第16話 夏休み納涼”へろへろ女”生け捕り作戦22
レイラは、再度愛ちゃんの予報してみる。
◆植樹◆
思井沢高原二泊三日の旅行は最終日を迎えた。月曜日。
朝食後、昼前には戻ると言って直ぐに出掛けた帯人、緒湖羅、それに雄大くんの3人を除いた一行は、再び大きな木のある芝地に来ていた。
その中には、愛ちゃんと介助犬”しゅけ介”の姿もある。
静かな湖畔の大きな木の陰から、
「七面鳥レンジャー整列!」
響いた可愛らしい声は、カッコーではなく、もえちゃん隊長の号令であった。
それに、
「『イー』」
「ワン」
6人の子供達と一匹の元気な声が、芝地の先の高台にまでに響き渡った。
返事と共に子供達と一匹は、たちまちの内にもえちゃん隊長と向かい合わせに横一線に列を成す。
この統率力に和美は感服する。
芝地では自由が利かない愛ちゃんの後ろには、庄蔵が控えている。
よって、もえちゃんの「整列」の声には、大学生の庄蔵が従っているのであるが、流石に「イー」と言う”もえちゃん率いる七面鳥レンジャー”のお決まりの返事をするのは抵抗があったようだ。
返事をしなかった庄蔵はもえちゃんの威圧から目を背けている。
和美は、その様子に笑いを堪えるのに必死である。
微塵の狂いもなく整列をした子供達に満足をしたもえちゃんは、強い口調で演説を始めた。
「これから、植樹を行うのだ」
気合いを込めて叫ぶもえちゃんの手には、高さ40cm程度の2本の苗木の入った白い買い物袋が下げられている。
この高台に続く芝地には、大きな木から緩やかな傾斜を少し登ったところに、少し前まで湖畔道と平行に三本の木が植えられていた。
それは、愛ちゃんの姉の麗美が10年と少し前、学校が湖の底に沈む少し前に、仲の良かった2人の友達と植えたものであった。
しかし、残念ながら三本植えた内の二本は、ヤンキー達の悪ふざけによって折られてしまい、今では一番隅のか細い一本が残っているだけである。
もえちゃんは、それが不満であった。
「我々は残念ながら、悪の手羽先のにわとり族に破壊されてしまった環境を救うのである」
もえちゃんの言う”にわとり族”とは、木を折ったヤンキー達のヘアースタイルが、恐らく鶏冠の様だろうと予想して名付けたものであり、手羽先は手先と掛けたものである。
鳥に拘っている。
もえちゃんは、手に持った苗木をみんなに指し向けた。
「この苗木は、愛ちゃんが我々の平和活動の為に提供してくれたものである。
みんな、愛ちゃんに惜しみない拍手を!」
子供達の拍手に顔を赤くして照れている愛ちゃんは、嬉しそうにはにかんでいる。
愛ちゃんが持って来たこの苗木は、愛ちゃんの姉でる麗美が早朝に用意してくれたものである。
昨夜、麗美は愛ちゃんの姿が活き活きとていることに気付いて驚いた。
それと同時に、今まで妹の姿が自分の目に映っていなかったことに気づき、ショックを受けた。
愛ちゃんの姿は、もえちゃんを初めコテージの子供達がやって来て、今まで見たことのない積極的な姿に変わっていた。
麗美はそれに気付き、この子供達が内気な妹の愛ちゃんを変えてくれるのではないかと、期待で胸が膨らんできた。
そこで、麗美はある想いを持った。
(愛にも自分と同じ思い出をコテージの子供達と持ってもらいたい。ずっと、繋がりを持ち続けて欲しい)と。
麗美の気持ちは直ぐに行動になっていた。
そして、今朝「お姉ちゃんから、みんなにだって」そう言って、コテージに愛ちゃんが現れたのであった。
愛ちゃんの姿は姉の力で、昨日よりも更に輝いていた。
