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レベル99の幼女と最弱パーティー  作者: 癸識
レベル上げです
13/76

第13話

「はい、反省会を始めます」


 くたくた、ぼろぼろの姿でテーブルに突っ伏している蒼真と理紗を見て、ぽんっと手を叩いてリーンが言う。

 時折そんなリーンの身長が高くなったり、低くなったりすると摩訶不思議な現象が起こっている。

 場所はやまびこ亭の片隅。時刻は夕方。厨房ではやまびこ亭のオーナーが料理の下ごしらえをせっせと行っている。


「……なぁ、少し休ませてくれないか?」


 リーンの伸び縮みする身長を気にもせずに、夕日に当たって、オレンジ色に染まった蒼真がぐったりとしたままリーンに告げる。


「さっきまで寝ていましたよね?」


 が、リーンはそう言って微笑んでみせる。


「……寝ていたっていうか、気を失っていたんだが」


 ウッドツリーと対峙した時に負った傷か、はたまたリーンに放たれた雷の魔法の影響か、蒼真は体中が痛い。全身痛くてどこが痛いのか分からない位に痛い。

 これでも痛み止めの魔法を掛けているのだ(痛み止めと言えば聞こえは良いがその実態は極弱い麻痺の魔法である)。魔法の効果が切れた時らどうなってしまうのだろうと、蒼真は戦々恐々としている。


「リーンちゃ~ん。私は寝てないから、少し寝かせてぇ~」


 もう、無理、限界と呟いて目を閉じた蒼真の隣では蒼真と同じようにぐったりと机に突っ伏す理紗の姿。

 ウッドツリーに捕縛されたせいか、服の所々が破れていたり、穴が空いていたりしていて実に悩ましい姿である。


「理紗さんはただの魔力切れです。魔力回復アイテムを先ほど飲みましたよね? 怪我自体もかすり傷程度でしたし――はい、蒼真さん寝ない」


 言って、ていっと蒼真の頭に軽くチョップを入れるリーン。


「――痛って!?」


 が、そんな幼女のチョップを痛く感じる程に怪我が酷いのか、はたまた思いのほか強かったのか、目を閉じていた蒼真が慌てて飛び起きる。


「さて、それでは各々何が悪かったのか考えてみましょう」


 慌てて飛び起きた所為で膝をテーブルに思いっきり打ち付けて悶絶している蒼真を尻目にリーンが告げる。


「は~い。レベルが足りなかったと思いま~す」


 ぐてっとテーブルに頬をつけたまま片手を上げて理紗が答える。


「そうですね~。確かに現状ではかなり格上の相手でした。それは事実です。しかし、考えても見て下さい。ウッドツリー相手に砂漠、理紗さんが装備していた炎系の杖。加えて、私とましろである程度痛めつけておきました。楽勝とは言えなくても勝てない状況では無かったと私は判断します――よっ」


 言って、理紗の頭を指先で、デコピンをするように軽く弾く。


「――痛っ!? 何これ!?」


 すると、蒼真と同じように理沙も飛び起きて、そのあまりの痛さに驚き、目に涙を浮かべる。


「蒼真さんは今回の敗因をどう考えてますか?」


「そりゃ、レベルが――」


 ようやく痛みが引いたのか、それとも痛みすぎて痛覚が可笑しくなったのか、徐々に自分の体じゃないような感覚に陥ってきた蒼真が理紗と同じ答えを口にしようとした瞬間。リーンの右手の中指と親指がくっついた。


