ガラムの匂いと弾ける火花
貴方がたまに吸うガラムの匂い。
ガラムの後のキスは甘くて。
それはまるで私達の恋を描いているかの様。
ふとした日に、喫煙所で見知らぬ他人がガラムを吸っていた。その独特の匂いと弾ける火花の音。
私は貴方と出逢ったあの夜を思い出した。
仕事終わりに決まって立寄る駅近くのバー。
私は一人で毎日の様に立ち寄っては、決まって煙草を吸いながら赤ワインを一二杯程嗜む。
マスターに仕事の愚痴を零す時もあれば、一人淡々とグラスを手に酒を嗜む時もある。
ただ帰れば一人になると言う寂しさを紛らわす為なのか、この落ち着いた時間が私の疲れや孤独感を紛らわす為の濃密な時間であった。
ある日いつも通り仕事を終えバーに立寄る。
一つ違った事は頼んだお酒。マスターに問う。
「何か良いカクテルは無いかな...?」
何故か今日はカクテルの気分だった。
マスターは少々首を傾げ悩んだ後に答える。
「お客様のお口に合うか分かりませんが、ジャックローズはいかがでしょうか...アップルブランデーベースで甘みと酸味があり美味しいですよ」
「それじゃそれで」
この4Fから見える街並みが、今日は何処か色鮮やかに見えた。
「お待たせ致しましたジャックローズです.........今日は、赤ワインでは無いのですね」
「まあね」
飲むと同時に感じる。確かに美味いって。
酒を嗜み、程良く酔った頃。
煙草を吸う私の隣に、一人の男性が寄って来て囁く。
「お隣、宜しいですか...?」
私は答える。
「どうぞ」
27の私と同じぐらいの歳であろう彼。細身で病弱そうに見えながらも、顔は意外とタイプだった。
「今日は赤ワインじゃないのですね。赤ワインと色合いが似ていて気付きにくかった」
彼の一言から察した。彼もまたこのバーの常連なのだと。
でも酒を嗜む時の私は周りの客等見ず、たまに他の客に話し掛けられれば素っ気無く答える様な人間。
その為なのか、彼がこのバーの常連だと気付かなかった。
彼は話の聞き上手で、打ち解けやすくほんわかとした優しい人だった。
「ジャックローズ、自分も好きなんですよ。良く頼んだりしてて。普段はウィスキー系が好きなんですけどね...」
「私これ初めて飲んだけど美味しいわね」
「赤い薔薇の様で綺麗だよね」
彼の言葉は丁寧ながら何処か洒落ていて好き。
「バージニアスリム良いですよね」私の煙草の箱を眺めながら、彼も煙草を吸い出す。
「何その煙草?初めて見る」
「ガラムって煙草。煙が臭いから普段はハイライト吸ってるんだけどね。今はちょっとガラムの気分で...これ甘くて好きなんです」
「甘い?」
「吸えば分かるよ...」
彼は煙草を一本取り出し私に差出す。
フィルターを咥えて言う「本当に甘い...」
パチパチと弾ける煙草先の火花を私はただ呆然と眺めていた。
気が付けば彼に仕事の愚痴を零したり、他にも自分の事を話したりしている内に時間は過ぎて行く。
気が付けば赤ワイン等も含め、6杯程飲んでいたのだろうか。
私も結構酔っていた。
そして私は途中御手洗へと向かい、用を済ませて席に戻る。
すると彼の姿が無い。
近くにいたマスターに話しかける。
「私の隣に座っていた男性は...?」
するとマスターは微笑みながら答える。
「入口にいらっしゃいますよ。お会計も済んでおります」
入口に彼は居た。酔いのせいか私は彼に気付かなかった。
彼は私に言う「そろそろ帰ろっか」と。
「私の話ばかり付き合って貰っちゃったんだし私が出すわよ」
「じゃあ次はお願いしちゃおうかな。なーんてね」彼は笑いながら言った。
そして彼は言う「家まで送るよ」と。
その言葉で私は察した。
電車に乗り、夜道を雑談をしながら歩く。
私は部屋が散らかっていないか等ばかり気にしていた。
私の住むアパートを目の前にし彼は微笑み言う「また近々グラスを交わしましょう。今日は本当にありがとう」
そう言い残し彼は振り返り帰って行く。
予想外の彼の行動に私は戸惑う。声を掛けようか。どうしようか。
何処か胸が高鳴る様な。そして寂しい様な。
そんな複雑な感情に陥っている間に、彼の後ろ姿は遠のいて行く。
あの後ろ姿を私は未だに覚えている。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
私が初めて書いた短編小説の様な作品です。
まだまだ未熟な為、表現力等が足りない様に感じては小説にも程遠いただの文書の様に感じてしまいます...
「ワンナイトラブ」
その言葉があまり好きではない私です。
寂しさを紛らわす為に行う営みは、互いの性欲は満たされど心の孤独感は埋まらない物だと私は考えています。
でも出逢う場所、夜の街ゆく男性は獣の様に思えてしまうイメージとは裏腹に、素敵な出逢いだってあるんじゃ無いのかな。そんな事を思いながら書いた作品です。
ちなみにお話はフィクションです。