今も愛ちゃんは、生き生きとした目付きで、もえちゃんの演説を聞いている。
「人間は大人になると、個人の欲には勝てなくなるのだ。これが自分でお金を稼ぐ様になって生まれる唯一の弊害なのである。
自分を守るために秩序を忘れてしまうのである。環境破壊もその一つなのだ。
今こそ我々は無秩序で、個人のエゴの破壊活動に立ち向かおうではないか!我々の未来の為に」
その勇ましさに、ついに
「ズズズ」
笑いに堪えきれなくなった和美が、小さく鼻を鳴らしてしまった。
それに気付いたもえちゃんは剃刀の様な鋭い視線で和美を睨み付けた。
和美は背筋を丸めて、大きな体を出来るだけ小さくし、子供達の後を追って笑いを堪えて拍手を始めるが、ポイントがずれていた為に、またもや睨まれてしまう。
レイラは自分にお鉢が回らない様に、和美のことを見て見ない振りしている。
こうして、もえちゃんの統率力は和美やレイラにまで及び、もえちゃんの目指した何かの式典の形式は強引に保たれていった。
それに、もえちゃんは満足気だ。
だが、子供らしからぬボキャブラリーに溢れるもえちゃんも、そろそろ言葉のストックが切れて来た。
「本日は、晴天にも恵まれ、え~、ん~父兄の皆様にも変わらぬご愛顧の程、ん~と、遅いな~・・・」
式典ごっこは、どうも雄大くんが戻って来るまでの、もえちゃんの余興だった様である。
もえちゃんは、雄大くんがなかなか戻って来ないので、手詰まりになった演説を強引に引き伸ばしているのであるが、そろそろ限界である。
そこで、最初は「また、始まった」と思っていたレイラであったのだが、もえちゃんを助けるがてら、ちょっとだけからかってみようと思ってしまった。運悪く・・・。
レイラはもえちゃんに近づいた。
「そう言えば今回の旅行は、レンジャーごっこが少なかったわね、もえちゃん」
それに、もえちゃんは直ぐ様反応をする。
「んっ、ごっこ?ごっこではないのだ!七面鳥レンジャーは遊びじゃないのだ。地球の環境を救う正義の味方なのだ」
「うそ~、そうだったの、もえちゃん」
すっかりその気になっているもえちゃんに、和美も面白がってレイラに乗った。
「もえちゃんではない。隊長と呼ぶのだ」
「ごめんなさい、隊長。ねえ、七面鳥レンジャーのみんさんって、変身とか出来るの?」
「あ、当たり前なのだ」
ちょっと引き攣りながらも後には引けないもえちゃんは、つい乗ってしまう。
今度は、レイラが、
「隊長の変身が見たいわね~、きっと凄いんでしょうね。空飛ぶのかしら?ねえ、和美さん」
和美もレイラに合わせる。
「ああ、そうね。隊長の変身が見たいわね~。きっと鳥の被り物とかするのよね。羽も生えてくるのかしら?」
乙女の様に両手を胸の前で合わせ、大げさにワクワクとしているポーズをとってみた。
「かあちゃんってば~・・・」
和美の息子の陽太は、悪乗りしている母親を止めに入ろうとするが、その前に、
「ん~~」
困って唸っていたもえちゃんが、レイラと和美の言葉をあっさりと交わしに入った。
「悪がいないと、残念ながら変身はできないのだ」
「あら、そうなの~?ここはみんな良い子ばっかりで、悪い子はいないものね~」
和美は残念そうな表情を浮かべながらも、次の手を考え始めた。
そして、レイラを悪者に仕立てようと思い、
「じゃあ、・・・」
和美が提案をしかかったところに、もえちゃんが割って入った。
「その変り、必殺技をお見せしよう」
もえちゃんは大きく息を吸うと、ジロッとレイラの方を向いてから、ニヤッと笑った。
(何?もえちゃん、何をするのかしら?)
