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レベル99の幼女と最弱パーティー  作者: 癸識
地下迷宮(ダンジョン)探索をしましょう
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第63話

 ……う〜ん。


 危なげなく魔物を倒していく蒼真達を見てリーンは深く悩んでいた。


 もうこの辺りに出てくる魔物レベルでは皆さん苦戦しなさそうですね。

 かと言って、この前のように都合良く適正外の魔物が現れるなんて言うのはそうそうある事では無いですし……まぁ、答えなんてもう出てはいるんですが、皆さんが果たしてどう思うのか。





「ホームを変えませんか?」


 魔物を討伐した日の夕食時、注文した料理が届く前にリーンは珍しく不安げな表情を浮かべて、そう提案してきた。


「と言うと?」


 蒼真はそんなリーンに軽く問いかける。


「蒼真さん達の実力はもう近辺では適正外です。冒険者として上を目指すのであれば、そろそろホームを移すべき時です」


 目を泳がせ、なるべく蒼真を見ないようにリーンが弱々しく告げる。


「ああ、そうか。いや、そうだよな――じゃあ、変えるか」


 言われた蒼真は考える素振りすらなく気軽に答えた。


「そうですよね。皆さん、ここに思い入れもあるので、そう簡単に決断は出来ないとは思いますが――って、えっ?」


「ようやくって所か……いやぁ、長かったな」


「そうね。こんなに長いこといる予定じゃなかったよね」


「全くだ」


 蒼真、理紗、拓也の三人がそれぞれ、感慨深そうに言う。


「え? いや、皆さんこの街に思い入れとか、居心地良くて動きたくないとか無いんですか?」


 そんな三人にリーンが驚きを露わにして早口で問い掛ける。


「居心地が良いのは否定しないけどな」


「最近は特にね」


「馬鹿にされなくなったしな」


 リーンの言葉に同意するように三人は頷き、答える。


「でも、まぁ、最近は自惚れかもしれないけど、今の俺たちならもっと上にいけるんじゃないかと思っててな。リーンが言わなければこっちから相談してみようと思っていた所だ」


 少しだけ不安そうに蒼真がリーンに言う。


「そうなんですね」


 そんな蒼真の言葉を肯定するようにリーンが頷き、答える。


「そうそう。で? いつ頃にするんだ?」


 そんなリーンを見た蒼真は安堵して、そう問いかける。


「出来るだけ早くとは思っています」


「そうか……んじゃ、各自諸々の都合をつけてから出来るだけ早く出発するか」






 一秒でも早く連れてこい。


 とある人物から不機嫌そうに「お願い」という『命令』をされた三汰は非常に困っていた。

 

 リーンに気づかれずに刀傷の男を攫って、生きたままヴェルベットに届ける。いや、普通に無理だろ。そもそも、あの男が島に溢れている魔力に耐えられるとは思えない。近づいただけで死ぬだろ。いや、きっとそれも込みでどうにかしろって事なんだろうが……俺様一人では無理だな。


 眉間に皺を寄せて暫く考えていた三汰だったが、早々にそう結論付ける。


 仕方ない。あいつに相談してみるか。





 その男は本日も大量の書類との死闘をどうにか制してベットにてぐっすりと眠りこけていた。


「誰だ!?」


 だが、急に現れた気配に飛び起きると、近くに置いておいた剣を手にして、誰何の声を上げた。


「ここが誰の寝所か理解しての蛮行か?」


 月明かりすらない暗闇の中、男はある一点を見つめて警戒を露わにする。

 男は夜目が利くので暗闇でも問題ない。そんな男の目でも睨みつける先には何も無い。

 だが、目には見えずとも確かに何かがそこにはいる。


「そんなにカリカリしないでくれ。俺様だよ。俺様」


 男が睨みつけた先から前触れも無く、三汰が姿を現す。


「ああ、三汰か。全く、普通に入ってこい」


 突然現れた三汰にも動じず、男は手にした剣を下ろして気軽に言う。


「何、ちょっとしたサプライズだよ」


 そんな男に向かって三汰は飄々と告げると、勝手に備え付けられた上等な椅子に腰を掛ける。


「これのどこがサプライズだ。言葉の意味を履き違えていないか?」


 男は不満そうに告げると、自らも椅子に腰掛けた。


「で? 何のようだ?」


 男は三汰にそう問いかける。


「ちょっと頼みたい事があってさ。俺様だけだと少し難しい。手伝ってくれないか?」


「お前が難しかったら余に出来る事はない」


 にべも無くそう言い切る男。


「いやいや、二郎だから出来るんだよ」


 三汰はいやいやと手を左右に振って男の言葉を否定する。


「ふむ」


 二郎と呼ばれた男は三汰のその言葉で納得したのか、小さく声を漏らす。


「余は何をすれば良いのだ?」


 そして、問いかけた。


「ある男を呼び出して欲しい」


「呼び出す?」


 三汰の言っている意味が分からずに二郎は首を傾げる。


「ああ、ある人の要望でね。その男に会いたいんだとさ」


 三汰がある人と言ったのを聞いて、二郎は思わず顔を顰めた。


「なるほど、何となく話が見えてきたぞ。その『男』だけを呼び出す必要があるのだな?」


「おっ、察しが良くて助かる。という事は彼女の現状も知っている感じ?」


 三汰は二郎が色々と知っていそうな気配に顔を明るくする。


「ある程度だがな……いや、しかし、そうか。彼女にもばれないようにしなければいけないのか」


 それを聞いて二郎は思わずと言ったように小さく唸り声を上げる。


「ついでにその男を無事に島まで連れて行ってあの人に会わせないといけない」


 そんな二郎に追い打ちをかけるかのように三汰が気軽に告げる。


「そうか、その問題もあったか」


「まぁ、その問題は俺様がどうにかする。一番の問題は彼女に気付かれないように連れて行って、帰す事だ」


「確かにお前には難しいかもな……ちなみに余が協力しないという選択肢は残されているのか?」


「勿論。ただ、その場合はどこかの国で未曾有の天災が起きるだろうなぁ」


「……はぁ。分かった。協力しよう」


 それを聞いた二郎はため息をつき、天災じゃなくて確実に人災だろうと内心でツッコミながら渋々と頷いてみせる。


「おお、それは助かる。やはり俺様の兄は頼りになる」


「何、俺より強い弟程では無いさ」


「暴力だけが力じゃないさ。権力も力の内。ともあれ、早急に頼む。あの人は気が長いほうじゃないからな」


「善処するさ」


 こうして人知れずにある男が誘拐される事が決まった。

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