第10話 レイラ、ホステス一体《いちにちたいけん》1
レイラが八百屋さんの前で、予報士と言う仕事を始めて、大望の初客が来てから1週間が経過した。評判は鰻登りで、毎日大忙しであった。そんな中、不慣れな人気に四苦八苦するレイラを小学生のもえちゃんが、支えてくれていた。支えてくれていたのだが、ある日レイラが八百屋さんに来て見るともえちゃんがいないのである。
◆もえちゃん外出禁止令◆
大望の初客が来てから早くも一週間が経過した。
ケーキパフェは食べそこなったが、もう、それは何時でも食べられる。
それほどに今のレイラの人気は、ウナギいや、竜の様に垂直上昇している。
午後7時から10時までの3時間の営業時間をボットして過ごしていたのが遠い昔の様に思えてしまう。
そんな盛況な状態が、かれこれ1週間も続いているにも関わらず、レイラは依然として沢山の人に囲まれることに慣れないのであった。
緊張のあまり、おろおろとしてしまうのである。
この状況下で頼りになるのは、やはりもえちゃんである。
小学生3年生のもえちゃんが、大人のレイラの代わりにお客さんを手際良く捌くのである。
もえちゃんは、レイラが予報を出来るのは営業時間の3時間内では、精々10人が精一杯であることが分かると、自分が帰った後もレイラの混乱を少しでも和らげる様にと、ある段取りを考えだした。
それは、レイラの予報に訪れるお客さんは、午後7時の開店時には既に10人を超えてしまう。そこで、もえちゃんは午後6時45分になると、得意のあみだくじで10人のお客を選定し、整理券を渡すと言うものである。
レイラが、出勤する時には既にその日の予約客である10人が決まっているのである。
それでも、もえちゃんは見物客の対応や、そのあとに訪れるお客へのお詫びに、システムの説明やらで、大忙しである。
もえちゃんのおかげで、レイラは予報に徹することが出来ていた。
ある意味、レイラより大忙しのもえちゃんは、次第に帰る時間が遅くなっていったのだ。
レイラはすっかり、もえちゃんの行動力に甘えてしまっていた。
母子家庭であるもえちゃんは、お母さんが午後8時になると、出勤先から自宅に電話を掛かけてくるのが日課になっている。
そして、昨日も、もえちゃんのお母さんが出勤先から電話を掛かけて来たのだが、もえちゃんは帰りが間に合わず電話に出ることが出来なかった。
その結果・・・
今日、レイラが閉店後の直志商店(八百屋さん)に来て見ると、そこには背の高くなったもえちゃんが心細そうにお客さんを整理しているのである。
デレデレもしていなく、一生懸命さが変に色気がある子供である。
あれ、もえちゃん?
んっ?
その子は良く見ると、もえちゃんではなくて、もえちゃんの友達の真希未ちゃんである。
真希未ちゃんがおどおどしながら整理券を配っているのである。
「あれ、真希未ちゃん?」
「あっ、レイラさんお久しぶりです」
安心したようにな表情の真希未ちゃんが頭を下げる。相変わらず礼儀正しい。
「今日は真希未ちゃんが、準備してくれたの。ごめんなさいね」
「いえ、もえちゃんに頼まれたから」
「もえちゃんは、どうしたの?」
真希未ちゃんがもえちゃんが来れなくなった理由を説明してくれた。
「実は・・・」
もえちゃんのお母さんは、昨日は8時少し前に自宅に電話したらしい。いつもであれば直ぐに電話に出るもえちゃんが、幾ら呼び出しても出なかったのだ。
もえちゃんのお母さんは、その後も何度か電話をしたんだけど、もえちゃんが電話に出ることは無かった。
それで、心配したお母さんは、仕事場からタクシーを飛ばし戻ってきたところと、もえちゃんが帰って来たのとアパートの前で丁度いっしょになった。
当然の様に、もえちゃんはお母さんから凄く怒られ、午後6時以降は家を出れなくなったとのことである。
「・・・本当はね、元々門限が6時なんだけど、お母さんが出かけてから毎日ここに来てたみたいなの」
「そうだったんだ」
それは、当然だとレイラも思った。小学3年生で、夜7時を過ぎて出かけて良いわけがない。