「――いや、待て」


 それを見て慌てて蒼真は今回の敗因を考える。


「……リ、リーンが参加しなかったから?」


 リーンが言ったように確かにウッドツリーが万全の状態で自分たちと対峙していたとは思えない。

 だが、本来なら、このレベルで挑んで生きているのが不思議な位の格上相手である。蒼真にはとてもではないがリーンがいうような勝機があったとはとても思えない。

 だが、リーンが参加していたらきっと勝てた……いや、まぁ、恐らくリーンだけでも勝てたろうけれど。

 そもそも、ウッドツリー討伐なんて依頼を蒼真達は受けていない。

 蒼真達が受けたのはファースト近辺で増えたゴブリンの討伐である。

 ゴブリン位ならば蒼真達でも問題なく太刀打ちできるモンスターであり、蒼真達の実力を見るのにも適している。

 そんなこんなで朝も早くから目撃の多かった森へと入り、ゴブリンと出会った先から蒼真達は無双していった。

 倒した数も30から先は覚えていない。

 この森のゴブリンを根こそぎ狩ってしまったんじゃないくらいに狩りまくった。

 いくらゴブリンが弱いとは言え、本来の蒼真達にそんな力はない。

 こつこつと一日狩って二桁に届くかどうかという所だろう。

 だが、リーンが加入したチームSai改、チーム最弱は鬼のように強かった。

 リーンが前衛の壁役を引受け、自らは一切攻撃しないのだが、ゴブリンからの攻撃も蒼真達に一切通さない。

 それでいてゴブリンに突っ込んだ蒼真のフォローもこなし、蒼真にはかすり傷一つすらつかなかった。

 三人は楽々と一掃出来た事に気が大きくなり、


『あはは、今の俺たちならもっと高レベルのモンスターでも問題無いんじゃないか? これじゃ、全く手応えがない』


 なんて言ったのが運の尽き、


『あっ、それじゃ、手っ取り早くレベル上げに行きますか』


 そういうが早いかましろに命じて集まった狼牙の群れに蒼真達は拉致され、気が付けばウッドツリーと対峙していたのだ。


「それじゃレベル上げにならないじゃないですか」


 言って、容赦なく蒼真にデコピンを放つ。


「ふっ――」


 が、流石に来るのが分かっていれば蒼真にも避けられる。

 デコピンの更にいうならばリーンの手であれば通常よりも射程距離が短い。避けられないほうが可笑しいだろう。


「甘いですよ?」


 蒼真に避けられて空を切ったリーンの指先がそのまま避けた蒼真を追尾、その頬をぷにっと突き刺す。


「ぶっふ――」


 たったそれだけで蒼真は椅子から転げ落ちて床をなめる。


「はぁ~拓也さんは分かりますか?」


 大きくため息を吐くと、自分の足元に声を投げかけるリーン。

 その視線の先には何故か猿轡をされた拓也がリーンを乗せたまま腕立てを繰り返していた。

 とにかく拓也には体力が足りない。

 ということでリーンにやらされているのだが、本人も体力が無いのは自覚しているのか、この理不尽な仕打ちに異を唱えなかった。

 猿轡をされているのは腕立てをするときに漏れる吐息と声がやかましかったので理紗がやったものである。

 たいして時間は経っていないのだがその腕はぷるぷると震え、その頬はのぼせたように上気し、猿轡から荒い呼吸が漏れている。


「むぅ、むぅ、むぅ」


 そんな状態にもかかわらず、リーンの問いかけに答えようと口をもごもごと動かす拓也。


「ふむふむ。何を言っているのか全く分かりません」


 言って、にっこりと微笑むリーン。

 それを見て、くぐもった奇声を上げて鼻息を荒くした拓也が腕立てのペースを上げる。


「まぁ、敗因は色々とありますが、まずは連係ですかね」


「おいおい、それは聞き捨てならないな? 自慢じゃないが連係には自信がある」


 リーンの敗因に蒼真が異を唱える。

 蒼真は弱い自分たちが生き残れているのはこの連係が上手いからだと自負している。

 実際に他の冒険者からも連係だけは悪くないと言われた事がある。伊達に長年付き合っている訳ではない。


「……えっ? どこに自慢する所があるんですか?」


 蒼真の声を聞いたリーンが目を見開いて驚く。


「いやいや、完璧とは流石に言わねぇ~けど、そこまで言われる筋合いは無いだろ? むしろ、どこが悪いって言うんだよ?」


 そんなリーンに蒼真はむっとしてぶっきらぼうに言い放つ。


「じゃあ、一人ずつ」


 言って、蒼真を指差すリーン。


「まずは蒼真さん。周りが良く見えているのは良い事です。でも、見えてから動くまでに時間が掛かり過ぎです。それでは折角の長所が台無しです。次に敵からの攻撃を後ろに通しすぎです。前衛がそんなに不安定だと遊撃の拓也さんの負担は増しますし、何よりメイン火力である理紗さんが魔力を込めるのに集中出来ません。その結果、先ほどの戦闘のように拓也さんがまず倒れ、その穴を埋めるように理紗さんがたいして魔力が込もっていない威力の低い魔法を連発、結果魔力切れを起こします。それでパーティー崩壊です。何か異論はありますか?」


 淡々と述べるリーンの言葉に蒼真はうっと小さく呻る。


「……お、仰るとおりかと」


 言われてみれば悔しいがその通りと納得するしかない。

 蒼真は元々敵の攻撃を防ぐ壁役よりもどちらかと言えば敵の攻撃を掻い潜り攻撃するほうが得意である。

 このパーティーで壁役をしているのは単に壁役がいないからというだけである。

 だが、そんな事は言い訳にしかならない事は蒼真も知っている。

 状況判断にしてもリーンの言うとおり、遅いとは思わないが、どうしても確認してから色々と考えてしまうのでワンテンポ遅れがちである。

 それでも、今まで対峙したモンスター達では問題無かったのだが、あのレベルになるとその遅れが積み重なって後手に後手回ってしまい、結果致命的なものになってしまう。


「次は理紗さんですが――」


 それから理紗と拓也の問題点も上げていくリーン。

 理紗は敵の攻撃に対して焦って無駄に射ちすぎるだとか、もっと魔力を込めるのに集中しろだとか、魔力を込めるのに立ち止まるないい的だとか、言われていた。

 拓也はとにかく体力。逆にこれしか言われていなかったのでもしかしたらその問題を解決したら案外いい線をいっているのかもしれない……もっとも、ダメだしをしても体力が無い現状では意味がないと思われているのかもしれないが。

 リーンの矛先はましろにまで及び、いつの間にか床にぐったりと伸びた拓也を部屋まで運び込んだ時にはすっかりと日も落ち、晩飯時になっていた。

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