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5.すれ違う心

「…ルキアは、陛下のこと好きなの?」

「え?」

突然の話題にルキアは戸惑った。

「陛下の前だと嬉しそうだし、安心してるみたいだから」

ルキアは首を傾げながら答える。

好きに決まっている。

父のように包み込んでくれる存在なのだから。

「うん?大好きだよ?」

「そっか……」

ミアトは微かに瞳を揺らす。

「どうしたの?」

「…なんでもないよ!ただ仲良いなぁ…と」

「うん、ガラン叔父様は私の特別だもの」

特別…お父様みたいな人、守ってくれる大人、無償の暖かさをくれる人、本物の気持ちをぶつけてくれる人。

ルキアにとってガランは王族だからこそ触れることの難しい、本当の気持ちをくれる人だった。

「…うん」

ミアトは表情を曇らせて夜空を見上げる。

それから長いため息をつくと、静かに言った。

「ごめんルア、今日は先に帰る」

「えっ?」

驚くルキアを残し、ミアトは階段を駆け下りて行った。

離れたところで見守っていたマルクも驚いたように近づいてきた。

「ルキア様、いったい何があったのですか?」

「…わからないわ…私ミアを怒らせてしまったみたいなの…」

「いったいどのようなお話を?」

「陛下と私の仲が良いというお話でしたけど…?」

「あぁ…そうでしたか。承知致しました」

「えっ…?」

ルキアには何がどうなっているのか理解できなかったが、マルクには全て分かったようだ。

マルクはため息をついた。

(大方、ルキア様が陛下のことを異性として好いていると勘違いしたのでしょう)

まさにその通りだった。

だからこそあんなことを尋ね、ルキアの言葉に傷ついたのだ。

「ルキア様、ご迷惑をおかけして申し訳ございません」

「大丈夫です。私、ミアのことを相当怒らせてしまったようなので、しばらく顔を合わせないでおきますわ。ミアに伝言をお願いしても?」

「はい」

「”影なる努力は己を強くするために、光のもとでは他者に認められるために。正面からぶつかってこそ認められることもある”という教訓を元に、不満も口に出さなくては伝わりません。私に悪点があったなら直接そう言ってください、と」

「承知致しました」

ルキアはよく故郷の教訓を口にする。

それほどまでに身に染み付いた教え。

それは父から言われて来たことだった。

教訓はルキアの中に残る数少ない父との思い出であり、父がルキアに残した生きるための力の一部であった。


 一方ミアトは心底後悔していた。

今まで自分の感情をこれほどまでに制御できなくなったことなどなかった。

ルキアが国王のことを”特別”と言った時、なぜか胸がぎゅっと締め付けられた。

感情がぐちゃぐちゃに混ざっていくのを感じて、ルキアの元から逃げ出した。

ルキアにこの感情を見せちゃいけない、直感的にミアトは思った。

(あぁ…ルアにカッコ悪いとこ見られちゃった…)

トボトボと家に向かう。

今までこの道を歩いたことなんてなかった。

暗い夜道はなんだか怖くて、ミアトは自然に早足になった。


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