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レベル99の幼女と最弱パーティー  作者: 癸識
地下迷宮(ダンジョン)探索をしましょう
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第49話

 地下迷宮ダンジョン。そう呼ばれている魔物たちの生息地がある。

 それらは様々な地で確認されていて、その数は五十個。

 ただこの数は年単位で増えていて、世界には数え切れない地下迷宮が存在していると言われている。

 確認された地下迷宮は地下に存在しているという点を除けば、その環境は様々、千差万別である。

 一年中吹雪が舞う極寒の地があれば、人など溶けてしまうのでは無いかと思える程の極暑の地があり、森に覆われた地があれば砂漠もあり、全体を水に覆われた海のような地もある。

 また、地下迷宮は階層構造となっており、階層ごとに環境が違っていたりする地下迷宮も確認されている。

 ちなみに現状確認されている地下迷宮で一番深いものが50階層であり、その地下迷宮は今も探索中であり、その最深記録を伸ばし続けている。

 また、魔物の強さは階層を下るに連れて強くなっていく傾向が高く、深く潜れば潜るほど必然的に生存確率は低くなっていく。

 では、何故そんな危険な地を探索するのだろうか? その答えは簡単である。

 地下迷宮にはそこでしか生息していない魔物も存在していて、そういった魔物の素材はほぼ全てと言っていい位に人間にとって有用なのである。

 つまりは金になるのだ。

 金になるのなら命の危険があっても挑戦する価値はあると判断した冒険者達が地下迷宮に果敢に挑んでいくのである。今では地下迷宮を専門にしている冒険者パーティーもある程である。

 では、何故そんなものが存在しているのかには諸説あり、それらの概要を書くだけで分厚い本が出来上がる。

 そんな地下迷宮の一つに一人と一匹は潜っていた。

 発見された地下迷宮は冒険者ギルドによって初級、中級、上級、超上級と大まかにランク付けされており、一人と一匹が潜っているのはギリギリ中級とランク付けされている地下迷宮である。

 その地下迷宮は全十階層の洞窟型で、一人と一匹がいるのは『十一階』である。

 そう、この中級と判断され何度も冒険者達が踏破され、強い魔物が少なくなり、そろそろ初級に降格されるのではなないかと言われている地下迷宮だが、未だに発見されていない階層が存在していたのだ。

 その十一階層には二匹の強い魔物が存在し、常に戦い続けていた。この階層にいる二匹以外の魔物は二匹の食料でしかいない。


「なるほど、なるほど、このレベルではまだ勝てませんね。でも、まぁ、即死させられる事もないでしょう」


 一人はそう呟き、笑みを浮かべると、地上へと足を向けた。




「ダンジョン攻略をしませんか?」


 パーティーが全員揃うなりにリーンはそう言った。

 場所はいつものやまびこ亭。時刻はお昼を少し過ぎた辺り。久しぶりに皆が揃って昼食を取っている最中だった。

 それを聞いて、蒼真や理紗や拓也は思わず顔を顰める。

 何を隠そうこの三人、田舎から出てきて間もない駆け出しの時に、

『冒険者ならやっぱり地下迷宮探索は外せないよな、金にもなるから装備も良いのが買える』

 等と軽い気持ちで初級の地下迷宮に挑み、入って二十分もしないでボロボロにされた苦い記憶があるのだ。もちろんそれ以降は一切手を出していない。

 もっとも、初級のダンジョンでも適正レベルが最低三流からとなっているので当然の結果と言えば当然の結果である。


「……ダンジョン」


 だが、冒険者になりたてであるカリナにはやはり地下迷宮に対する憧れや期待が先行するのだろう。リーンから聞かされた単語に目を輝かせる。


「……ダンジョンか」

「……ダンジョンね」

「……ダ、ダンジョン」


 一方、地下迷宮に苦い思い出がある三人は言葉を濁らせ、互いの顔を見遣る。


 ……ダンジョンはちょっと。

 ……ダンジョンは嫌。

 ……ダンジョンは遠慮したい……が、天使の言葉……どうしたら。


 長い付き合いである三人はアイコンタクトでやり取りを交わす。

 

 そ、蒼ちゃん、リーンちゃんに言ってよ。うちらにはダンジョンは早いって。


 俺が? 無理無理。


 リーダーでしょ? こういう時に威厳を見せないでどうするの? ほら、リーンちゃんだって『しませんか?』って疑問形なんだからどうにかなりそうじゃない?


 ……と言ってもなぁ。拓也が体力的に無理って言えばどうにかなんないかな?


 確かにダンジョンは嫌だが。この僕に天使に反論しろと?


 ……あ~。お前はそういう奴だったな……そういう奴だったか? 昔から?