レイラの脳みそに、不吉な振動が伝わって来た。震度3位だ。
もえちゃんは、呪文の様に小さな声で唱え始めた言葉を、次第に大きくしていく。
「身勝手な侵略国家よりも黒く、自らのステータスの為に保身を図る政治家よりも太い。、そして、悪徳検察が証拠改ざんで挑む、裁判での大根芝居よりも臭い。・・・」
「ん?」
一同が呆然とする。
「・・・あれは何、何だ、何だ! 黒い、黒い・・・臭い!」
もえちゃんは、身振り手振りで芝居に入る。ホッペは相変わらず赤い。
「それは、・・・レイラちゃんの真っ黒くろ介で、太くって、臭い、う、う、う●こ~。早く出て来なさーい!”木の肥しにしてあげる~!!」
コダマが返って来る程の大声でレイラのお尻に向って叫んだ。
「ありがと~、今日も熟成してるね~」
「まただ~・・・」
レイラは慌ててもえちゃんの口を塞いだ。
恥ずかしくて赤くなっているレイラに抑えられて、大声で叫んで赤くなっているもえちゃんが、もがいている。
雄大くんが出掛けている今、愛ちゃん以外は初めて見るもえちゃんの”う●こ”ネタに、最初唖然として見ていた一同であったが、愛ちゃんが笑ったのをきっかけに大爆笑に変わって行った。
「レイラさんも、”う●こ”するのね」
和美までがお腹を抱えて笑っている。
(和美さん、しますよ~・・・)
レイラはそう言いたかったが、意味がないので飲み込んだ。
調子に乗ったもえちゃんが、昨日の様に口を抑えるレイラの掌をぺろりと舐めたが、今度はレイラはもその位とことで手を放したりはしない。
しかし、もえちゃんにはさらに次の一手があった。
レイラのお尻を谷間に沿って撫でてみたのである。
驚いたレイラが手を放した瞬間に、もえちゃんは再び「うん●・・・」と、叫ぼうとしたところだった。
そこに丁度、戻って来た雄大くんの姿を発見したのである。もちろん、帯人と諸湖羅も一緒である。
場繋ぎと言う役目を真っ当したもえちゃんは、満足げにテンションを元に戻す。レイラのお尻を触っていた手は、いつのまにかレイラの手を握っている。
「楽しそうですね」
帯人がみんなに声を掛けた。
「あっ、帯人さん。どうでした?」
レイラは分っていても”結果”が気になる。
「只今、戻りました、先生。上手く行きましたよ。雄大くんのお陰で」
レイラにそう告げる帯人の顔は、充実感に溢れている。それは、諸湖羅も雄大くんも一緒である。
「そう、ありがとうございます。帯人さん、諸湖羅さん、雄大くん」
これで、レイラが麗美に果たす役目は終わりである。
レイラは安堵の表情を3人に返すと、その表情の美しさに帯人、雄大くん、それに緒湖羅までもが頬を赤くしてしまう。
「いえ、先生のお役に立てて嬉しいです。ねえ、雄大くん」
「うん」
元気一杯に返事をする。
初めてレイラの役に立てた嬉しさ。それに、麗美や愛ちゃんの為に何か出来た喜び。その実感に、雄大くんは心は高揚していた。
レイラの労いの言葉に嬉しそうにしている3人に、事情の知らない和美が寄って来た。
「理由も言わないで、3人で出て行って何だったのかしら?ホント、寂しいわね」
和美はちょっと膨れてみせる。
それに、帯人が嬉しそうに答えた。
「これで、ここが守られるんですよ。和美さん。
もう、麗美さんは何もしなくてもいいんです。ねえ、先生」
そう言い、帯人はレイラと目を合わせた。
「どういうことなの?レイラさん」
和美には意味がさっぱり分らない。
「ごめんなさい、隠していたわけではなかったんです。すみません。帯人さん達には役場に行ってもらっていたんです・・・・・・」
レイラと帯人が、代わる代わる和美に説明を始めると、みんなが集まって来てその話に耳を傾けた。
三人は朝早くから昨日プリントに出した写真を、写真屋さんの開店に合わせて取りに行くと、その足で役場へと向かった。
