外伝・国王の悲惨な一日3
やー、なんとか帰ってこれました。
朝四時に仕事終わって大雪渋滞に巻き込まれ、今帰って来たです。21時間車内警備はキツイでござる。
うん? 日付変わっとる!?Σ(゜Д゜;)
でも昨日分として投降します。
「た、助かった……のか、私は?」
ラオルゥたちが全員地下の牢屋に向った事で、謁見の間には平和が訪れていた。
彼らが居なくなってしばらく、またひょっこりと戻ってくるんじゃないかと焦っていたが、どうやら杞憂に終わったようだ。
ようやく肩の荷が下りたとばかりに大きく息を吐いて玉座に背持たれる。
「国王陛下、御無事で?」
「うむ。流石に魔王並みの存在があれ程攻め寄せて来たのは初めてだった。生きた心地がせんかったわ」
「それ程に、危険な存在がいましたか? 魔王ギュンターはわかりましたが、他の面子は女子供が多かったように思いますが? 初老の男性もテーブルを出した時は驚きましたがただお茶を飲むだけで大したことはしておりませんでしたし」
宰相は思った事を口にするが、ルイ23世は思わず怒鳴りつけたくなった。
宰相を怒鳴ったところで意味はないので言葉を飲み込む。
もう、二度とあんな対面は御免だ。
「宰相は知らんか。昔の書物を読んでいないというのは宰相としてはあまり褒められた事ではないな」
「これは手厳しい。それで、アレはただの魔族たちではないのですね?」
「うむ。おそらく、あそこに居たのは魔族領に封印されているという五人の魔神。そのうちの四人だ。もう一体フラージャという邪竜がいたはずだが、身体は竜だからであろうな。今回は連れて来なかったようだ。だが、他の魔神はいた。あの三つ目の少女はシシルシだろう。今思いだしたが魔族領でラオルゥが封印された時とほぼ同時期に別の場所に封印された無垢なる虐殺姫。当時の王侯貴族が好んで目玉を収集していた三眼族が滅んだとされる原因だ」
王はゆっくりと噛み砕くように宰相に魔族たちの恐ろしさを教えていく。
理解する程に顔を青くする宰相と近衛兵団。
自分たちが対峙していた存在が、ふとした気まぐれでこの国を灰塵に帰せる存在だとようやく認識できたらしい。
「そ、そうだったんですか。そんな化け物が……」
「未だ勇者の実力は魔王にも及ばない。この状況でアレらが動き出せば確実に世界が滅ぶ。今回の魔王、今までの歴代魔王よりも危険な存在かもしれ……」
国王たちは魔王の脅威を再認識して気持ちを改める。
だが、次の瞬間、背を預けようとした玉座が消えた。
玉座だけではない。床を彩る赤い絨毯も、豪奢な魔道ランプによる灯も、床も壁も城すらも、たった一瞬で消えていた。
突然空中に投げだされたルイ23世は目の前に広がる光景が理解できずに呆然としていた。
支えを失った彼の身体がゆっくりと傾ぐ。
何が起こったか分からず思わず隣の宰相を見る。
立ったままの彼もまた、地面に引かれて落下を始めた所だった。
「こ、国王陛下ぁぁぁぁっ!!」
思わず差し出された手は国王を案じての事か、それとも国王に助けを求めての事か、宰相と共に落下していく国王はふと視界を掠める近衛兵たちを見る。
彼らもまた呆然としながら落下している。
謁見の間はだいたい三階くらいの高さに位置していた。その分だけ落下距離があるらしく、地面が遠い。
このまま自由落下に身を任せれば確実に死が待っている。
国王は叫んだ。
恐怖からとかではない、ただただ自然と悲鳴が漏れていた。
地面に激突する、その刹那、彼らはふわりと風に押し上げられ威力を殺される。
落下速度が消えた彼らは尻をしたたか打ち付けるものの、痛みがあっただけで致命的なダメージは誰も負う事はなかった。
おそらく何者かの魔法なのだろう。
ルイ23世は魔神たちを思い浮かべながら立ち上がる。
驚きに目を見張っている自分の娘が魔王達と敵対の構図を見せている事を知り、何が起こったのかを即座に理解した。
一応、自分の身に起こったことが信じたくなくて周囲を見回す。
建物は全てが消し飛んでいた。
栄華を誇ったムーラン王国の全てが消えている。
街も道路も城壁も、街を囲む壁すらも。
ただただ人々だけが無事に大地に立っていた。
それも、魔神の魔法が届かなければおそらく半数以上が落下に耐えきれずに大怪我か致命傷を負っていただろう。
だが、感謝を述べようとは思わない。なぜならばこの光景を作り出したのもまた、魔神なのだから。
自分が過ごしてきた街が、作り上げた王国が、たった一日で灰塵、否、塵すら残さず消し飛ばされた。
力なく、ルイ23世は膝から折れる。
知らず、口から音が漏れた。
「ああ、あああ……国が、我が国が。ああ、あああ……あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ――――っ!!」
「こ、国王陛下お気を確かにっ!! だ、誰かっ、国王に安静をッ!」
宰相が彼を揺するが国王が正気を取り戻す事はなかった。
涙ながらに元ムーラン王国の中心で宰相は叫ぶ。だが、誰も彼らを助けられる余裕など持ち合わせていなかった。




