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勇者(ユウシャ)

作者: 津田花

突然光臨してきた話です。

 近年魔物がこの世界を蝕んでいる。

人間の肉を食らい、血を飲み干し、町を消す。


 どこかのクソ迷惑な奴が魔界への扉を開いたらしい。

奴は自分の欲望を満たすための道具として呼び寄せた物に食われ、閉じ方を忘れられた扉は魔物が湧き出ている。



「頼む!この村ではお前しか出来無いんじゃ。」



「断る。」



 俺は人間が嫌いだ。

その点では魔物の方が人間を好んでいるだろう。

食料としてだが。



「孫は……リテロはこの村の最後の娘なんじゃ。このままでは村が滅びる。」



 リテロは俺が人嫌いと知りながら、やたらと関わろうとする女だった。



「かまわない。魔物も食料が無くなればいずれは滅びるだろう。」



 最も、リテロはまだ生かされている可能性は高い。

話によると、魔物は人間に卵を産みつけ、孵った子どもは人間を食い破って出てくる。

産みつけられる人間は肉の軟らかい女か子どもと決まっているそうだ。



「剣を扱える者は城下から来たお前だけなんじゃ!報酬は必ずする。この命を持って約束する。」



「考えさせてくれ。魔物の産卵期までにはまだ時間がある。」



 俺は村長に背を向け、家を後にした。



「分かった。だが有余は明日の朝までじゃ。」



 背中に土産の一言をぶつけられた。


 まったくせっかちなじじいだ。

俺にだって都合って物がある。

第一なぜ新参者の俺が村を守らなくてはいけない?


 俺の良く知る単純バカのあいつなら間違いなく自分の正義を振りかざし、勇敢につとめを果たすだろう。

だが俺は奴ではない。


 報酬だってどうだ?

命に比べれば大したものじゃない。


 そうこう考えるうちに家に着いた。

助けに行かないとなれば村には居られないな。



「荷造りでもするか。」



 とは言っても俺の生活必需品は少ない。

剣、水袋、かつての家族の写真。



「ん?なんだ?これは?」



 女の腕輪だ。

これには見覚えがあるな。



「リテロ。」



 確か以前一度だけ、"男の一人暮らしはろくな物を食っていない"とかほざいて夕食を作りに来たな。

たいした料理じゃなかったが、俺の作る物よりは旨かった。


 その時に料理にじゃまだと腕につけた装飾をとっていたな。

この村では腕輪は魔除けとされ、身に付けている人間が目立った。


 リテロがさらわれたのを見ると効き目はなさそうだが。


 そういえば強い魔除けだからやると言っていたな。

俺が魔物と戦う時に守ってくれるだろうと。

それがこれか。


 俺は試しに以前狩った魔物の角を近づけてみた。

ただの好奇心だ。

魔物の角は武器の材料として重宝される。

それほど堅く頑丈な物だ。



「切れた!?」



 いや、違う?

角に傷をつけた腕輪をまじまじと見ながら角を持ち上げた。



「嘘だろ!?」



 もろくなった角が粉々に砕け散った。



「こんな物を俺に?」



 魔物から身を守れないのはお前の方だろう!?

人を気遣うのも大概にしろ!



「くそっ!だから人間は嫌いなんだ!もっと自分のことを考えろ!」



 俺は自分のためにリテロを救うことに決めた。






ありがとうございました。

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