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1.祝福されし王女

 両親を亡くして以来、国王である叔父に虐げられてきたカルティナ王国の王女ルキア。

その端麗な容姿たるや美姫と呼ばれた母の血を受け継いでいることは一目瞭然であった。

その上聡明であった父にも似ているとなれば、現国王である叔父に畏れられていることにも納得がいく、それほどまでに王位を継ぐにふさわしい娘であった。

そんなルキアは幼いながらに多くの人に慕われ、可愛がられていた。

 偶然か必然か、ある日ルキアは忽然と姿を消した。

国中が捜索されたが、ルキアはもちろん痕跡すら見つからなかった。

まだ7歳になったばかりのルキアが一人で国を出られるはずがない。

誘拐か、すでに亡くなっているのか。

国中が小さな姫の帰りを待ち望んだ。

国民にとってルキアは前王を思わせる最高の指導者であったのだ。

そんな中、絶望に沈みかけていたカルティナに天族の使い降り立った。

『王女ルキアは来たるべき時になれば戻ってくる。彼女が戻るまでしかとこの国を守りなさい』

言葉少なに告げられたルキアの無事は多くの国民の笑顔を取り戻し、カルティナに活気を溢れさせたのであった。

 一方ルキアは遠い国の小さな診療所にいた。

「んー、やっぱり記憶が曖昧みたいだねぇ」

近くの森で倒れてたところをこの親子に拾われたようだ。

「…本当に何があったのかねぇ」

「母さん、この子しばらくここにいてもらおうよ!」

「え…?まぁリアが言うならうちはいいけど…お嬢ちゃんどうする?」

「…お願いします…」

ルキアは親切な親子に頭を下げた。

素性もわからない者を家に置きたい人などいない。

ルキアは自分にとっての”思い出”に当たる記憶をほとんどなくしていた。

残っているのは豊富な知識と、生まれ育った国のわずかな思い出だけであった。

「リア、5歳だよ。よろしく」

「私は…」

「…名前、ルアってどう?思い出すまで!」

「ル…ア?」

「うんっ!リアと似てるでしょ?」

「ルア…ルア。うん、ありがとう」

リアがふわっと微笑むと、釣られたようにルキアも微かな笑みを浮かべる。

「今日からルアはリアのお姉ちゃんね!」

リアが心底嬉しそうに言い、その母であるリファは微笑んでそんな二人を見守っていた。

 ルキアはその日から医術の勉強を始めた。

もともと生まれ持った覚えの良さと、ルキア自身の努力によってあっという間に一人前の知識を吸収してしまった。

そんな日々の間にもリアは”ルアお姉ちゃん”と呼ぶほどにルキアのことを慕い、リファも実の娘と同じようにルキアのことを可愛がった。

診療所を訪れる患者さんたちと触れ合ううちに、記憶をなくし曇っていたルキアの表情も少し明るくなった。

 そんなある日のことである。

一人森を散歩していたルキアは豪華な服を着た一団に行きあった。

天性の人懐っこさに好奇心も加わって、ルキアはその人たちに近づいていった。

「ミアト様⁉︎大丈夫ですか⁉︎」

「うっ…」

必死に呼びかける人たちの中心には綺麗な顔立ちをした少年が横たえられていた。

肩からは鮮血が流れ、周りの草花を染めている。

苦しそうに息をしているあたり大丈夫ではないのだろう。

「どうしたの?」

ルキアがふわっと覗き込むと少年はうっすらと目を開いたがまたすぐに痛みに顔を歪めた。

「あのっ、私に治させて?」

胡散臭そうに眺めている大人たちの間をぬってルキアは少年の横に跪き、手をかざす。

『我は光の使い手なり、光よ我が意に従い傷を癒し給え。』

ルキアの紡いだ綺麗な加護により少年は光に包まれ、出血は止まった。

周りの人たちからもどよめきが漏れる。

「加護が使えると言うことは貴族階級か?」

一人がルキアに尋ねたが、記憶を失っているルキアに答えられるはずもなく、少年は本格的な治療のため診療所に運ばれた。

 診療所におそらく身分の高いであろう人が大勢尋ねてきたことでリファは軽いパニックに陥り、リアは”王子様”と目を輝かせた。

だがさすがはプロ。

リファは動揺しながらも的確な手当てをし、お付きの人(?)をしっかりともてなした。

成り行きを聞き、リファたちはルキアが加護を使えたことに驚いた。

「まさかとは思っていたけど…着ていたドレスも綺麗だったし…でも本当に貴族階級だとは…」

「…ここでは貴族以外加護が使えないの?」

「どう言うことだ?祝福がないのに加護は使えないだろう?」

お付きのうちの一人、責任者であるマルクも首をかしげる。

「私の故郷では全員が加護を使えたから…」

カルティナ王国は北大陸の中で最も天界に近く、天族の祝福を多く受けている。

そのため、ルキアにとって加護が使えない人というのは知識として知っているだけの存在であった。

カルティナは加護によって栄えてきた国だ。

国民は何かしらの加護を使えることが当たり前であり、王家の人間ともなればほとんどが全属性を扱うことができた。

拾われてから二ヶ月と少し、診療所と森ばかりで過ごしていたルキアは気がつかなかったが、ここサラィファネ王国では加護が流通していない。

加護の印は平民には手の届かないものであった。

そういう国が多い中で祝福を得られる人が多いカルティナは特別と言えよう。

今回はルキアが治癒魔法を使いました。次回は診療所にミアトのお迎えが…

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