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第10話 レイラ、ホステス一体《いちにちたいけん》2

レイラとノシさんが親宿しんじゅくのスナックで気持ち良く飲んでいたところ事件に巻き込まれてしまうのである。

しかし、二人はその事件を楽しむ大物振りを見せるのであった。

 ◆レイラ捕り物帳◆

 女性の悲鳴と共に、お店の扉が開くとホステスらしき女性が飛び込んで来た。

 女性は扉を閉めようとするが、外からも、誰かが扉を開けようとしている様で、扉が閉まらない。

 ついに女性は力負けし、取っ手から手を離してしまった。


 女性は、店の一番奥の壁まで走り込み、貼りつく様な体制で怯えている。

 梢さんも、めぐみさんも一瞬のことで、口を空けたままで固まってしまっている。

 しかし、レイラは何事も無かったかの落ち着きでゆっくりと立ち上がり奥の壁に向い歩き出した。

 そこに一人の男がナイフを持って飛び込んできたのである。


「キャーッ」

 めぐみさんと、奥のボックス席で応対していた女の子が悲鳴をあげる。お客さん達も驚きで動けないでいる。

 しかし、その中正気を取り戻した梢さんの目だけは鋭かったのをレイラは見た。


 男は高揚した様子で、大股で店の中に入り込ん出来た。

 数歩勢い良く入り込んで来たのだが、その中、何事も無かったかの様に落ち着いてお酒を飲んでいたノシさんがタイミングを計ったかのように椅子の後ろへ右足を滑り出した。


 男は、ものの見事にその足に引っかかり、派手に前のめりに転んでしまう。

 何と、その転んだ男の顔の横には、黒いエナメルのパンプスが燦然と輝いている。

 これまたタイミングを計ったかのように、両手を脇に当てたレイラが仁王立ちしている。


 レイラは、左足でナイフを持った男の左手を踏みつける。

 一見軽く踏んだ様に見えるのだが、男は唸り声を上げて思わずナイフを手放してしまう。

 続けて右足で、首根っこを踏みつけた。


 男は一見いや、どう見ても華奢にしか見えないレイラに踏まれ、なぜか全く身動きが出来ないで、もがいている。


「おじさん。ナイフを取ってね」

 レイラは、テカテカおじさんに指示を出す。

 しかし、めぐみさんに対してはあんなに偉そうであったのだが、レイラの足の下にいる男の様に、もごもごと、小刻みに動くだけで全く何も出来ないでいる。


「あら、何してるの?おじさん、早くナイフ取らないとトイレに行けないわよ」

 レイラは、こんな状況の中、何事も無いかのように落ち着いている。

 おじさんは我に返り、男が身動きを出来ないでいるのを確認すると、恐る恐るナイフを拾った。

 レイラは、敢えて、おじさんにナイフを拾わそうと待っていた。


「ありがとう。やれば出来るじゃない。口ばっかりで偉そうなこと言っても駄目よ。ハッタリかけても部下のみんな分っているの。蔭口を叩かれるだけよ。会社でも人任せにしないで、行動しないとね」

