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さよならムーラン王国

 国が消えました。

 正直俺も信じがたい。

 ルトラが魔法を使ったと思ったら国ごと無機物が吹き飛んだ。

 大地にも動植物にもダメージはないが、基礎から全て吹き飛ばされてます。

 城など地下に牢屋作ってたものだから一階にいた人すら落下して死に掛ける始末。ルトラさん、ヤリ過ぎなうえにずさん過ぎ。


 ほら見ろ。国王陛下がなんか叫び出したじゃないか。

 宰相が助けを呼んでることから確実に精神に異常きたしてるし。

 あの陛下、大丈夫だろうか?


「あ、ああ。何? なんなのこれは……どうして……?」


「まだ分かっておらんか、あの国王はしっかりと僕様たちを認識していたと言うのに、娘の粗相で国が散るとは、ああ、なんと酷い王女であろう。ククク、はーっはっはっは!」


「な、なんなのです!? あなたはっ、あなたは一体何をっ!?」


「なにを? 見て分かるだろう? 魔神に逆らう愚かな国を消し飛ばしただけだ」


 自信満々に告げるルトラ。ノッて来たのか高笑いに片手で顔を隠してみたりと厨二病少年感がハンパない。

 どっかの自称吸血鬼真祖と良い勝負じゃないだろうか?


『ヌェルの方が可愛いぞ?』


 黙ってろ愛妻家と思わせておいて不倫種馬野郎。

 とにかく、ルトラの大魔法に呆然としている王女たちは、逃げ出そうとした玲人君が直ぐ横に落下したことにすら気付いてないらしい。心の余裕がないようだ。


「魔神? 何ソレ? 聴いてない……」


「ああ。そうそう。折角だから貴様の洗脳を解いてやろう」


 そう言って、何かするのかと思えばディアに振り向くルトラ。


「ディアリッチオ様、こやつの真名を開放してやってくださいませんか」


 そこは敬語なのな?

 ディアはどうしますかと俺に視線を向けて来た。

 なので頷いてみる。折角だから洗脳を解いてみよう。おそらくだけど矢鵺歌みたいな状態にされてる可能性があるし。


 俺の了承を受け、ディアが真名解除を試みる。

 うん、やっぱディアに真名による命令は禁止し解こう。絶対自分にも真名解除できるんだぜこいつ。あの契約も絶対に通用しそうにないし。


「……っ!? あ、私は……」


 急に夢から醒めたように王女は周囲を見回した。

 他の女性兵も同じように周囲を見回している。

 玲人の奴。兵士達の真名まで奪って操ってたのか。


「勇者……玲人?」


 直ぐ近くにエルパシアと一緒に尻餅を付いている玲人に気付いた彼女は一瞬驚いた顔で、しかしすぐに呪うような怒りに満ちた顔になった。


「貴方のせいで……貴方が来たから私はっ、ああ。なんということをっ!!」


 あー、やっぱり魅了で真名手に入れて真名で初恋の人とかそんな感じに認識変えてたみたいだ。


「お、おい、待て」


「玲人どの……私は自分が自分で恥ずかしい。お前のような魅了を使わねば女性も抱けぬ男に好いようにされるとはっ」


 さらにエルパシアが玲人を蹴りつけ距離を取る。

 剣を引き抜き今にも殺さんとばかりに玲人に剣を向けた。

 他の女性兵も同様だ。


「な、なんだよこれ? なんでこんなことに……」


「ふふ。いい顔ですよ勇者玲人」


「て、テメェ……」


 不意に聞こえた声に玲人が睨む。その相手はディア。

 まさに殺意の塊を視線に宿した玲人は、今の状況を全てディアがいたせい。にしたのだろう。

 咄嗟に立ち上がり魔法を唱える。


 しかし、たかがレベル30前後の勇者がレベル9999の魔神に敵う訳も無い。

 唱えられた魔法はディアに当る寸前霧散する。

 ダメージは零らしい。


「な、なんだよこれ……」


「くくく、はーっはっはっはっ! 莫わぁ迦か貴様は。ディアリッチオ様を相手に貴様ごとき雑種が敵う訳が無かろうが。レベル差すらも分からんのかド阿呆。ディアリッチオ様はレベル9999の魔神であるぞ!」


 お前は虎の威を借る狐か何かか?

 あまりにも煩いルトラにイラッと来たのだろう。シシルシがとことこと歩いて行ってルトラの背後に回る。

 あ、またやるんだ。


 俺に気付いたシシルシがニタァと笑みを浮かべて両手を握り、人差し指を突き出す。

 高笑い浮かべるルトラの尻向けて、発射。


「はーっはっはっはっはっはおぅっ!?」


 ずぶしゅっ。なんて擬音は、なかった。

 シシルシが指を動かした瞬間衝撃波が生まれ、ルトラに直撃する前にルトラが吹き飛んでいた。

 放物線を描いて地面に顔面から突っ込んだルトラは四つん這い状態で手の代わりに頭を地面に付けるという三つん這い状態? でぴくぴくと痙攣を始めた。


「あれー、失敗しちゃった。カンチョーって難しいなぁ」


 巨悪は滅びた。しかし彼らが受けた被害は大きい。

 人間族は魔神ルトラを撃退したが、代わりに一つの国が消えるという代償を負ったのだった。

 さらばムーラン。さようならムーラン王国。君等の事はきっと忘れない。今日だけは。

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