表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

82/337

外伝・玲人危機一髪

「は、はは。丁度いいところにいるじゃねぇか矢鵺歌、若萌ェ!!」


 魔眼発動。魅了の魔眼。

 玲人は迷うことなく力を使った。二人を、否、直ぐ近くに居るユクリすらも魅了して自分のハーレムに加えてやろうと。

 残りの男はこの三人で取り押さえて殺してしまえば……


 不意に、腕に痛みを感じた。

 なんだ? とそちらを見れば、鏃が突き刺さっていた。

 認識した瞬間物凄い痛みが襲いかかる。


「がぁぁぁあぁっ!? な、なんだこれぇ!?」


 思わず叫びながら矢鵺歌を見る。いつの間に握ったのだろうか? 弓を握り、引き絞り、玲人の眉間に向けて矢を番えている。


「お、おい、待て、何の冗談だ……?」


「もう一度だけ、言うわ。ロシータを何処に隠した? さっさと……言えよクソ野郎ォッ!!」


 ズダン。

 玲人の頬を掠めた矢が壁に突き立つ。

 あまりの衝撃で、腰の力が抜けた玲人はへなへなとその場に尻餅をつく。

 魅了が、効いていない?


 混乱しながらも事実を認識する玲人。

 魅了が効いてない。矢鵺歌が怒り狂っている。弓で狙われているのは自分。

 対応を間違えれば、確実に殺される。


「し、知らないっ、俺は知らないんだっ!」


 返答は、逆頬を掠める鏃であった。

 見知った相手に殺意を向けられたことが初めてな玲人は恐怖で震える。

 思考が回らない。伝えないと。自分は何も知らないと伝えないと……


「本当だっ。俺は知らないッ、俺は……」


 再び矢が迫る。左肩を射ぬかれた。

 想像を絶する痛みで肩を押さえて絶叫する。

 全身が恐怖で震える。

 何故自分がこんな事になっているのか理解できない。


「そ、そうだっ。ロシータから聴いてるぞ! 三浦結菜に命じる、俺を攻撃する事を禁止する! はは、どうだ。真名を握ってや……ぎゃぁッ!?」


 右肩を矢が貫いた。

 押さえる事が出来ずに両腕を垂らしながら痛みに悶える。


「なぜ? どうして……今のがお前の真名のはず……」


「それが分かっていて口にするという事は。私の真名を握っていたロシータを殺して真名が使えるようにしたって、こと……?」


 ゾクリと、全身が逃走を促す。

 ここに居てはいけない。この相手から逃げなければいけない。

 自分は返答を間違えた。

 玲人の下半身が恐怖で緩む。

 ゆっくりと近づいて来た矢鵺歌は弓を引き絞り、矢を玲人の眉間間近に設置する。


 ゼロ距離からの射撃予告。

 次の返答で終わりだ。そう告げるように、冷酷な視線で玲人を見下す。

 必死に頭を働かせる。最後の返答だ。この答えを間違えれば確実に殺される。


「ろ、ロシータは、確かに、そこにいた。これから部屋に呼ぶつもりだった。お前らが来た、から、俺は謁見の間に、だ、だから、俺は知らない。奴がここからいなくなった理由を、俺は、知らないっ」


 そう。初めからそう言っていたつもりだった。

 ただ言葉が足らなかっただけ。必死に自分の現状を説明した玲人は、微動だにしない矢鵺歌を見上げて息を飲む。

 どうしても眉間に当てられた矢先に視線が行ってしまう。


「ふむ。ここに居たのは確かなようだな。嘘かどうかはディアリッチオ様なら調べられるだろう。余としてはそのまま殺しておいてもよいと思うのだが、娘にまで魅了を掛けようとしたぞこの男」


「全く愚かしい事だな。朕はセイバーの妻であるぞ?」


 それがなんだというのだろうか? 玲人は思ったが口に出来る訳がなかった。

 しばし、矢鵺歌は玲人を睨みつけていたが、玲人が最終的な犯人ではないとわかったようで、仕方無く弓を降ろした。


「矢鵺歌ー、ロシータ見つかったかー?」


 能天気そうな声でジャスティスセイバーたちがやってくる。

 タイミング良くやって来た彼らから、ディアリッチオが矢鵺歌の元へと率先して近づいて来た。


「そろそろ呼ばれる気がしたので皆様と来てみました。何かご用はございますかな?」


「玲人の記憶からロシータについて調べてほしい。あとロシータが今どこに居るのか」


「ふむ。では少々お待ちを」


 ディアリッチオは玲人を見る。そこから何かを読み取ったようで、ふぅっと息を吐いて首を振る。


「どうやら彼はロシータ嬢たちを捉えたあとここに監禁したようですな。真名を奪い自分を傷付けないよう命令はしましたが完全に真名を奪ってはいないようです」


「そう、それで?」


「現状ロシータが何処に居るのかはご理解されていないようですな」


「どういうこと?」


「少し、お待ちください。牢屋の残留思念を見てみましょう」


 そう告げる初老の男は玲人達の側を離れるとロシータを捕縛していた牢屋へと向かう。

 鉄格子が邪魔だったのか両手でぐにゃりと押し広げ、拘束具のもとへと向かう。

 拘束具は全く開かれた形式はなく、まるで忽然とロシータだけが消え去ったかのように鍵がかかったままになっていた。彼女の着ていたであろう服だけがその場に残されている。他のメイドたちも同様に牢屋内に服だけが残っていて彼女たち自身は消えてしまっているようだ。


「どう? 誰がロシータを連れ去ったの? 国王? それとも王女? 宰相? 言いなさい。誰だろうと眉間に鏃をブチ込んでやるわ」


 誰だろうと許さない。そう告げる矢鵺歌に、しかしディアリッチオは静かに首を振って否定した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