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異世界での暮らし

額の傷はすっかりよくなった。おばあちゃんが呼んでくれた医者はの腕は本当に良かった。今日はおばあちゃんの畑のお手伝いをしている。庭の片隅にある小さな家庭菜園だ。これまでおばあちゃん一人だったし、このくらいで十分らしい。

ぶかぶかになったロンTの代わりに、おばあちゃんがタンスにしまっていた服をくれた。着物みたいなワンピースだった。おばあちゃんの娘が子供のころに着ていたものらしい。

行先もなく、このままただで置いてもらうわけにはいかないと思いおばあちゃんの畑のお手伝いを始めた。おばあちゃんは気にしなくていいのに、孫ができたみたいで楽しいからと言ってくれたがそういうわけにはいかない。見た目は子供だが、中身は独身アラフォーだ。それでなくてもぼーっとしている時間を作りたくない。

昼間はそうやって気を紛らせているが、夜になるとこれからどうしようという不安が募ってきて眠れなくなる。そういう時は枕元に置いていたお守りを握るようになった。今ではあのお守りをいつもポケットにいれて持ち歩いている。


最近は現実の世界が遠い昔の事のように感じて、この世界が夢だと思えなくなってきている。気づけばあれから一ヶ月ほどたっていた。


このままおばあちゃんのところに居続けるわけにはいかない。ここを出て自立すべきだ。働こう。雇ってくれるところはあるだろうか。家も探さなきゃ。

綺麗に色づいた野菜を手に取り、そんなことを考えながらぱちん、ぱちんと鋏で茎を切っていった。


「おばあちゃん、これ台所に持っていけばいい?」

私が抱えた籠には、収穫したばかりの野菜が入っている。

「お願い。今度、先生がいらしたら差し上げたいの。」

もんぺを履いたおばあちゃんはにこにこ笑っている。結局、呼び方はおばあちゃんで定着した。


おばあちゃんは家族と離れて暮らしている。お会いしたことはないけど、でも家族仲は悪くないみたい。手紙のやりとりはしていて、たまにおばあちゃんが楽しそうに家族の話を聞かせてくれる。

今日までにこの世界についての話を色々聞いた。

まずこの国、夜の皇国の他に隣国として洸陽帝国、大地の連合国があるそうだ。夜の皇国の民はゆるく穏やかな気質だが、洸陽帝国は血気盛んなお国柄で、大地の連合国はそろって頑固なんだそう。喧嘩っ早いのと言い出したら聞かない系に挟まれてんのか…

あと、この世界には身分制度がある。王族・領主などの貴族・商人を含む一般市民という感じだ。

この間おばあちゃんと買い出しに出かけた時に町の様子を見た。穏やかな中にも活気のある町だったが…率直に言う。ごちゃまぜだった。

建物の屋根は瓦で出来ているものが多い。男性はズボンにシャツといった洋服だが、女性は着物っぽいものを着ている人が多い。そういえばもらった服もひざ丈の着物ワンピースだった。

服についておばあちゃんに尋ねたら、着物っぽいのは一般の女性のありふれた服装だそうだ。そして笑いながら貴族の人の服はもっときらびやかだと教えてくれた。動きづらいから、畑仕事なんてできないわね。だそうだ。

何となーく日本ぽいなーなんて思っていたら、遠くに見えたのはこの国の国王の居城。

…美しい洋風の城だった。何でそっちなんだとつっこみたかった。前にネットで見たドイツの城みたいだ…。その城を眺めていると、唐突に理解した。それと頭の中で何かが割れるような音。


…ここは夢じゃない。多分異世界というやつだ。帰る方法なんて分からないし、私はここで暮らすしかないんだ。

であればやることは、もっとこの世界の情報を得ること。


この世界には妖精みたいな存在がいる。精霊とか九十九様とかいうらしい。精霊はモノに宿り、手を貸してくれる。たまに見かけることがあるそうだ。九十九様はとても希少で、長く大切にされているモノに宿り、持ち主を守ってくれたりするそうだ。

80年以上生きているおばあちゃんもさすがに九十九様には会ったことはないのだと話してくれた。ちょっと気になる。他にも、この国の成り立ちや伝承を色々聞かせてくれた。

あと、この国は王政であること。おばあちゃんは国について話してくれた。現在の国王はだいぶ高齢だそうで、後継者争いや隣国との関係なんかで大変らしい。やっぱどこの世界でもそういうのあるんだね。

そんな話を二人でしていると外から大きな声がした。

「ササばあさん!いるか~?」

声と共に猟銃を背負った大きな男がぬうっと庭へ入ってきた。




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