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天使様

勢いに乗って二話も書いてしまいました。


ピンクのふわふわ綿菓子に包み込まれたなつみは、・・。


「もし、もーしっ。ええっとなんて言ったらいいんだろう。おきぬさぁーん。んーとロベルトさーん。…だめか。ムハラさーん。えっとどれが新しいんだ? なつさん? いや、なつみさぁーん。」



なんだか騒がしい。


眠たいんですけど~。


久しぶりの安寧(あんねい)に、綿菓子の中でふわふわくぷくぷ眠っていたが、何かが自分を呼んでいるらしい。



ぼ~んやりした半覚醒状態で、『(そば)』にいるざわざわと騒がしい人(?)に気持ちを向けてみる。


『側』といっても、物理的にいう隣ではないようだ。


いくつベクトルがあるのかわからないが、自分が属する者の集合体の周りというか、ふわふわ綿菓子の外側というか、なんか遠くて近い所から声が反響して聞こえてくる。


 

「あっ、気づきました? じゃ始めましょうかね。」


何を? と思う間もなく、『側』の人はいきなり呪文のような言葉を詠唱し始めた。


さっぱりわからない言葉だったが、最後に【三階層転生ミーティング】と言ったのはわかった。


三? 病室は八階だったし自宅は二階建てだった。


いったい自分は今、どこにいるんだろう?




どこからか白くてキラキラした粒々が自分の周りにまとわりついてきて、綿菓子と自分の意識体を分離していく。


次に、高速のエレベーターで落ちていくような昇っていくような浮遊感がして、とても狭い穴をしゅぽぽぽっと抜けるような感じがしたかと思うと、ふぅわりとどこかに着地した。




「こんにちはー。なつみさんで反応したから、地球の史歴20××年・日本仕様でお話するねー。」



あら天使様? って言っていいよね。

やっぱりいたんだ。



目の前には、ピンクの貫頭衣を着て薄クリーム色の羽を広げた、男の子か女の子かわからない人が立っていた。


でもピンク? 白の着物かと思ってた。

夏美がそう思うと同時に、天使様の服は白に変わっていた。


「えっ?!」


「あー、この場はあなたの意識体にリンクしてるから、あってないようなものなのよー。つまり僕の実態もあってないようなもの。でも何にも無いと魂の納得度が下がるからねぇ。あなたの魂が今受け入れやすい映像で、お届けしてるってわけ。」



 なっ、なるほど…?



「じゃ、転生ミーティングを始めるね。」


天使様はきびきびと目の前の空間に、なにか字のようなものが書かれた大量のカードをばらまき始めた。


ストップモーションの雪のような感じで、カードが空中に散乱している。


そのうちの一枚を指先でちょんとつつくと、カードがキランと光ってくるりと回転し始めた。



「ふーん、なつみさんの今回の人生は充実してたみたいだね。本が好き、自然が好き、友達も数は少ないけれど深く良い関係が作れたんだ。前世で恵まれなかった子供さんもできて、お孫さんと遊ぶこともできたんだね。なるほどー、パートナーもグループ親魂(しんこん)だったからまずまずと…。」



「あの、グループしんこん?って、何ですか?」


「ああ、『魂の()まり』が(ひと)グループになってるの。それは一人でもあり、何百人でもあるわけ。」


「??」


「極小体の魂が幾つかで…つまり地球風に言うと何人かが、バラバラに同じ時期・時代・場所に行くこともあるし。中体、ちょっと大きめの何人分かの魂が、一人になって歴史に名を遺すような大きな活躍をすることもある。まぁ、これはその魂のグループがいる階層にもかかわるから全部を説明することは困難だけどね。」


「…はぁ。」


「こういうややこしい説明を抜きにして平たく言うと、ダンナさんはあなたと同じ魂のグループだったってわけ。」


「同じ魂のグループ…。」


うっ、わかったようなわからないような…。

天使様の説明からするとあのふわふわ綿菓子が、『魂溜まり』っつうやつなのかしらん?



「もう一つお聞きしたいんですけど。「階層」…さっきもおっしゃってましたよね、【三階層】って。それって何なんですか?」


「そうだね…。地球的言い方だと、魂は『修行する旅人』って感じかな。この宇宙は、いくつかの銀河を含む小さなバルーンが今のところ36個で出来てるんだ。そのバルーンが今、成長と共に膨張し続けてる。ここまではいい?」


「はい。」


多重宇宙理論に似てるかも。


「そしてその膨張をも包み込む形で36個を一包(ひとつつみ)にしている大きなバルーンが、【階層バルーン】さ。このバルーンは三回目の層期にあたる。『修行する旅人』である魂は、それぞれの修業練度によって組み分けがされて、その練度にあった階層にいるわけ。そしてこの階層バルーンが宇宙の進化を決める。」


