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不思議な光

「げ。」

思わず声が出る。…やべ。顔見ちゃったらつい出ちゃった…

「ヒトの顔見るなりげってなんだ。ちび。」

「ちび言うな!犬みたいな呼び方むかつく!!…しばくぞ!!」

…こーゆー奴だから「げっ」てなるんだよ!

若干イラッとしつつ奴を見上げ睨み付ける。

「へっ、やってみな、豆ちび娘が」

奴はそう言って意地悪そうな笑みを浮かべた。


「いらっしゃいガク。ちょうどいいわ、今からお茶にしましょう」

おばあちゃんは相変わらずふんわりと笑いながら応対する。

奴の名前は富岳。おばあちゃんはガクと呼んでいる。山で猟師をしているゴリマッチョだ。無精ひげでやたらでかいしムキムキだし。最初に私を運んでくれたのがこの富岳らしい。

まあそれは感謝している。そうじゃなければおばあちゃんが困ったのは分かるし、もちろん私も。

しかし数日後に初めて畑の手伝いをしていた時、でかい芋虫にビビったのを富岳に見られて力いっぱい馬鹿にされた。だってでかくてきもかったし。中身アラフォーでも虫は苦手だよ耐性ないんだよ私は!

…お手伝いで少し慣れてきたとはいえ今でも苦手なことに変わりない。

挙句の果てにチビだのガキだの散々笑いやがった。好きで縮んだわけじゃないわ!!奴の身長は2メートル越えだが、今の私は140センチ程度しかない。ちなみにおばあちゃんは私よりちょっとだけ大きい。

初めはおばあちゃんの知り合いだし、恩人だと思って黙っていたけど、あんまりしつこくてむかついた。

隙を見て脛をおもいっきり蹴ってやったらめっちゃぴょんぴょんしてた。ガタイがでかいのが自慢みたいだけど、でかすぎて足元がお留守なんだろざまあみろ!

それから私と奴は会えば開口一番、悪態をつきあうように。二人で何やかやと言いつつおばあちゃんの後から家の中に入った。


「いつも楽しそうに…二人は本当に仲良しねえ」

おばあちゃんはのほほんとそんなことを言いながら、戸棚から急須を出す。

「「違う!!!」」

とんでもない。不本意だ。綺麗にハモったのが余計にむかつく。

「はいはい」

抗議の声を軽く流して、手際よくお茶を入れはじめた。

「ちっ、それはどうでもいいんだよ。ばあさんホラこれ」

そういうと富岳はテーブルの上に綺麗に捌いた肉の塊を置いた。新鮮な鹿肉だ。綺麗に下処理もしてある。


富岳の家はそれなりの貴族らしいが、趣味で狩猟をしている。代々狩猟が好きで、特にひいおじいさんの熱の入れようは凄かったらしい。職人の元に通いつめ、とうとう自分の猟銃を自分で作ってしまった。

おばあちゃんとの付き合いも長く、こうやって時々おばあちゃんに差し入れを持ってくるのだ。


「まあ、きれいな鹿肉。頂いていいの?」

おばあちゃんは嬉しそうな声を上げる。

「いいよ、久しぶりにでかいやつ獲れたから。ちびと二人でこんくらいならちょうどいいだろ」

富岳はそう言うと、背の銃を下ろし、近くの壁に立てかけた。

「ふふ、いつもありがとう。さあお茶でも飲んでちょうだい。これは早速今日の夕食でいただくわ」


…今日の夕食は鹿肉を使ったシチューとかいいかも。美味しそう。


おばあちゃんに勧められ、富岳はダイニングの椅子に座ると出されたお茶に口を付けた。

私もお茶を飲みながら、壁に立てかけられた猟銃を眺める。


無骨な猟銃だが引き金の部分と銃床には繊細な細工がほどこしてある。長年使い込んでいるのがみてとれるが、ボロくはなく、飴色に輝いていてとても綺麗だ。代々きちんと手入れをして、大切に使ってきたのだろう。…奴も。

でも何だか変だ。気のせいかな…飴色の輝きとは別に、直接日が当たってるわけでもないのに銃がふんわり光って見える?

銃から目を離さない私を見て、富岳は鼻で笑った。

「お前には無理だぜ。ちびすぎて使いこなせねえよ。」

うるさいな。使わねーよ使おうとも思ってねーよ。キッと睨んでまた銃に目を向ける。


「いつも思うけど、本当に大事にしているのね。」

「ひいじいさんからのやつだしな。親父から受け継いだ。まぁ古いし、重いし、癖はあるが俺にはこいつが一番だよ」

おばあちゃんの言葉に、富岳は嬉しそうに答えている。

狩猟っていうか、ひいおじいさんの事本当に好きなんだな…

そんなことを考えながらも私は光る猟銃から目が離せない。


…間違いない。


「…やっぱり光ってる」

その言葉に二人は私と銃に目を向けた。



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