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雨降って、なんとやら

作者: るっぺー

昨日から降り続く雨の中を私は歩いている。暗い、夜。もしかすると、雨が降り始めたのは、二日前だったかもしれない。ともあれ、私は街中を、月明かりではなく、街灯を頼りに歩を進めるのだ。行く先など決めずに、家から持って出てきたのはビニール傘と、昼間にコンビニで弁当を買ったときに貰った釣り銭、二百三十円と少し。飲み物くらいなら買えるが、他に使い道も思い付かない程度の、金額。しかし、何かを買いに出たというわけでもないので、別段困るということもなかった。

 雨は勢いを増すことも、反対に勢いを落とすこともしなかった。家を出てどのくらいであろうか。一時間にはなっていない筈であるから、日は跨いでいないと思う。ふと、目の前を濡れた猫が通った。足を止め、猫に目を向ける。この天気のため、猫が濡れているのは当然といえば当然であるが、それでも濡れていることに強く意識を引っ張られた。黒い猫の毛が雨に濡れ、黒い色はいっそう深みを増し、周囲の夜の闇と調和して、漆黒の輝きを放ち、私の視界を覆い尽くしているかのように感じられた。猫はそのまま私の目の前を通り過ぎた。その背を私は目で追った。しかし、すぐに路地の闇へと溶けて、見えなくなってしまった。よほど見とれていたのか、傘の位置がずれてしまったらしく、私の右頬が雨に濡れた。雨は、頬をするするとは流れず、無精髭に引っ掛かりながら、少しずつ下ろうとしている。それを服の裾で拭い、帰ったら髭を剃ろうと思った。思い立ったことを実行しようと私は来た道を引き返し再び歩き始めた。道中にあるコンビニであたたかいコーヒーを買おうかと思い、ポケットに手を入れ、小銭を全て取り出してみると、百円玉三枚、十円玉二枚、一円玉四枚の、三百二十四円であった。どうやらお釣りの金額を勘違いしていたようだ。しかし、少し得をしたような気がして、雨の日なのに清々しい気分であった。ビニール傘の骨が一本折れていることに今更ながら気がついたが、どうでも良いと思えた。

 

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