役場に行った3人は、”ウサタヌキ”の存在を知らせる為に、まず初めに、案内の窓口で昨日撮った写真を見せたのである。
ところが、初めに役場の窓口に立った女性は”ウサタヌキ”が何者であるかを全く認識していなかったのである。
その為、帯人達は変な人扱いをされてしまい、相手にされなかった。
ところが、雄大くんが手に持っていた自分で描いた絵を見せたところ、その女性は大いに興味を持ち、しきりに感心し始めた。
その様子を見ていた役場の人達は、興味を持って集まって来たのだ。
もちろん、その絵は昨日描き上げた、もえちゃんと車椅子の愛ちゃん。それに介助犬のしゅけ介とウサタヌキ”が円陣を組んで笑っている絵である。
集まった人の中に居た広報部の年配の男性が、ウサタヌキが特別天然記念物の中でも、非常に珍しい動物であることを知っていた。
その為、そこからの話は早かった。
男性は、20匹以上の人懐っこいウサタヌキと記念写真の様に並んで撮った写真に驚き、早速その場で調査をすると言う話が持ち上がったのである。
そして、”観光の目玉になる”と言う話にまで発展して、雄大くんの絵は役場に引き取られたのであった。
説明が終わると、レイラは愛ちゃんに近づき、そっと愛ちゃんの肩に手を乗せた。
「愛ちゃん、もう一回予報させてね」
すると、レイラからは青い炎の様な光が現れる。
「光っ・・・」
愛ちゃんが呟いた。
レイラの後ろから顔を出したもえちゃんが、愛ちゃんに向かって口に人差し指をあてて、片目をつぶる。
それに、愛ちゃんも頷く。
今、この光が見えるのは、もえちゃんだけではない。愛ちゃんにも見えている。
レイラは、一昨日の愛ちゃんとの約束を無事、果たすことが出来た。
「大丈夫!お姉さんには素晴らしい未来が待ってるわ(でも?)」
その先をレイラは言わなかった。一昨日の予報と少し変わっていたのだ。
恐らくそれは、強くなった麗美の能力により、麗美の意志がレイラに向かって働いているからだろうとレイラは思った。
(まさか麗美さんが、自分の周りに来るなんて・・・)
それに嬉しくは思うが、自分の先がどんなものになるか予報出来ないだけに、ちょっと複雑な思いも感じてしまう。
しかし、それは、今考えなくても良い事である。この先考えればいいのである。
取り敢えず、レイラは未来の麗美を待つことに決めた。
この後、8人になったもえちゃん率いる七面鳥レンジャーは、全員で植樹を行った。
「3泊4日にすれば良かったな~」
そう言う我が子陽太に、母和美は、
「何言ってるの、充分遊んだでしょ。夏休みは始まったばかりなんだから」
苦笑いをする。しかし、
(もっと、ここに居たい。みんなと居たい)
そう思う気持ちは、和美が一番であったのは、恐らく間違いない事実である。
◆てっさ&サブ◆
「結局、2泊3日の旅行を楽しみながら解決してしまったんや~」
サブは降参のポーズを鉄鎖に向けた。
「そうやな」
それに、鉄鎖が呆れた顔で苦笑いを浮かべる。
自分達が1年もかかって解決出来なかったことを、レイラはあっと言う間に解決してしまったのである。
鉄鎖の飽きれ顔の中には、いくばくかの悔しさが滲んでいる。
麗美を力で止めることであれば、鉄鎖にも簡単に出来る。しかし、それではその場凌ぎにしかならない。麗美の心を変えることは出来ないのである。
鉄鎖には解決方法が見つからないまま、その場の麗美を救うだけで悪戯に時が過ぎていった。
かつての、鬼、魔女と差別をしてしまった歴史上の不幸な出来事が麗美に向けられない様に、その場を凌ぐだけであった。
鉄鎖に与えられた使命、 ”麗美が一人の一般の人として生きて行く道をつくること”それは、鉄鎖の想像以上に困難なことであった。
高台から、朱真理湖を見降ろして、鉄鎖は呟いた。