「宇宙…ですか。」


「うん。すべての魂が、次の階層にいける程の成長を遂げた時にビッグバンが起こる。」


「ひょえー、なんとも壮大な話ですね。」


これ、宇宙物理学者が聞いたら目がテンになるかも…。



「まぁ、どーでもいい話はここまでにして。」


どーでもいいって…。


なんだか宇宙の深淵を覗いた気がする。


そんなことになってるとは、お釈迦様でも知りますまい。



「話を本題に戻すよ。」


思考には浸らしてくれないのね、この天使様は。

忙しいのかしらん。



「ええっと、なつみさん。あなたは、このたびの生でそこそこの課題をクリアできてます。ただちょっと気になるのは『めんどくさがり』のところですね。」


言われました。

…バレとりますな。



でも誰だって、めんどくさ~いって思う事ってあるよね。


私の場合、自分に興味のないことを強いられた時。

単調で時間のかかる家事をしなきゃいけない時。

つねにめんどくさがっていました。


でも、これって普通じゃない?


それはまあ、温厚な主人がちょっとこめかみをひくつかせたこともありましたよ。


ええーと、たびたび? 

んー、いつも? 


…えへへ、ここは認めとくか。


「はい、すみません。」



「地球前世が4回ですが、4回ともこの課題は持ち越していますねぇ。」


「よ、4回?」


私って4回も生まれ変わってたんだぁ。



「あっ4回って、地球限定ですからね。あなたの魂は…違う星での経験値を合わせると7千万回は超えてます。」


「なっ、ななせんまんーー?!!」


なんじゃそりゃ。

魂って何者?



「まあ、あなたがたの『魂溜まり』グループは、今現在小の上クラスですから、まだこれからですよ。」


どうゆう基準? 

そのクラスって、いいの? 悪いの?



「ああ、クラスわけは気にしないでください。魂に上下はないんですよ。地球での基準には、あてはまりませんから。ただの、管理ネームです。ははっ。」


…もういい。

思考放棄しよっと。



「というわけで~『めんどさがり』課題クリアのために、別銀河抱合体、つまり異世界バルーンに行く時にもこの課題を持っていくべきかもしれません。いつもは魂のリフレッシュのために、一つの課題にばかりこだわらないんですけどね。」



「異世界? それって、マンガや小説の話じゃあないんですか?」


「ええ、地球が所属しているバルーン内での転生もありますが、今回は違うバルーンへ。まぁ所謂(いわゆる)、2000年代の日本的に言うと、異世界転生っていうことになりますね。」


なんとまぁ、入院中に読んだネット小説だよ、こりゃ。



「えっと、どこがいいかな。ああ、ここは今年の転生数が少ないな。」


天子様はぶつぶつ独り言を言いながら、バルーンの番号を手元のメモに記入し、その中の銀河系番地を決め、星の名前を書き、人の選定に入ったところで初めて夏美に選択肢を示した。



「なつみさん。職人の家と騎士の家、それに貴族の家。どこがいいですか?」


「貴族? 貴族がいるんですか?」


「あっ、貴族がいいですか? じゃあ、そこにしましょう。」



「待ってください。まだ、決めてません。」


えーっと、職人、そそるなぁ。

私ってめんどくさがりだけど、自分の好きなことには結構凝り性なのよね。

職人になって、なにかの「(たくみ)」になるのもいいかも。


騎士は、だめだよね。

運動音痴だし、剣技を極めるとかに努力するのはめんどくさい。


あっ本、本が読めるのは貴族がいいのかー。

人生に本は必要不可欠だよね。


No book No life


でも、お化粧やらドレスに興味はないのよね。

政略結婚とか無理強いされて、カエルみたいな王子様にキスするのなんてごめんこうむる。



「決めました。職人にします!」


夏美が勢い込んでそう言うと、天使様はビミョーな顔でこちらを見ていた。



「ごめーん。貴族って、書いちゃった。えへっ。」


えへっ、じゃねーよ。

えへっ、とはもう…。


ガックシ。




すでに、何かは発動していた。


天使様が持っていたメモはその手を離れ、じわじわと上昇していき、くるくる回りながら大きく広がったかと思うと、クラッカーのようにパーンと爆発した。


そこから、爽やかな霧雨のような粒々が降ってきた。


その粒子が次第に集まり、優しく夏美のことを包み込もうとしている。



「なつみさん、ごめんねー。でも、記憶チートつけるから。これ付けるの50年ぶりの希少価値もんよー。なんとか、これで、今度の生も楽しんでみてー。」


天使様の声がぐわんぐわん響きながら小さく遠くなっていく。




夏美の意識は、心を落ち着かせる清涼なものに包まれて、静かに白い靄の中に落ちていった。


次回、「転生、そして、・・。」です。

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