魔神たちの集い
魔王城へと戻った俺は、ギュンターと共にこれからについての協議に入っていた。
分からないことだらけなのだ。特に国を動かすなど初めてのことなのだから正直何処をどうすればいいのか全く分からない。
手のつけ方すらわからないので先代であるギュンターにいろいろと教わる必要があるのだ。
会議室として急遽作られた部屋に俺、ギュンター、若萌、矢鵺歌、ユクリ、ついでに魔神四人が一堂に会した。
会議室の用意はコルデラに命じてサキュバス数人に用意して貰った。
あとはメイドとして働いている魔族に飲み物を頼んだくらいで、他のメンバーは誰も居ない。
ああいや、せっかくなのでコルデラとサイモンを呼び寄せておいたけど。
「では、第一回魔国方針会議をはじめまーす」
俺の言葉でシシルシがつまんなーいとか早々にヤジを飛ばして来たけどスルーしておく。
テーブルは一応円卓を採用したから意見は纏まりやすくなるはずだけど……なーんかギスギスしてるな。特にシシルシとルトラ。
ルトラが一方的に恨みを抱いている様子だけど。
「ふむ、ではまず魔王として余がやっていた事から列挙していくか」
そう言いながらギュンターが自分のしていた仕事を挙げていく。
結構あるな。会議とかなんでそんなにしてるんだろう? そこまで会議が必要なのかな?
って、魔王城の便所掃除は魔王の仕事じゃないと思うよギュンター。
「……と、まぁこんなところだろうな」
「父よ、城の中だけ便所が綺麗だと思っておったが父が掃除しておったのか……」
「メイド共に任しておくとなぜか汚くなっていたからな。当時は他人に任せるより自分でやる方が早かったのだ。今ならば誰かに任すのもありなのだが、すでに自分の仕事として定着しているのでな。やるかセイバー?」
「ギュンターをトイレ掃除当番に任命する。今後もよろしく」
当然俺がやる気はない。
で、あろうな。と少し切なげに告げるギュンター。これからの余生はトイレ掃除に費やしてくれ。
トイレ云々に関してはここで話を切り上げ、俺はギュンターのあげた仕事を紙に書き出している若萌を見る。
「どうかな?」
「そうね。この辺りはサイモンにやってもらえばいいと思うし、こっちは他の面々に振れるものよ。こっちは私が受け持とうかしら?」
若萌がいてくれて助かります。
俺だけだと振り分けは難しそうだ。
特に何でこんなのまで魔王の仕事になってんだよ。ってくらいに意味不明な仕事。ポランちゃんの世話とか全魔王軍武将を招集して月一回の報告とか、何気に無駄が多い。
特に月一で召集していたら仕事に支障も出るだろう。
「これ、報告書で済ますのはムリなのか?」
「無理だな。魔族といえども識字率は高くない。それに四足の魔物はどうすればいい?」
「それもそうか。なら、こっちから見回りとかは?」
「余裕があるならばいいが、相手を集めた方が早かろう」
むぅ。結構難しいな人を纏めるのって。
魔王、俺向いてないんじゃないか?
「ギュンターは面倒事を自分でヤリ過ぎなのだ。僕様など仕事すらしなかったぞ。ただ在るだけでよいと宰相に言われたからな。望まれるまま気の向くままに滅ぼしまくったわ」
だから封印されたんだろう元魔王……
高笑いするルトラ。彼は傀儡政権だったようだ。本人が自覚してないのがさらにキツイな。真実を打ち明けてやるべきなんだろうか?
「とりあえず、これから着手するのに一番にすべきは何だと思う?」
「現状把握をして内政でしょうな。といってもギュンターがいらっしゃいますし、そこまで変革は必要ないかと」
「むしろギュンターに魔王代理として今まで通りさせればよかろ」
『俺もラオルゥに賛成。影の首領になっちまおうぜ』
俺が影の首領? まるで秘密結社みたいじゃないか。
俺は思わずナビゲーターを見る。
ヒョットコを思わせる細胞顔は、ニヤリと笑っているような気配を見せていた。
絶対に面白がってやがる。
「ふむ。折角ギュンターさんが居るんだし、私も今まで通りの事はそのままギュンターさんにやってもらえばいいと思うわ。セイバーが出来るとも思えないし」
若萌から辛辣な言葉が……
やっぱり俺、リーダーとか向いてないのかな? ガンナーの奴にジャスティスレンジャーのリーダー取られたし。むしろ冒険者みたいな状態の方が生き生き出来てた気がするし。
「そう、だな。ギュンター。すまないが今まで通りの仕事でも構わないか?」
「仕方あるまい。余の仕事に関しては徐々にユクリに教えていこう」
「なんと!? じゃがトイレ掃除は断るっ」
「それは余の仕事だ!」
ギュンターが、誇りを持って言いきった。何が彼をそこまでトイレ掃除に駆り立てるのか、俺にはまったく理解できなかったが、掃除好きなんだろう。多分潔癖症とかその辺りの病的ストレス発散方法になってるんだと思う。