 レイラは、おじさんに最高の笑顔を見せた。

 おじさんは、俯いたままである。


「ナイフは梢さんに渡してね。それと、梢さん。隣の店に電話して下さい。ここに来る様に伝えてね。それから4千円持って来るのを忘れない様に!」

「はっ、はい」

 梢さんは、すっかりレイラの変貌ぶりに面食らってしまっている。

「みなさんは、安心して飲んで下さいね。めぐみさん大丈夫ですから安心して下さい」

 レイラは、めぐみさんにウインクをする。

 結構下手である。めぐみさんは冷静にそう思えた。


「さて、おねえさん。どうしたのかしら」

 何故か被害者としか思えない、男に追われて来たホステスっぽい女性にレイラの対応は冷たく感じるのである。めぐみさんはそう思った。


 女性はレイラの迫力に押され声にならない。

「大丈夫よ。安心してね。」

 男は、レイラの足の下で唸っている。

「あ、あの~この人は・・・・」

 女性は、随分と細かく説明を始めた。


 女性の話では、最近ストーカーの被害に会っていたとのことである。

 そのストーカーは、お客さんであり、今レイラの足の下にいる男であるとのことである。

 女性は、偶々今日お店でこの男に付き、幸か不幸か会話の中でストーカーであることが分ってしまったのである。

 女性が怖がって席を離れようとしたところを逆上して追いかけてきたとのことであった。


「そう。その前に。自分が隣の店で働いていることを言わなきゃ駄目ね。それが一番肝心よ」

 レイラの指摘に女性は頷くだけである。


「お姉さん。仕返しに、お姉さんの3年もの水虫の足の裏でも擦り付けてみる?」

「私は、水虫じゃ~」

 と女性が蚊の鳴く様な声で話しかけたところをレイラは遮って、

「遠慮はいらないわよ」

 そこで、ノシさんが凄味のある声で加わって来た。

「私が相手しようかね」


 ノシさんは屈んで、まだレイラの足の下に沈んでいる男を睨み付ける。上から見ていたレイラが、ちびりそうになるくらいの凄みである。

「レイラちゃん。ちょっと降りてやってくれるかい」

 ノシさんがいつもの優しい声に一転している。

 レイラは、ノシさんが唄も芝居も出来ることに関心してしまうのである。


「お兄さん、私がお相手しても良くてよ。好きな方を選んでね」

 レイラが言う。

 店内の人全員が、このストーカーよりも、ノシさんと、レイラの凄さに縮こまってしまった。

 その時、隣の店のママがやって来た。


「あら、残念ね。もう来ちゃったわ」

 レイラは、隣の店のママに向かい、

「お宅のお客さんよね。どうします。警察呼びますか?」

「あっ、いや、そこまでしなくても」

「そう、じゃあこのまま帰しますか、それともちょっとだけやっちゃっいましょうか」

 被害にあったわりには、隣のママは何故か控えめである。

 ママは、俯いたまま声を出さない。


「レイラちゃん、とっとと帰ってもらおうか。他のお客さんにご迷惑だし、私も飲みたいしネ」

 ノシさんが、温和な表情で、おちょこを持つ振りをして、この状況を終わらそうとしてくれた。 

「そうですね」

 レイラが、男の上から降りた途端男は、急に立ち上がり逃げ出した。が、その手をノシさんが捕まえる。

「お兄さん、お金は払って帰らないと。ね」

 ノシさんは、隣の店のママに顔を向けた。

「いくらですかな」

「あっ、はい、あの~」

 隣の店のママは、応えに詰まったのでレイラが代わって応える。

「6,000円でしょ。」

「はい、そうです」

 ノシさんは、男のズボンのポケットから財布を引き抜くと、隣の店のママに1万円札を抜き取り渡した。


 ノシさんが財布を男に返し手を離すと、またもや慌てて逃げ出そうとする。

「おつりの4千円はいらんのかい。」

 ノシさんが隣の店のママに目線を向けると、ママは慌てて用意して来た4千円を出した。

 男は戻って来て奪うように受け取ると、慌てて店を出ていった。

 この後、隣の店のママも、追いかけられた女性も大した礼もせずに自分の店に戻って行った。


「梢さん。お騒がせしました」

「い、いえ、こちらこそすいません。ありがとうございます」

 周りの人とは裏腹に、ノシさんは既に落ち付いて呑み始めている。


「レイラさん、凄いのね」

「とんでもない、ほら、めぐみさんの予報、(ではなくて)占いをした時に、来るのが分ったから」

「それを含めて、やっぱり凄いわ」

 店の中全ての人が肯いている。

 テカテカおじさんも横で声も出さずに肯いている。


「ところで、おじさん。早くトイレに行かないと漏らしちゃうわよ」

 レイラの言葉に、梢さんも、めぐみさんも笑顔を取り戻した。


 この後、数組のお客さんが来て、この話で盛り上がった。

 レイラは、すっかりスター級の扱いであった。

 すっかり、テカテカおじさんはレイラのファンになってしまい、緊張のあまり、無口になってしまっている。


 レイラは、帰りがけにすっかり可愛らしくなったおじさんに帰りがけに予報結果を少しだけ教えてあげた。

「おじさん。娘さんに好かれるには、ケーキを買って帰るよりも次のことをまもることよ。

 一つ、3年ものの水虫を治すこと、直さないと、娘さんより先にお風呂入れないわよ。

 二つ、お酒とタバコを控えて、スーツは10日で選択に出すこと。臭うわよ。時々サウナにも行って加齢臭を絞り出さなきゃ駄目ね。

 三つ、無暗に呻り声や、咳払い、舌打ちはしないこと。うざいわよ」


「難しい・・・かなァ」

 おじさんが下を向いてぼやく。

「簡単よ。若い頃を思い出せはいいのよ。年を取って、周りに遠慮がなくなってしまうから忘れてしまうのよ。若い時は自然と気をつけていたはずよ。それを気をつければ、娘さんも優しくしてくれるわ。頑張ってね」


「じゃあ、ノシさん帰りましょうか。楽しかったわ」

「私も楽しかったよ」

 ノシさんと、レイラは楽しそうに帰って行った。


 梢さんも、めぐみさんにも、二人が理解の範囲を大幅に超えている大物な為、どんな人達なのか良く理解が出来なかった。


 <レイラホステス一体3に続く>






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