「全員に関わる様に言った理由は、そう言うことやったんか?おっさん・・・」
鉄鎖は思う。
決してレイラ一人で解決をした訳では無い。周りの人達みんながレイラに協力をしているからこそこんなにあっさりと解決してしまったのだと。
いや違う、レイラに協力しているのではない。自分の気持ちとして麗美を助けようとしているんだ。だからこその解決なんだと。
「・・・こうやって解決しろって言うこと何んかい、おっさん。
残念やけど、勉強になったで。流石や、流石は”エ・リ・ー・ト”やな」
鉄鎖は感服であった。
「ほんまっすね」
ウサタヌキにクッキーを与えているにサブが、呟く鉄鎖に応えた。
それは、サブも痛い位感じるところであった。自分はレイラの足元どころか、地下100メートルにも及ばない。そんな感じである。
「優秀な仲間が必要なんやな・・・」
そう言って鉄鎖はサブに視線を向けた。
「ちょっと、待って下さい。一生懸命やってるやないですか、この一年の収入の殆どは俺が稼いだんやから」
そうなのだ、鉄鎖が一年の稼ぎ時を売上の少ない思井沢にいる為、サブはその分も他の観光地で一生懸命働いていたのである。
「そうやった、そうやったな。悪い悪い」
鉄鎖は怒っているサブに近づき、サブの肩に手を乗せ、サブと並んでウサタヌキの前に屈んだ。
そして、鉄鎖はサブの手からクッキーを受け取るウサタヌキの頭を撫でた。
「有難うな~」
ウサタヌキも満足げにクッキーを食べている。
サブは気になっていたことを思い出した。
「鉄鎖さん、あの子もこの動物達と話せるんですよね」
「そうや。それも俺以上にな」
「そうなんですか!じゃあ、あの子も遺伝をひいているんや。でも全然光を感じまへんでしたけど?」
「そうやろ、でもおっさんは知ってたんや。(何でだろう?)恐らく・・・」
語尾は囁いたので、サブには聞こえなかった。その意味するところは、鉄鎖は一つか知らない。
(おっさんの遺伝を・・・?)
サブは、人懐っこい動物に、名残惜しそうにクッキーを与え続けている。
遠い昔に鉄鎖の世界から偶然紛れてしまった動物。この世界では犬に相当する一般的な動物。
それと、この世界の野ウサギが偶然交配して生まれたのがウサタヌキである。
「最初から話せば早かったんやないですか?
最初から普通に皆に話しても協力してくれたと思うんやけど、なんでこんな面倒なこと命令したんすかね・・・」
「おっさん、ああ見えて賢いからな、何か理由があるんやろう。まだレイラさんに俺らのことを伝えちゃいけないらしいしな」
「何でです?」
「さあな」
(多分、おっさんの彼女への愛情やろうな。可愛そうに強制的にエリートの道、進ませられた人やから・・・)
そう思ったが口には出さなかった。
サブの手の中のクッキーがいつのまにか無くなっていた。ウサタヌキはサブの手を覗き込んでいる。
「鉄鎖さん、そろそろ行きませんか?レイラさんに見つからないうちに」
「そうやな」
鉄鎖がワゴン車の助手席に乗り込んだ。
「次は何処に行きます。売上の上がる所に行きましょうよ」
続いてサブが運転席に乗り込む。
それに、鉄鎖は不気味な笑いをサブに向けた。サブは、嫌な予感が走り、エンジンを掛けるのを止めて、鉄鎖を見つめる。
「実はなぁ、もう決まってるんや。おっさんからの指令でな」
「またですか~」
項垂れるサブと、高笑いをする鉄鎖の二人は、この後直ぐに思井沢高原を出発した。
レイラは、もう一度鉄鎖に会いたかった。
こっそりと、聞いてみたいことがあった。
だが、レイラは鉄鎖達の後を追わず、子供達の植樹を見守ることにした。
今、レイラは鉄鎖とサブが去って行くのを感じていた。
<つづく>
この部”22”で第16話は終わる予定でしたが、もう少しだけ続きます。
宜しくお願い致します。