手繰られ、酷い目に会ってしまった。その時転んでしまい、強く打った右膝が未だに少し痛む。

 奈々枝は、傷のある膝が湯に浸からない様に気を付けながら、それを眺める。

 

 傷を眺めていると、昨日の出来事が鮮明に思い出されてしまう。

 凄いショックであった。ホント、ついてないと思う。

 あれだけの人ゴミの中で、何で自分のバッグだったのだろうと思う。


 何かの罰ゲームだろうか?


 占い好きで、げんを担ぐ奈々枝は、そんなことを思ってしまう。でも、罰ゲームにしては酷過ぎる。何せ、あの時、奈々枝は殺されるかと思ったのだ。


 でも・・・本当に罰なのではないか? そうも思う。

 自分の日頃の行いに心当たりが無い訳ではない。むしろ、今考えると在り過ぎるかもしれない・・・全くつながりはないことだが。


 いつになくしおらしい思考を巡らせてしまう。


 このままでは、次に何が起こるか心配でしょうがない。

 それどころか、このまま自分の運勢が下降し続けるのではないかと思ってしまう。

 このままで良いのか?

 いや、絶対ダメだ。まだこんなにピッチピチに若いのに・・・。


 じゃあ、どうしよう?


 ・・・

 ・・・


 奈々枝は自問自答を繰り返していた。

 結局、絶対に運勢を変えなければならない、それにはどうしたらいいのか?

 占いや、ゲンを担ぐ奈々枝は、結局そこに行き着いた。いつものことで、考えるまでもないことであるが。


 そこで奈々枝の頭を過ぎったのは、実家の母、美佐江に良く言われていた言葉であった。よく喧嘩もするけど、いつも自分のことを一番に考えてくれている母だ。

 最近、上手くいかないことが多くなって、母の言葉を思い出す事が多くなっていた。あの時、聞き流していた言葉が、あまりにも何度も聞いたせいか、自分でも驚くくらいに幾つも耳に残っている。


 『奈々枝、”人の基本はいい人”なのよ。一度の恩でも一生忘れてはいけないの。そして、10回人に心をつくして、一回でも返してもらえたら、自分のつくした10回を誇りに思いなさい。間違ってなかったってね』


 そんなことを言われたことがあった。


 奈々枝は一昨日のことと照らし合わせてみる。

 あの時、自転車で自分のバッグを取り替えそうとしてくれた男の子がいなかったら、麗美は私の為にバッグを取り返そうとしてくれただろうか?

 それは無いと思う。


 では、私があのデカい女に襲われようとしていたらどうだろうか?

 それでも、残念ながら無いんじゃないかと思う。


 麗美と少年の少年の関係を知らない奈々枝はそう思う。きっと、あの少年の心が通じて麗美が助けようとしたのだと奈々枝は思う。


 そのお陰で自分のバッグは傷だらけにはなったが、最悪中身は戻って来た。もっとも財布の中身はほぼ空であったが・・・。


 奈々枝は考える。自分と少年の違いを。勝手に完璧な好少年像を頭に描いて、自分との違いを考える。


 少年が怪我をして動けなかった時、自分は少年を助ける様に麗美からお願いされても、何もすることが出来なかった。出来なかったのはしょうがない部分もある。腰が抜けて思うように動けなかったのだ。

しかし、正直言って、助けようと思ってもいなかった。

 それに反して少年はどうだろうか?見ず知らずの自分にバッグを取り返そうとしてくれただけではなく、デカイ女が置き去りにしたバッグを、腰が抜けて動けなかった私にバッグを拾って持って来てくれた。


 私は、恩を受けたままだ・・・。


 10回尽くして一回返して貰うどころか、一回も尽くそうとはしなかった。何度も恩を受けて、返そうとする気すらも起きていなかった。

 そう思う。


 すると最近の不運がいくつも脳裏を次々に過ぎって行く。


「きっと、自分の心が劣化しているからこんなことが起こるんだ」


 奈々枝は独り言を口にする。


 思い出せば、一人暮らしを始めてから、同棲をしていた男には、何をしてやっても喜びもしなければ感謝の言葉もないと言われ、更に、そのバッグの分だと言って丁度テーブルの上に置いてあった、母からの仕送りの現金封筒から3万円抜かれて持って行かれた。それから戻って来ない。

