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レベル99の幼女と最弱パーティー  作者: 癸識
レベル上げです
15/76

第15話

 冒険者ギルド。

 ここには実に九割を越える冒険者が登録をしている。

 冒険者がギルドといえばまず冒険者ギルドで間違いないだろう。

 ギルドは少し大きな街であればどこにでも存在している。一つのギルドに登録すればその情報はギルド内で共有されるので、二箇所も三箇所もギルドに登録する必要は無い。

 ギルドに登録する利点は様々あるが、一番の利点は依頼の斡旋であろう。ここに登録していれば冒険者ギルドに依頼された仕事を受け、その報酬を得ることが出来る。

 お金に関わることは実に面倒でトラブルが付きまとう。

 やれ、これでは報酬を払えない。やれ、この報酬では割に合わないもっと払え。等等あげたらキリがない。

 この面倒な部分をギルドは少しの手数料で受け持ってくれる。

 そんな冒険者ギルドにチーム最弱の四人と一匹はいた。

 その理由はもちろん、この前のウッドツリー討伐の報酬を受け取る為……ではない。そもそもあのウッドツリー討伐はリーンが提案して強行した蒼真達のレベル上げで、ギルドの依頼でも、ギルドを通さない個人での依頼でもない為、一銭にもならない。

 では、どのような用事でチーム最弱がギルドに訪れているかというと、レベル確認の為である。

 このレベルを測定する魔法が付与された魔道具はギルドにしか置いていない。逆にギルドであればどこにでも置いてある代物である。

 ウッドツリーの討伐推奨レベルはパーティーで25。それをやってのけた三人は確実にレベルが上がっているはず、否、上がっていないと困る。

 そんな訳で、蒼真は内心うきうきしながらレベル測定の魔道具の利用申告書を記入していた。


「おいおい、チーム最弱のリーダー様が懲りずにレベル測定するらしいぜ?」


 それを後ろから不躾に盗み見た一人の男がこれみよがしに大声で叫ぶ。


「おお、こりゃ注目だな!」


「おいおい、時間の無駄だろ!」


「いいぞ~俺たちより下がいるって安心感をくれ!」


「上がらないレベルを確認してどうすんだよ!」


 すると、ギルドにいた他の冒険者達が一様にやんやと騒ぎ出す。

 中には興味が全く無いものや、蒼真を嘲笑う冒険者達に侮蔑の目を向ける者もいたが、少数である。


「……ふっ」


 一方、騒ぎ立てられた蒼真はどこ吹く風、全く気にしていないというように小さく笑うだけ。


「おいおい、今日はどうした!」


「いつものように反論してみろよ!」


「子犬のようにキャンキャン吠えてみろよ!」


「おっ、この様子じゃ終に冒険者稼業引退か!」


 いつもの蒼真ならこのヤジに食って掛かる。うるせぇ~と文句の一つも言い放つ。だが、今日は違う。何せ、あのウッドツリーを討伐したのだ。これでレベルが上がらないという事は無いだろう。


「まぁ、見とけ」


 蒼真は不敵な笑みを浮かべると、記入した用紙を受付に提出する。


「はい、三人ですね。それでは測定室にどうぞ」


 その用紙を受け取った受付の女性は記入された内容を確認して判子を押すと、事務的な態度で一つのドアを指し示す。

 どうやら今日は珍しく測定室が空いているらしい。ギルドに置いてある測定機は最大十人まで一気に計れる。

 大抵の冒険者は月に一回測定を受けるかどうかという頻度だが、経験を積んでいない冒険者ほど測定をしたがる傾向にあり、ここは冒険者たちの始まりの街、ファースト。いつも測定機は混んでおり、下手をすれば一時間待ちも有り得るくらいに混雑する。

 ちなみに三人、というのは、蒼真、理紗、拓也の三人でましろはともかく、リーンも測定を拒否した。リーンのレベルが気になる蒼真はしつこく誘ったのだが、どうやらここ、ファーストにある測定室がお気に召さないらしく、頑なに首を縦に振らなかった。

 蒼真達三人は受付に指さされたドアへと向かう。

 ドアの上には木のプレートが掲げられており、そこには『測定室』と書かれている。

 そんな分かりやすい入口の隣には巨大な水槽が置かれているが、その中には魚はおろか、石すら敷き詰められておらず、ただただ水がたっぷりと入れられているだけである。

 そんな何も無い水槽の前にぞろぞろとギルドにいる冒険者たちが集まりだした。

 巨大な水槽には目もくれずに蒼真達三人はドアを開けて中に入る。

 部屋に入ると、目に付くのは床いっぱいに描かれた魔法陣と、先ほどの巨大な水槽。この巨大な水槽、二つの部屋の中央に設置されていて、部屋の中からでも外からでも見えるようになっている。

