人間国侵略作戦3
「とまれ!」
人間の兵士たちの声で馬車が止まる。
馬車を動かしていたディアが受け答えをし始める。
ギュンターだともしも先制攻撃された場合いろいろと問題が起きるのだ。
一応元魔王なので、どっかで魔物が見ていれば魔王に直接攻撃をした人間を生かす必要などなくなるとか、そんな理由で魔王軍が勝手に判断して大軍率いて攻め寄せて来る事もありうるのだとか。
ギュンターからすればどうでもいいことなのだが、今は砦を余り刺激したくないので俺達は交渉をディアと大悟に任せることにする。
不安だから聞き耳は立てておくけどな。
「ここから先は我等の領土だ。魔族を通すと思うなよ」
「ちょっと待ってくれ、僕だよ。勇者の大悟だ」
「それ以上こちらに来るな! 大悟様は討ち死にされたと玲人様より伺っている!」
「バカな!? 僕が討ち死に!?」
まぁ、魔族の街の入り口に倒れてるんだから普通はそのまま殺されたとかになるわな。
「大悟様が現れる事もあるかもしれないが魔族の幻惑だと分かっているからな。貴様を通す気はない。去れ! 去らねば殺す!」
こりゃ大悟を使っての交渉はムリだな。
「若萌、矢鵺歌。俺達で行くぞ」
「了解」
「まどろっこしいわ。強行突破でいいじゃない。こうしてる間にロシータが……」
ブツクサ言いながらも俺と共に幌から顔を出し馬車から降りる二人の勇者。
兵士達も流石に俺達が出て来たのには驚いたのだろう。
「ゆ、勇者様方!?」
「責任者は居るか。緊急事態が起きた。急ぎ取り次いでくれ。早くしなければ大問題になる」
「し、しかし、貴方たちは死んだものとされていたので確認が……」
「貴様の一存でソレを決めるのか? 魔王が動くのに?」
「ま、魔王? そ、それはどういう?」
驚く兵士に首を振って見せる。
「貴様では話にならんと言ってるんだ。責任者を今直ぐ呼んで来い、貴様の一存で国が滅びかねんぞ? それでもいいのか?」
「た、ただいまっ!」
俺の言葉に慌てて兵士の一人が走り去る。
もう一人は新人なのかどうしたらいいのか困惑したまま周囲を忙しなく見回している。
『大分上に立つモノの風格がでてきたかぁ? それでも魔王が動くとはよく言ったモノだな』
ちゃんと動いているだろう。現魔王である俺が動いているんだから嘘は言ってない。
『確かにその通りだ。兵士さーん、こいつです~』
しばらく武藤の無駄話に付き合いながら時間を潰す。基本ムカツクだけの会話だが、ツッコミだらけで時間を潰す分には一番暇つぶしに丁度良い。
「お、お待たせしました。何か緊急なのだとか?」
「簡潔に言う。玲人が魔族の女を魔族領で拉致して連れ去った。人間で言うならば貴族の令嬢に類する存在だ。魔王に連絡がいけば確実に動く。北や南の戦力すらも動員して一気に攻め寄せて来るかもしれんぞ。潜伏先の魔族の街で起こったことだったのでな。さっさと通してくれ。そいつを魔族領に戻せば魔王軍の大軍勢がここを襲う危険が無くなる」
「し、しかしですね。我々の一存で魔族と思われる存在を通すのは……」
「ふむ。だがいいのか? この話を上層部に連絡するならば数日はかかるだろう。その間にここは壊滅し、周辺国も軒並み灰塵と帰すだろうな。俺も魔族領にいってから知ったのだがオークやゴブリンという種族が居るらしいじゃないか。奴等女と見れば見境なく襲うらしくて少なくとも一種族10万は居ると聞いたぞ」
「じゅ、10万、一種族で? そんなモノが……ここに?」
「玲人を止める。お前達では無理だろうが同じ勇者である俺達ならばなんとかできる。大悟も嵌められた。そもそも国を捨てて別の国の勇者になった玲人とお前達の国に残った大悟。お前はどちらを信頼するんだ?」
『いや、お前が言うなよ。国真っ先に捨てたじゃん』
武藤、お前とのおしゃべりは終わったんだ。黙ってろ。
兵士長と思われる男は自分では判断したくないようだが、事は急を要すると言われて困惑気味だ。
連れてきた兵士を思わず睨むが、彼は自分が矢面から逃れられたと安堵している最中で気付いていないようだ。
「頼む、責任は僕が持つから」
大悟も一緒になって頼み込む。まぁ、どの道責任うんぬんは大悟に向うんだけどな。
俺達は魔族側になる訳だし。
どうなっても知らないぞ、いや、本気で。
特にシシーとかルトラとかユクリとかとかとか。絶対問題起こすだろ。
兵士長は困惑しながらも大悟が全ての責任を取るという言葉を念押しして確認した後一筆書かせて俺達を通らせることにしたらしい。
馬車を若萌のアイテムボックスに仕舞い、海の中を繋がる木々を歩いて渡って人間領へ。
人間領側の砦には面倒そうなので通らずに森の中を直進する。
出現する魔物はそれなりに強いが、それはレベルが30前後だった時の事だ。
今なら大悟と矢鵺歌が苦戦するくらい? いや、矢鵺歌のレベルは40くらいになっているので少し苦戦するくらいか。
ちなみに、邪魔だった兵士三人は砦に残して来た。
大悟が姫への連絡を頼んでいたけど、さぁてどうなるやら。