 とにかく、蒼ちゃんどうにかして。


 ……え~。


 やり取りを終えて、蒼真は仕方なく遠慮がちに手を上げ、


「あ~、その~、え~、あれだ。ダンジョンはちょっと俺たちには早くないか? ほら、俺たちはダンジョンを攻略した事が無いし、攻略の為の装備やアイテムも用意していない。ちなみにそれらを用意する金もない」


 と、早口で言う。


「初めは誰でも経験はありません。私が下見して来ましたが攻略に必要な装備やアイテムは必要ありません。そもそもそこまで難易度が高いダンジョンではありません。今の蒼真さん達なら楽勝、とまではいかなくても大丈夫でしょう。必要なのはやる気と根性だけです」


 そんな蒼真に対して、リーンは笑顔でそう言い切る。


 ……ん? 下見?


 蒼真はリーンが言ったその一言に何だが嫌な予感がした。前科なら沢山ある。またどうせ蒼真達の適正レベルを大幅に超えた難易度に挑ませようとしているのだろう。もっとも、その甲斐あっての急速なレベルアップなのは間違い無いのだが。


 ……これはますます断ったほうが良いような……今まで本当に良く生き残ってきたよな、俺たち。


「ですが、食料や消耗品のアイテム等は買っておく必要があります。ですので、出発は明日の朝にします――ちなみにこれは決定事項で強制参加です」


 ……あっ、ダメだこれ。最初から拒否権無いじゃん。


 そう力強く言い切るリーンを見て蒼真達三人は大きくため息を吐いた。





 失敗した。


 洞窟内に自生した光を放つ苔、ヒカリゴケの微かな光を頼りにメンス・トーターは先ほど負傷した足を引きずりながら歩く。


 仲間たちはボクがいなくなった事に気づいているかな? ……いや、気づいていないはずがないよね。小さい頃から、こんなドンくさいボクにずっと優しくしてくれて、気を遣ってくれる。


 ふぅ~っとメンスは足に走る鈍痛を誤魔化す為に大きく息を吐く。その額には汗がびっしりとこびりついている。


 足が痛い……ううん。なんなら全身が痛い。きっと、ボクが生きてきた中で今が一番痛いかもしれない。


 痛い。そう思うだけで、先程より痛みが増したような気がして、メンスは思わず足を止める。


 ……ボク、助かるかな……怖いな……うん……怖い……


 自然と涙が溢れてきた。急に寒くなり、体がガタガタと震え出す。メンスは堪えきれずに、体を抱きしめ、その場でへたりこむ。


 周りから凄い、凄いと煽てられて、調子に乗っていたのだと思う。


 メンス・トーターは迷宮探索を軸に置くパーティーに所属している冒険者である。

 レベルは32。

 冒険者を始めたのが約二年前。メンスが十二歳の時だった。

 その時で既にメンスのレベルは10あった。特にMPの数値が異常に高かった。

 周りがこれは凄い魔法使いになるに違いないと騒いだのは当然だった。実際にメンスには才能があるのだ。

 その才能を遺憾なく発揮して初級の地下迷宮を破竹の勢いで踏破してきた。もちろん仲間の存在を大きい。

 だが、周りはメンスの才能を褒め称えた。

 だが、その才能あるメンスの命も今となっては風前の灯火である。


 ……死にたくない……うん、死にたくない。


 このままへたれこんだままでは死んでしまう。メンスは震えを止めようと、ぐっと歯を噛み締める。


 そうだ。死にたくないなら動かないと、どうにかして助かる方法を見つけないと。


 死にたくない。生物としての本能がメンスに力を与え、震えや恐怖を抑え込み、立ち上がる気力を与えてくれる。


 考えろ、考えろボク。どうすれば助かる? 生き残れる?


 メンスはゆっくりと立ち上がりながら思案を巡らせる。

 まずは出口を探すために進む。後ろにはあれがいるから進む道は前にしかない。

 メンスはゆっくりと再び歩き出した。

 が、その歩みは十分とせずまた止まった。

 何故なら、そこから先に進めなくなってしまったのだ。


 ……行き止まり。


 メンスは踵を返して、出口を探すために、再び歩き出そうとして気が付く。


 ――足が全く動かない事に。


 確かに足を負傷している、鈍痛が今でもするが、先程までは動いていたのだ。痛みは我慢できる。死にたくないから。


 ……戻、る、の? また、あそこに?


 メンスの足が動かない理由、それは――恐怖である。

 メンスはあれがいる場所に一歩でも近づくのが怖いのだ。あれには今のメンスでは勝てない。先程は運良く逃げられたが、二度も幸運が続くとは思えない。あれともう一度出くわしたら、待っているのは死である。

 つまり、戻るという事は死ぬ確率を上げるという事だ。

 死にたくないから動けているのに、道を戻るという事は自ら死ににいくようなものだ。

 だからメンスは動けない。

 それどころか、自然とメンスの力は抜け、その場でへたれこんでしまう。


 ……む、り、あれともう一度遭うのは、むり。


 絶望。それがメンスを支配する。

 不思議と体は震えてこない。その代わりに頭は真っ白になり、全身に力が入らない。


 ……た、す、け、て……だれか、たすけて。


 絶望的な現実から逃れるようとするかのように、徐々にメンスの意識は遠くなっていく。


 ……たすけ……ああ……ボクは……死ぬ……の……か。


 メンスが意識を完全に手放そうとした、その時、目の前に光が差した。

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