 まあ彼にして貰ったのは、その何倍もあるけど・・・。


 家賃を折半していた相手に逃げられたお蔭で、家賃の支払いが大変だ。親には同棲の事は伏せて、自分でバイトして家賃の半分を払うと言った手前、援助は期待出来ない。そして、バイト料も使ってしまった。


「母さんは、やっぱり正しかった・・・のかな」


 声に出す。この間の大学の試験の時なんかは、いつもノートをコピーさせてくれている友人から、授業に全く出ないで、礼の一言も無しに借りてばっかりだと喧嘩になり。結局ノートを借りられずに試験を受けて散々な内容だった。きっと、単位は落としたと思う。

 

 一度も恩を返していなかった。いつも、”いいよ”と快く言ってくれる言葉を鵜呑みにしていた。


「やっぱり、母さんは正しい・・・」

 

 そして、その他諸々。そんなことばかりが頭に浮かぶ。


「母さんは、世界一正しい・・・」


 奈々枝は、そもそも今回の始まりは高田のははや麗美を軽視していた・・・、からなんだ。そう思う。


 占いはかなり信じる方だけど、自分の聞きたかったこと以外は、全く聞こうとしていなかった。

 二人のの言う事を聞いていれば、何も起こらなかったのだ。


「母さんも言っていたっけ。

 まず、人の話をよく聞くこと。自分の考えと他人の考えに差をつけないこと。

 正しい方が正しいって・・・」


 その通りだ。


「やっぱ、性格を変えないとだめだ」


 そう思えてくる。そうでないと、この後どんなことが起こるか心配でしょうがない。


 奈々枝は一度心配になると、気になってどうしようもなくなる。


「これ以上酷いことがあったらたまったもんじゃないや。

 まずは、親や、友人、元彼に会って謝って(元彼は探さなきゃならないけど)、麗美と高田のははにお礼を言はなきゃ・・・、自分を変えなきゃ。じゃないと、人生が変わらない」


 奈々枝は決心する。ザブンと、勢い良くバスタブの中で立ち上がる。そして、頭上50cm上の低い天井を見上げる。


「自分をを変えよう!いい人になろう。そうそう”基本は良い人”なんだ。

 まずは、麗美と、高田のははにお礼をいわなきゃ」

 

 奈々枝は取り敢えず、一番言い易い人から実行することに決めた。

 早速、お風呂から出ると、それなりの身だしなみを整えると直ぐに賃貸マンションの自室を出た。


◆反省人同士◆


「あ、あのー、”高田のはは”・・・さん?占い師の”高田のはは”さんですよね」


 ふいに後ろから声を掛けられたレイラは、余りの突然なことにレイラはビクッと肩を上げる。しかし、聞き覚えのある声は、不安をもたらすもでは無かった。それに安心した気持ちは正直な吐息となって、一つ漏れた。


 人の気配に気付かなかった訳では無いが、不覚にも何の警戒もしていない自分が居る。

 レイラは、一度両目を瞑り反省をしてから、振り返る。


「あーっ、やっぱり”たかだのはは”さんだ。なんか雰囲気が違って別人かと思いました」


 そう、ホッとしたように控えめな笑顔を向けたのは、一昨日、レイラのところに予報に来た、白山女子大に通う2年生だ。


 確か名前は・・・。


 直接本人から聞いてはいないので、知らない個人情報とはなってはいるが、予報で過去を見た時に分ってしまっている。確か、奈々枝と言う名前であった。


 相変わらず着ているものは手だが、レイラには、今日の彼女が何処か一昨日とは雰囲気が違って見えた。

 

 化粧は、控えめだけど、それだけじゃなさそう。

 何かあったのかしら・・・。


 レイラは思う。


 <つづく>


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