歌芝居「狂気の泉」
第二幕 第一場(『殺竜号』内部)より抜粋
ヤッキマ 僭越ながら、申し上げたいことが。
親衛隊士・1 なんと大胆な。
親衛隊士・2 我らが王に。
親衛隊士・3 意見具申とは。
ナイビット 参議会議員を見捨てたとの件、決定を変えるつもりはない。
ヤッキマ 存じております。
親衛隊士・1 我々も!
親衛隊士・2 我々も!
親衛隊士・3 我々も!
ナイビット しかし、話は聞こうではないか。
親衛隊士・1 寛大なるかな!
親衛隊士・2 その通り!
親衛隊士・3 その通り!
ヤッキマ どのようなお考えによるものなのか、愚かなる私に兆しだけでも。
親衛隊士・1 我らも――――――それを聞きたい
親衛隊士・2 我らも―――――それを聞きたい
親衛隊士・3 我らも――――それを聞きたい
ナイビット それならば話そう。だが、理解できるとは限らぬ。
そして一回限り。これは寓話だ。寓話としてしか話さぬ。
ヤッキマ 承知いたしました。
親衛隊士・1 ―――――承知いたしました。
親衛隊士・2 ―――――承知いたしました。
親衛隊士・3 ―――――承知いたしました。
ナイビット これは、ちょうどこの地に伝わる話。
この地が遊牧民の土地だった頃、川の水を求めて偉大な王が町を作った。
しかし、町が完成したとき、王はお告げを聞いた。大地からの偉大な声だ。
やがて川の水は悪くなるだろう。それを飲んだ者は狂ってしまうだろう。
賢明な王は井戸を作った。井戸の水を飲めと町人に諭した。
水を求めて町に来た人々が聞くはずはなかった。
王は自分だけ井戸の水を飲み続けた。
水はやがて悪くなった。
町人はやがて狂った。
王ひとりだけが正気だったが、王の言葉は通じなくなった。
王は気づいた。自分も川の水を飲めば、町人に話が通じると。
そして町は平穏になった。
また川の水は良くもなれば悪くもなるだろう。
ヤッキマ 感銘を受けました。理解できたとは申せませんが。我らが王に。
親衛隊士・1 ―――――感謝を。
親衛隊士・2 ――――――――感謝を。
親衛隊士・3 ―――――――――――感謝を。
ナイビット だがこれは逸話に過ぎぬ。私が王であったなら。
親衛隊士・1 なんと。
親衛隊士・2 我が君が王であったなら。
親衛隊士・3 ―――――――――――あったなら。
ナイビット 王が町を去るのだ。
ヤッキマ ああ!
親衛隊士・1 ――ああ!
親衛隊士・2 ――――ああ!
親衛隊士・3 ――――――ああ!
ナイビット わかったならば、私は休む。
親衛隊士・1 お休みなさいませ。
親衛隊士・2 お休みなさいませ。
親衛隊士・3 お休みなさいませ。
(ナイビット去る)
ヤッキマ ああ、なんということだ! 我らが王は。
親衛隊士・1 ――その言葉だけは。
親衛隊士・2 ――――その言葉だけは。
親衛隊士・3 ――――――その言葉だけは。
親衛隊士・1 言ってはならぬ!
親衛隊士・2 言ってはならぬ!
親衛隊士・3 言ってはならぬ!
ヤッキマ 王は我らを見捨てたのだ!
(暗転)




