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てすと

作者: 城井和仁

「試したいことがあるんだ」


香月さんは唐突にそんなことを言い出した。

ロクなことにならないというのは経験により身にしみているので僕は漫画から目を離し速やかに香月さんに振る違う話題を考える。


「そういえば明日はバレンタインだけど誰かに「試したいことがある」」


三度目はないと言わんばかりの気迫を持った言葉に、危険を感じた僕は大人しく全てを諦めた。

香月さんとの付き合いにおいて諦めというのは大事だ。

なにせ絶対に折れてはくれない頑固者だから。


「死ぬほど愛してる、という言葉があるだろう」


ほら、物騒なのが来たよ。


「私は未だかつてそこまで誰かを好きになった事はない、だけどそれに対して憧れはあるんだ。情熱的な愛で死んでしまうほど焦がされるのも良いかなって」


成る程、頭が茹ってるのかな。

ストーブききすぎだものね。

彼女風にいうなら焦げ付いてるんだろう。

というか灯油くさいんだけど。


「と、いうわけで私を愛してくれ」


「どうしてそうなるのさ」


話の流れ的には恋愛成就の手伝いをしてとか言われるんじゃないの?普通は。


「何を言う。私を愛してくれるのは君だけだ」


それはどう言う意味だろう。

香月さんは美人だし人望もある。

まぁ、少し変人すぎて近寄りがたいみたいだけど。


それでも愛して、、、はわかんないけどみんなに好かれているはずだ。


「ほら、私に愛を述べろ。二十字以上だ」


「えー、、、」


唐突なフリに不満はあるけど少し考えてみる。

愛を伝えろと言われても、そんなの早々思いつかない。


香月さんは悩む僕を見て笑っている。

きっとそれが目的だったんじゃないだろうか。


「愛しています、あなたとずっと一緒にいたいです」


「陳腐」


一言で切り捨てるわりには凄いにやけている。

本人はこれでポーカーフェイスを気取ってるのだから面白い。


「君が私を愛してるのは知ってるしずっと一緒なのは決定事項だから」


香月さんは僕との未来を疑いもしない。


そして彼女がそう願う限り僕はそうあるのだろう。


それが彼女の幸せかと言うと否だ。

だけど僕が否定する事は許されない。


だから今日も彼女の希望に答え続けることにする。


「君が飽きてしまうまで、か。夏の虫の気分」


「今は冬だろう、何を言ってるんだ。のぼせたか?」


僕は正気を疑われたのが少し腹立たしかったので漫画に視線を戻す。


香月さんは結局、日が暮れるまで帰らなかった。






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