もっと先に気付くべきだった。と言うよりは、気付かない様にしていたのかもしれない。
レイラは自分の取った行動を後悔した。
「それで、真希未ちゃんが?」
「うん。もえちゃんから頼まれたの。レイラちゃん一人だと心配だからだって。でも、もう帰るね。私もちょっと家を抜けて来ただけだから。」
「真希未ちゃんごめんなさい。これでも大人だから大丈夫よ。ありがとう助かったわ」
レイラは、笑顔を返して見せた。
「レイラさん頑張ってね」
真希未ちゃんは、街灯の柱に”本日の受付終了しました”と言う張り紙を貼って、両手を振って帰っていった。もえちゃんの文字だ。
小学生にこんなに心配させて、嬉しい反面とっても情けなく感じる。
もっとしっかりしなきゃと思うのだが、この日のレイラの予報も何とか乗り切りはしたが、お客さんへの対応は、ぼろぼろであった。
全く、小学生に心配される通りの結果であった。
翌日も、もえちゃんの友達である靖子ちゃんと澄子ちゃんがコンビで現れた。
6話(三角関係の内角の和は180°)以来である。
二人は、漫才でもしているかのような見事なコンビネーションで準備をしてくれた。
二人は、前説まで行ってお客さんや、通りがかりの人の笑いを誘っていた。
ほとんど、突っ込みの靖子ちゃんが喋りまくり、おっとりと天然の澄子ちゃんがおろろしているだけではあったが。
レイラも、昨日よりは幾分慣れはしたのだが、以前としてアタフタしながらの対応であった。
その日の夜。
閉店と同時に、レイラに予報の場所(店先)を提供している八百屋さんの店主であるノシさんが現れた。
閉店後にノシさんが現れたのは初めてのことである。
「レイラちゃん。お疲れ様。盛況だね」
「あ~、ノシさん。お陰様で何とかやってます」
「もえちゃんが、いないと寂しいね」
「まあ、これが当たり前ですから、それより交替でみんなが来てくれて申し訳なくて・・・。大丈夫だからって、今日、靖子ちゃんと澄子ちゃんには言ったんですけど」
「みんな、レイラちゃんが心配なだけでなくてね、自分も関わりたいと思っているんだよ。レイラちゃんは人気者だから」
「そうなんですかね~」
ノシさんは、レイラの顔つきに嬉しさが混じっているのを見てとった。
「今日も、昨日も5時頃にもえちゃんが来て、友達に一生懸命説明してるんだよ。聞いている、みんなも一生懸命さ」
「えっ、そうなんですか」
レイラは、もえちゃんが来てくれていると思うと元気が出て来る。
「それより、今日ちょっと付き合ってくれないかな?」
「どこへですか?」
レイラが驚きの顔を見せる。
「大丈夫、変なところには連れて行かないから。これだよ」
と、言い右手でおちょこを掴み、飲むふりをする。
「やだな~ノシさん分ってますよ。これですね」
レイラも右手でおちょこを持つ振りをする。
ノシさんがニコッと笑って頷き、レイラが応える。
「全然OKですよ」
レイラもちょっと寂しかったので、呑みたい気分であった。
二人は、早速、大通りに出るとタクシーで親宿に向かった。
◆親宿へ進出◆
ノシさんが連れて来てくれたお店は、親宿駅北口側の中央4丁目にある”C4ビル”と言うビルの4階にあり、”スナック クイーン”と言う店で、名前の通りスナックであった。
親宿駅の北口は、駅を背に右手、東側の中央3~5丁目は、呑み屋さんや風俗店が犇めく一大繁華街となっている。”C4ビル”は中央4丁目の略である。
ノシさんが入口のドアを開けると、30歳前半位のおっとりした感じのママらしき人が、二人を迎入れてくれた。
「あ~ら、ナオさん。いらっしゃい」
どうやら、ノシさんは直志の名前から、ナオさんと呼ばれているらしい。
「いや~どうも」
と笑顔のノシさんは、既に楽しそうである。
「若い娘連れちゃって。ナオさん、こちらの方は?」
ママの問いかけに、
「超一流の占い師さんだよ。うちの店の前でやってるんだよ。ママ、家近くじゃなかったかい。知らなかった?」
