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魔王の天敵〈歩〉  作者: 鈴木タケヒロ
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プロローグ

 この小説は私がこの「小説家になろう」のサイトで書いた初めての作品です。私自身、今までは小説は読む専門で書いたことはありませんでした。小説を書いてみたい! と思った時に知り合いに紹介されたのがこのサイトでした。何らかの賞に応募するよりもここで書かせていただいた方がより多くの方たちに読んでもらえる、そう考えるに至ったため利用させていただいてます。

 今作は多少のスパイスを効かせた勇者が魔王に挑むというファンタジーの王道と言っても過言ではありません。しかし、今作を書き終えられた時に初めて、私は小説家のスタートラインに立てるような気がします。多くの方々に今作を読んでいただけること、感想や意見を頂けることを心待ちにしております。

 この世界の未来は暗く既に見えないと言っても過言ではない状況であった。人々の平穏は突如として現れた脅威によって奪われてしまったのだ。

 

 世界に点在する村々の民は豊かではないにしても米や麦、野菜などの作物を育てて、自領土の国頭へそれらの作物を上納することによって報酬を得ていた。その報酬は農具や日用品を買い揃えたり、日々の疲れを癒すための嗜好品や小さな賭場の蓄えに消えたりしていた。

 大きな町に住む人々は大抵が国を守る騎士であって、上納された作物は配給され、彼らの胃は飽腹とはならないまでも八分に至らすには充分であった。ただ、騎士とはいっても平和の中に存在する騎士である。村々の巡回や駐屯地への派遣、国への寄与度の高い騎士が推薦される城の住み込み騎士など仕事は限られていて、騎士でない者からすれば楽をして飯を食らうただの無精者のレッテルを貼られることもしばしばであった。

 

 事の始まりは預言者連中が同時期に騒ぎ出したことにある。

 この預言者とは特別な人間の呼称である。本来人間の身体には魔力が頭の先から爪先に至るまでに微弱ながら流れている。人は自分の身体に流れた魔力を感じ取り、外界へ行使することにより特殊な効果を発揮するのである。例えば、口から火を噴いたり、空を飛んだり、水面を歩くことも可能だ。しかし、預言者とは根本的に魔力を持っていない。いや、この言い方は正確ではない。彼らは外界に魔力を有しているという言い方が正しい。自分の体の中には魔力はなく、外界の魔力を感知し観ることができるのだ。これはつまり、自然界の草木や花、様々な植物などが発する微弱な魔力を感じ取り、天候の変化から人々の考えまで読み取ることができるのだ。このことは彼らに様々な未来の光景をみせるに至った。

 今回彼らは「闇が世界を覆う」「世界は反転し始める」などと不吉なことを口々に叫び始めた。世界中の人々はこの事態の対策をしようにも知識や力など足りないものが多すぎていることに気付き、失意の底に落とされて自分たちの命の限界を悟り、生きることを諦めてしまったかのように、各々の顔からは生者の色は微塵も感じられなくなってしまった。

 何故ここまで人々を落胆させたかというと、今までに災厄と呼べるような災厄に見舞われたことのなかった人類にとって預言者連中が具体的な問題点を言及せずに曖昧な言い回しで世界の終わりを告げていること自体が前代未聞だったからだ。今まではせいぜい国に盗賊が押し入ってくるとか地震が起こって家屋が半壊するとかいうことでも具体的に表現され、事前に回避できるようなものばかりだった。自然界に訪れた恐怖やその一部の死滅は預言者連中に世界が闇に包まれるという抽象的な光景だけをみせてしまった。そして彼らは今までに見たことの無い闇の光景を自分たちでもこの先が分からないという戸惑いと一緒に吐き出してしまったのだ。

 

 ――魔王。

 

 それが闇の正体であった。魔王はひょんなことから何千年かぶりに復活し、闇の軍勢を率いて瞬く間に世界を暗黒色に染め上げた。

 人々は諦めなければならない自分の命運を呪い、そしてその恨みから少しばかりの希望を抱くようになった。誰か――誰か私たちを助けてくれ! ――誰でもいい! 頼むから――光に満ちた明日を見せてくれ!

 

 その時誰かが言った。「伝説にこうある……」

 

 コノヨニ ヤミガ スクイシトキ ユウシャハアラワレ コレヲウガツ


 人々は期待した。この世に勇者が現れて魔王を打ち倒してくれることを。明日という日が光に満ちていることを。愛する家族を、友を、恋人を、明日も愛せていることを――。

 

 ――勇者はこの世に存在していた。魔王を打倒するために存在していた。しかし、勇者はこの時還暦をとうに過ぎ、六十五歳の誕生日を迎えようとしていた。

 読んでいただきましてありがとうございました。

 今作の第一部はプロローグとして書かせていただきました。これを読むことによりストーリーの展開や世界観を想像し、楽しんでいただけることを望んでいます。

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