1話 決意
ニコニコ生放送主、ずいえきの2次創作
ニコ生でいつからか俺は、ずいえきという名前で配信を始めていた。
次第に人が集まるようになり、リスナーという名の固定視聴者がついていた。
ナマポを貰いつつ、仕事やアルバイトへ行っているという嘘をつきながらも、寂しさや欲求を満たしてくれる配信は、俺にとって生きていく意味でもあった。
こんなのは怠慢だろうか。
単なる自分のエゴだろうか。
言い訳だろうか。
.....小さい頃からいじめられていた自分にとって、今こそその失った代償を求めてもいいのではないかと思うようになった。
それからは配信だけが生きがいに思えた。楽しいと思える唯一の時間だった。
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(夜になって)
「それじゃ、もちもち終わろうかね。」
コメント「おつ」「おつ」「おつ」「おつ」
・・・・・・
カチ...カチ...カチカチ
・・・・・・
twitter「最近のずいえきの放送寒すぎてまったくおもしろくないな」
「!!」
カタカタカタカタカタカタカタカタターン
”じゃあ見るのやめろ”
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.....ほんと、最近は「つまらん」だの「落ちた」だの言うアンチが増えたな。
ほならね、自分でやってみろって話だね、はっきしいってうぅ。
大体、君たち平日の昼間っから人の放送でぐだぐだ文句ばっかり言いやがっt(ry
ピンポーン
「は、はーい」
(そろそろ注文した5万の遊戯王のカード届いたかね)
(これから高騰すること間違いなしの激レアカード。また放送でリスナーに自慢しちゃうよ~ん)
ガチャ
ギィ゛ィ゛
配達員(女)「お届けに参りましたーっ」
「おっおぉ...///ムクムクムク」
配達員(女)「?」
配達員(女)「あ、あのー、ここにサインお願いします^^;」
「(相手の目を逸らしながら)あ、えと、ここサイン...あ、ペンあ、あrっ...ありますか?...」オロオロ
配達員(女)「あ、はいwどうぞーw」
(わ、笑われた...!?)
「あ、ありがとうございます.....」
サラサラサラー
・・・・・・
配達員(女)「それじゃ、ありがとうございましたーw」
バタン
・・・・・・
・・・・・・
タッタッタッタ(階段を降りる音)
・・・・・・
・・・・・・
「.....ったく、なんだよあのgm配達員がよぉ。人が何も言わないことをいいことにちょっと噛んだからって笑いやがって。もぉーなんでこうなるぅばじで」
「なんで俺ばっかり.....(泣)」
「ママ、パパ.....おばあちゃん.....俺、悔しいよ」
「.....会いたいよ」
これだから女は嫌いなんだ。どうせみんな俺のことなんてナマポダニロン毛と思ってるに違いない。
さっきのtwitterの奴もそうだ。ほんと世の中ウジ虫共で溢れてやがる。
「俺は!ニコ生で.....ニコ生で人気の生主だぞ!!」
俺は力いっぱい握りしめた拳をドアにかざした。
「女のくせに調子に乗りやがって!!脳が小さい劣等人種がう゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛」
今出せるありったけの声で叫んだ。隣人に聞こえても、聞こえなくても、もうどうでもいい。
俺はこみ上げる怒りや悲しみ、どうにもできない自分の無力さをただただ嘆いた。
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配信が俺の生きる意味だと思っていた。
俺がリスナーを楽しませていると、勝手に思っていた。
でも、それは違う。俺がただの勘違い野郎だったということが今、確信に変わった。
俺は、ただ自分の意志で、自分のやりたいことをしていただけで。
報いなんてものは最初から無かった。いじめで受けた傷、家族を失った傷をくだらない配信でごまかしていただけなんだ。
なんて俺は無力なんだろう。
なんで俺は無力なんだろう。
生きる意味ってなんだろう・・・・?
この1件から俺は配信者として、実に6回目の引退を決意した。
けど今回はそれだけじゃない。俺はもう1つの”あること”を決意した。
この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。