レイラは、予報士だと訂正したかったが、ややこしくなるので占い師と言うことで良しとした。
「ホント~?ノシさんまた、ウソでしょ」
どうやらノシさんは、ここでは良くウソをつくようだ。レイラは(ノシさんもやってるわね!)なんて、意外性に嬉しく思った。
レイラが、頭を軽く下げ肯定すると、ママも頭を下げてきた。
「ごめんなさい。近所のことあまりしらなくて」
「いえ、私も良く知らないですから」
レイラと、ママは顔を見合せて笑った。何となく、気が合いそうな気がする。
「梢です。よろしくお願いしますね」
「レイラと言います。こちらこそ」
二人は、挨拶をそこそこに店内に入った。
店は、カウンター4席と、通路を挟んで、反対側にボックス席が3つ並んでいるだけのこじんまりとしたお店である。
ママの他に若い女の子が2人いて、占い師と聞くと興味を持った様にレイラに目を向けてきた。
店には既に、一番奥のボックスに3人連れのお客さん1組と、カウンターには、髪の毛をテカテカに固めた50歳過ぎ位のお客さんが一人いて、それぞれ店の若い女性が応対している。
レイラとノシさんはカウンターに席を取った。ノシさんが一番入口寄りにレイラはその隣に座り、二人にはママの梢さんが付いた。
30分位、ノシさん、梢さん、レイラの3人は取り留めのない話で盛り上がっていた。
梢さんには、女手一つで育てている小学3年生になる女の子がいるとのとである。
女の子は、とてもませており、そのエピソードにレイラとノシさんは爆笑であった。
「いいお子さんですね」
「良すぎてね。・・・小学3年生なのにね、変に大人ぶって何でも自分でやっちゃうのよね。親いらずっ感じ。まあ、そのお陰で一人で家において働きに出れるんですけどね」
「今、一人で留守番ですか」
「多分、ちゃんと家にいてくれると思うんだけど。良くわかんなくて」
梢さんは、ちょっと不安げな顔を見せながら話を続けた。
「あの子が生まれて、私の母と住むようになったの。あの子、小さい頃は凄く人見知りの甘え子だったのよね。それが、2年半位前にこの店を譲り受けた頃に、私も間違ってちょっと男に走ってしまたの・・・」
苦笑いをしながら、口に手を当てている姿が、可愛らしく見える。
「・・・あの子には、分らない様に接していたつもりなんだけど、感がいいのね。その頃から様子が変わって来てね。甘えてこなくなったの。自分のことは何でも自分でしようとするようなってね」
レイラは、自分と照らし合わせて、反省してしまう。
「それから、私の母がその3ヶ月後に亡くなって・・・」
梢さんの声が少し小さくなる。
「・・・どうしようかと思っていたの。母が逝って心細さもあって、支えが欲しくなってね・・・。それで、付き合っていた男にね、子供のこと隠していたんだけど、思い切って話してみたの。そしたら、あっさり逃げられてダブルショックね」
梢さんは、落ちを言ったかのように笑って見せているが、笑顔が悲しい。
さらに、その頃の事を振り返るように話を続ける。
「その時ね、あの子に励まされてね。小学1年生の子によ。そして、働きに行っても一人で大丈夫だって言うの。何か、落ち込んいられなくなっちゃったの」
「しっかりしてるんですね」
「何か、自分の子じゃないみたいよ。最近ますます、離れて行くようで、寂しいわね。自業自得かな」
梢さんは笑って見せてはいるが、レイラには寂しさが凄く伝わってくる。
話を聞きながら一人で飲んでいたノシさんが急に話に加わって来た。
「大丈夫さぁ。子供なりに考えてるんだよ。子供って、親が思っている以上にね色んなこと考えてるんだよ。大人になると、子供の頃にどんなことを考えていたか忘れるからね。私なんか、ずっと一人だからね。うらやましいよ。まあ、自分に問題があるんだけどね」
「あれ、ノシさんが一人でいる問題って何か気になるわ」
レイラの問いにノシさんはあっさりと応えた。
「モテナイって言う問題さ。世界の全女性に50点じゃ駄目なんだよ。90%の女性に30点でも、80点以上を付けてくれる女性が一人いないとね~」