 蒼真達三人は慣れた様子で魔法陣の中央まで歩くと「お願いします」と大声で叫ぶ。

 暫くすると、床に描かれた魔法陣がうっすらと光り始める。

 魔法陣の光は徐々にその輝きを増していき、目を開いているのが辛くなる位に強くなってから唐突に消える。

 光が消えると蒼真は待ちきれないとばかりに早足で巨大な水槽へと向かい、齧り付くように見つめる。

 水槽の向こう側には先ほど蒼真を馬鹿にした冒険者がにやにやと馬鹿にした笑みを浮かべている。


 くそ、今に見とけよ。


 そう心中で思っていると、水槽にうっすらと滲んだ文字が浮かび上がり始める。


 ――きたっ。


 滲んでまだ読めない文字を見て蒼真の心臓が跳ね上がる。ドキドキと早くなる鼓動を抑えようとするように蒼真は胸をぎゅっと握り締める。

 徐々にはっきりしていく滲んだ文字の中には何やら数字も含まれているのが見て取れる。

 実はこの巨大な水槽は測定結果を映し出す掲示板のようなものである。測定機が弾き出した数値を水槽内の水に映し出しているのである。

 ちなみに何も水で無ければいけないという事は無い。

 むしろ、一般的には紙が使われる。水槽に水を溜めて映し出しているのはここファーストのギルドだけである。

 より正確を期すならば、昔はファーストでも紙に印字していた。

 では、何故、他の街にあるギルドと同じように紙を使わないのかと言うと、一番目に経費削減がある。前述したようにとにかくファーストでは測定したがる冒険者が多く、その頻度も多い。

 二番目の理由が、測定したがる冒険者、特に駆け出しの冒険者達は自らの数値を周りに自慢したがる。また、同時に他人の数値も聞きたがるので、いっその事誰にでも見えるようにするか。と言う事でこの巨大な水槽に映し出すことになった。

 リーンにはこの測定結果が多くの第三者に知れ渡ってしまうシステムが嫌われ、測定を拒否された。何やら自分の測定結果で周りを騒がせてしまうから嫌なのだという。

 確かに恐らく二流の上位クラスの冒険者なぞこの街にはいないだろう。少しでも強く、また有名になりたい奴らがリーンを引き抜こうと群がってくるのは火を見るより明らかである。

 それでも、リーンの数値を知りたい蒼真は食い下がったのだが、そのあまりのしつこさを見た理紗と拓也から諫められようやく断念した。

 そうこうしているうちにゆっくりと浮かび上がってきた文字がはっきりと水槽内に映し出された。


 斎藤蒼真。

 レベル 23

 HP  57

 MP  1

 力   55

 技   60

 素早さ 57


 相田理紗。

 レベル 21

 HP  50

 MP  55

 力   38

 技   45

 素早さ 22


 鈴木拓也。

 レベル 21

 HP  30

 MP  32

 力   25

 技   61

 素早さ 62


 結果が表示され、水槽に齧り付いていた蒼真は少し後ろで見ている二人を振り返りみる。すると、二人共水槽に映し出された数値を見て、ぽかんとした表情を浮かべたまま動かない。

 蒼真は再び数値を見る。

 当たり前だが数値に変化は無い。

 次に蒼真は目を擦ってから数値を見る。

 当然だが数値に変わりはない。

 じっと見つめてみるが変化が起こるわけがなく、水槽越しに見える冒険者たちも皆一様に驚愕の表情を浮かべている。

 そんな中、リーンだけがうんうんと満足げに頷いている。

 やがて、徐々に水槽に映し出された数値が滲み始めるが、蒼真達は微動だにしない。

 普通ならもう退室しているか、やがて消えてしまう数値を自前で持ってきた紙に書き込むかしているのだが、蒼真達は瞬きすらせずに滲んでいく数値を穴があくほどに見つめる。

 そして、終に水槽に映し出された数値が完全に消えてから、ようやく蒼真は振り返り、


「――おぉ~!」


 という雄叫びを上げると、すっと片手を上げる。


「――やった!」


「――良しっ!」


 そんな蒼真に呼応するように、二人も片手を上げて、力強くハイタッチを交す。

 パ~ンという小気味いい音が鳴り響く。


「おお、やったな!」


「マジか、おいっ! やったな!」


「信じられねぇ! ついにやったな!」


「やったな! おめでとう!」


 まるでその音が合図だったかのように、ギルド中に蒼真達を祝福する言葉や拍手が鳴り響く。中には足を踏み鳴らす者もいて、弱い地震でも起こっているかのようにギルドが揺れる。

 見たかこの野郎とばかりに蒼真は意気揚々と測定室から出ると、直ぐにもみくちゃにされる。

 いつも弱い、弱いと馬鹿にしている人ほど荒々しく蒼真を祝福する。

 その勢いはとどまる所を知らず、誰かが「宴会だ~!」と叫ぶと、まだ昼間だと言うのに、やまびこ亭に押し入り、寝ていた主人をたたき起こすと、無理やり酒場を営業させてしまった。

 理由を聞いたやまびこ亭の主人も常連である蒼真達の為ならばと、嫌な顔をせずにそれに応じた。

 そして宴会は夜遅くまで続いた。

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