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8.マルクの正体

 アッサムは優雅にルキアをエスコートする。

若く美しい二人に多くの視線が集まった。

スッテップを踏む二人の息はぴったりだ。

「陛下と踊っていた時は子供のような雰囲気でしたのに…」

「えぇ、全く雰囲気が違いますわ」

「麗しのプリンスと謎のプリンセス…お似合いですわ」

多くの人に注目されているのは変わらないが、ガランと踊った時とは違う。

みんながその気品に惹かれ、見惚れていた。

「皆様レイファーナ侯爵に見惚れていますわ」

ふふっと小さく笑ったルキアの耳元にアッサムは囁く。

「あなたに見惚れているのですよ、私と同じく」

「お上手ですわ、レイファーナ侯爵」

「ティルファナ嬢、私のことはアッサムとお呼びください」

「できませんわ…恐れ多いですもの」

「せっかく知り合えたのだ、対等に話してくれると嬉しい」

アッサムは踊りながらも息を切らさず話す。

もちろんルキアも優雅な微笑みを浮かべているが。

「ではレイファーナ侯爵…いぇ、アッサム様も私をルアとお呼びください」

「そうします、ルア嬢」

「…ところでアッサム様は侯爵にしてはお若いですね」

「ルア嬢、二人で話している時は口調を崩してください」

ルキアは社交界に不慣れなため、こういう場合の上手な断り方を知らない。

5歳で必要だった分は父に教わったが、5歳の令嬢に名前で呼んでほしいと頼むものはいない。

否、王族に頼むものはいない。

そのためルキアは曖昧に頷いた。

「善処しますわ…ではアッサム様、先ほどの質問の答えをくださいませ」

「あぁ、実は侯爵といっても私を守るために父がくらいを譲ってくれただけで、実質的なところはまだ父が担っている」

「…守るため、ですか?」

「私は長男だが本妻の息子ではない。それで疎まれ排除されそうになっていたから、父が離れでなく本館に住まわせてくれたのだ」

「大変ですね」

「えぇ…でもいいのです。苦難を乗り越えれば幸せが待っている、ルア嬢と出会えたようにね」

「本当にお上手ですね…ご令嬢たちに人気なのではありませんか?」

ルキアの質問に肩をすくめアッサムはルキアを外へ誘う。

 先ほどよりも輝く星が増えたようだ。

「ルア嬢…いぇ、ルキア様ですよね」

「…⁉︎」

「私の母はカルティナから来たのです。先代王の時代にマルクという文官と共に」

「お父様の時代…マルクさんと?」

「えぇ、私の母は平民でしたがカルティナの平民はここの下級貴族から中貴族と同じくらいの地位ですので、母は中級貴族の父の元へ嫁いだのです」

ふと、ルキアが会場に目を向けるとマルクが慌てたようにやってくるのが見えた。

「アッサム様!ルキア様に不用意に近づかないでください、我々の正体が外部にバレます」

「正体?」

「ルキア様には話しておかなくてはいけませんね」

マルクは普段のおっとりした雰囲気とはガラリと変わり鋭い、警戒するような雰囲気をまとった。

「ここでは詳しくは話せません…」

「ではルア嬢、お茶会にご招待しましょう。マルクも共に来てください」

アッサムはさらっとお話の席を整える。

「後ほど正式な招待状を送りましょう…ルア嬢今日は楽しかった、これからもどうぞよろしく」

「こちらこそとても楽しいひと時を過ごさせていただきました。お茶会をたのしみにしております」

アッサムはもう一度ルキアの手に口づけすると去っていった。


「ルキア様、改めてお目通りかない恐悦至極に存じます。ご無事でいらっしゃいましたことを心よりお喜び申し上げます」

マルクがカルティナ式の礼をする。

ルキアはそれを見て、懐かしさを感じ、父と何度も練習した受け答えをする。

「私も嬉しく思います。これからも宜しくお願いしますね、頼りにしております」

そう言って優しく微笑めばマルクは驚いたように目を見張った。

「…すでに教育済みですか、さすが陛下です」

そう言って目を細めたマルクも懐かしそうに微笑んだ。


マルクとレイファーナ侯爵の意外な繋がり。次回はカルティナ王国の国家機密が明らかに。

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