「ナオさんは、みんなに良い顔をしすぎなのよね。八方美人ね、狙った女には、他の女とは差を付けて接しないと」
「ママも厳しいね」
ノシさんは、お酒がとても美味しそうである。
そんな中、レイラは時折聞こえる2つ隣の席の50過ぎのテカテカおじさんの言動が気になっていた。
レイラの中では、髪の毛をテカテカに固めているので、既にテカテカおじさんと言う名前になっている。
テカテカおじさんは、事ある毎に女の子にねちねちと小言を言ってるのである。
内容が、因縁をつけているようなことばかりなのだ。
たばこにはマッチで火をつけれとか、ウイスキー水割りに氷を入れ過ぎだとか。さらに、声に愛想がない等、女の子がどんな行動を取っても一つ一つに、何かしら文句を言っているのである。
最初は、大変だなあ~と思っていたレイラであったが、お酒が多少効き目を現してきたせいか、次第に腹が立ってきた。
レイラの表情が変り、テカテカおじさんの方を睨み付けようとした瞬間、梢さんが耳打ちするかの様な小声でレイラに話しかけた。
「ごめんなさいね。最近良く来るお客さんで、いつもこうなの。きっと、日頃の不満が募ってるのよ」
梢さんは、なにげなくレイラ達と会話をしているようで、常に他のお客さんの会話までも聞いているようである。
テカテカおじさんについている若い女の子がそろそろ限界かなと感じたのか、
「ちょっと、ごめんなさい」
そう言うと、梢さんは隣の女の子と入れ替わり、嬉しそうにおじさんの応対を始めた。
そんな梢さんにレイラはプロを感じてしまう。自分にはとっても出来そうな感じがしない。
レイラは、(勉強させて頂きました)そう、心の中で呟くのであった。
梢さんと入れ替わって、レイラ達のところには隣の若い女の子がやってきた。
「めぐみです。聞いてました。占い師さんなんですか」
先ほどまでの”テカテカじじい”いや、おじさんを相手にしていた時とは違い、明らかに活き活きとした口調になっている。
黒いミニのワンピースが似合う目のはっきりした子だ。
表情の違いに、レイラはきっと大変だったんだろうなと思い、気遣ってしまう。
「大変ね」小声で話しかけてみた。
「あのおじさん、酔って来ると段々大変になってくるの。でも、いつもママが変わってくれるからいいんですけどね」
耳打ちするように教えてくれた。
すると、ノシさんが、苦笑いをしながら話に加わって来た。
「毎日、不満を抱えて大変なんだろう。陽気に憂さ晴らしが出来ればいいんだけどね~。私もね、歳を取ると温和になっていくもんだとばかり思っていたけど、ちがうね」
「ノシさんもそうなんですが」
「ああ、みんなそんなに変わらんよ。気は短くなるし、偉くなったと勘違いもする。特に男はそんな生きものだよ」
ノシさんは、そうは言っているが、一般論を言っているだけでノシさんは絶対にそんなところを見せない人である。と、レイラは思う。
「ねえ、レイラさん。ちょっとでいいから占ってもらえませんか。もちろんお金払います」
めぐみさんの眼は凛々と輝いている。レイラもそこまでの眼付きで見られると何だか嬉しくなってくる。
「めぐみ、駄目よ。レイラさんは仕事中じゃないの遊びに来てくれてるのだから」
梢さんは、やはりこちらの話も聞いており、めぐみさんを制するのだが、その話を聞きつけたテカテカおじさんがレイラに絡んで来た。
「ま~た、占いなんて適当な事言って金をもらおうなんて、そういうやつがいるから駄目なんだ」
おじさんは、レイラの方に顔を向けるが、眼を合わせようとはしない。
破棄捨てるかの様なせりふに、レイラもテカテカおじさんの気の弱さを感じる。
梢さんも、すいませんと言う顔文字でレイラに誤っている。
レイラは、10%の腹立ちと、90%の遊び心が働いて、ちょっと遊んでみたくなってきた。
「じゃ~ちょっと占ってみましょうか」
「ホントですか!」
めぐみさんにそう応えると、本当に嬉しそうで、前のめりにレイラに笑顔を向けてきた。
「めぐみさん、顔・・・近いです」ちょっと引きそうになるレイラであった。
めぐみさんに反して、テカテカおじさんは、ちらっとレイラの方に顔を向け”この女”と言いたげである。
レイラは、気付かぬふりをして続ける。
「何について占いましょうか」
「じゃ、私の将来について」
「将来ねー。わかったわ。ちょっと待ってね」
レイラが、どうやって集中しようかと思っているところに、楽しそうに飲んでいるノシさんが笑顔で名乗りを上げた。
「一曲歌ってもいい」
以外な行動に梢さんも驚きである。
「あら、ノシさんが歌うなんてめずらしいわね」
ノシさん、私の集中の為に歌ってくれるのかしら?まさか、曲に乗るだけで集中出来るなんて知ってるはずないわよね。
誰にも言ってないもの。
それとも、自分の唄で踊らそうとしているのかしら?いつもの様に?ここで?まさか・・・。
レイラは、結局ノシさんが天性のタイミングの良い人だと言う結論を出した。
ノシさんは、全く中年とは思わせないノリで、レイラの集中しやすいアップテンポの曲を意図も簡単に歌いこなす。
そして、半端じゃなく上手い。
テカテカおじさんも聞き入ってしまっていて、文句も出てこない。
レイラも危うく予報を忘れて楽しく聞き入ってしまうところであったが、梢さんを見習いプロの予報士として集中に勤めることにした。
小気味の良いリズムに体を揺らす。
店内の薄暗いライトが、レイラを包んで照らしている。
レイラは、目を閉じる。
店内の雑音の全てがはっきりと飛び込んでくる感じがする。
音楽に集中する。
めぐみさんの意識が感じられる(ついでにテカテカおじさんの意識も)。
大きく深呼吸をする。
さらに集中する。
周りのざわめきが小さくなっていく。
心地よい緊張感に興奮を覚える。そして、目を開けた。
レイラの目には辺りが白いもやに包まれて見える。
気持いい。
そして、稲妻が降りる。真っ青な稲妻。
レイラの脳裏には、めぐみさんの未来が過去であるかのように記憶の中に刻まれる。
(ついでにテカテカおじさんも未来もちょっとだけ見てしまった)
レイラがウフッと笑う。
めぐみさんや、梢さんには、ついさっきまでとは同一人物には見えないレイラがいる。
めぐみさんはドッキとした。
レイラは落ち着いた口調で小声で話し始めた。
「めぐみさんは、ここで働き始めて3ヶ月で、ちょっと悩んでるのね。それは、ここ2日間に起こったトラブルのことね」
「なんで知ってるんですか」
めぐみさんも驚いたが、梢さんも聞き耳を立てていたようで、もっと驚いている。
「今日も起こるわね」
レイラは、いとも簡単に言いのける。
「ホントですか」
めぐみさんも、梢さんも不安そうな表情を浮かべる。
「残念だけど・・・。でも大丈夫」
レイラがニコッと微笑む。
さっきまで、みんなノシさんの歌に聞き言っていたが、今はノシさんの歌を聞いてくれているのは、ボックスに座っているお客さんだけである。
そこについている女の子さえも聞耳を立てている。
ノシさんは歌い終わると、付き合いだけの悲しい拍手にも満足げである。
レイラの耳には、ノシさんの唄は既に残っていなかったが、気のない拍手だけは自然と行っていた。
レイラは店内の人、全てに聞こえる様に、ちょっと声を上げ、さらに続ける。
「まもなく起こるから、絶対にカウンターから出ないでね。それから、みなさんも3分間そこから動かないで!大丈夫直ぐに終わるから。カップラーメンでも作って待っててね」
そこに、テカテカおじさんが、タイミング悪くトイレに行こうとするので、レイラの怒りを買う。
「動くなっていったでしょ!!」
レイラがテカテカおじさんの額に人差し指一本で押さえると、おじさんはそれだけで立てなくなった。
レイラの迫力におじさんも何も言えない。ただ、言うなりに椅子に戻るだけだ。
その時だ、扉の外で激しいもの音がした。
バタン・・。
「キャー」
悲鳴と共に、ドタドタと激しい音が近づいてくる。
ドスン。と、大きな音を立て店の扉が開くと、一人の女性が飛び込んできた。
<レイラ、ホステス一体2に続く>