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宿屋の魔王

 ふと思ったのだが、宿に泊るのは初めてではないだろうか?

 何度か異世界に行きはしたが、俺はこういう外泊はしたことが……


『こういうの二度目だよな。あんときゃお互い殺されかけたんだっけか?』


 ん? 二度目? ああ、あ~。そういえばそんな事もあったような。記憶の片隅にあったものを拾ったらしいナビゲーターに指摘され思わず納得する。そう言えば異世界の宿屋で泊るの二度目だわ。

 ちぇっ、こいつに指摘されるとは……


「しかしギュンター。部屋の割り当てがおかしくないか?」


「ん? 何処がだセイバーよ」


「だってさ、普通男女に分けるもんじゃないか? なんで俺の部屋に入ってるのがシシルシとラオルゥと若萌なんだよ?」


「そうだぞ父よ。なぜ朕が夫と一緒ではなく父と一緒の逆ハーレムなのだ」


 ちなみにギュンターの部屋にはユクリとディアとルトラである。確かにハーレムだな。良かったなユクリ。キャラ的には濃いのばっかりだけど。それはこっちも似た感じか。


「順当な結果だ娘よ。いいか、まずシシルシ様とラオルゥ様がセイバーと一緒に居る事を所望されたのだ。となると残りは一枠。お前か若萌だ。若萌にこのメンバーと寝ろというのか?」


 知り合いではあるが寝るのを共にするには危険だな。そう言う意味では父親がすぐそばに居るユクリが彼らの部屋で寝るのは、確かに順当か。

 やっぱ男女で別れた方がいいんじゃないのか?


『モテる男はつらいねェ』


 お前は黙ってろっていったよな? 断罪するぞ?


『できるもんならやってみな。痛くも痒くもないぜ!』


 ブツクサ言うユクリを引き連れ部屋から出ていくギュンター。

 そして俺のいる部屋には若萌とラオルゥとシシルシだけが残った。

 ディアリッチオ達からは苦情はなかったのかな? まぁ、ギュンターがルトラと一緒に寝るというのだから苦情などなかったんだろう。彼も出来るならこちらに来たかっただろうに、頑張れギュンター。そのうち魔王の力を返して俺は補佐に回ってやろう。

 薄氷上の魔王などさっさと降りてやる。


「そう、矢鵺歌さんは一応安全なのね」


 宿への道すがら俺の話を聞いていた若萌は、しばらく考えていたようだが、納得してくれたらしい。

 溜息と共にベッドに座り俺に視線を向けた。


「明日、私も確認しに行っていいかしら?」


「構わないさ。事前連絡ができないけどとりあえず行ってみよう。魔王権限で会うくらいできるだろ」


「ふむ。人間の勇者か。面白そうだから我も付いて行っていいか?」


 俺と若萌の会話に入ってくるラオルゥ。俺の背後に飛び付き首を支えに抱きついて来た。

 シシルシ程ではないがラオルゥも結構背が低いからな。ぎりぎり地面に足が付かないようだ。その分俺に負担がかかるのだが、よかった。普通の女性の腕力だ。


「あー、ラオルゥずるい。シシーも、シシーもくびちょんぱする!」


「待てシシー、違う。これは首捻じ切るような行為じゃないっ」


 近づいて来るシシルシを慌てて回避。

 膨れたシシルシは可愛いのだが、やろうとしていることが恐ろし過ぎるので全力で逃げる。


「こんな日常で死亡フラグ立てようとすんなっ!」


「大丈夫だよ。赤いおぢちゃん殺したりしないから。ちょっと首が変な方向に曲がったりするだけだって」


「人間は曲がったら死ぬんだよっ!」


「えー。弱いねー人間」


「いや、魔族も似たようなモノだと思うぞ。首を捩る遊びがしたいならディアリッチオの眷族であるスライムにでもやればいいだろう。アレは死なんぞ?」


「死なないけどぽきっと折れる感覚がないからつまんない」


 どんな会話だよっ!?


「ところでセイバー」


「ん?」


「これから一応魔王になる訳だけど、城に戻ったら何をするの?」


「そうだな。とりあえず交渉できそうな人間の国をピックアップするところから始めよう。東南北に国があって三方向と戦争してんだろ? だったらそいつらと交渉を考えるのが妥当だろう。といってもすでに東は無理とわかっているけどな。まぁ、これからについては城に戻ってからでもいいさ。魔王領の内政もまだ分かってないんだし、外より内を固めた方がいいかもしれないからな」


「ふーん。でも赤いおぢちゃん。シシーたちがいるから内部の統制くらい楽だよね?」


「それは力技での恐怖政治か? ソレをするつもりなら我かディアリッチオが黙っておらんだろう。それに、こやつがそんなつまらん方法を取るとは思わんがね」


 確かに、これだけの過剰戦力だ。周囲に侍らすだけでも抑止力には良いだろう。

 でも、結局彼らは己の欲で俺の側に居るだけに過ぎない。力を貸すとは言ってくれるが、利用する時期を間違えば俺が滅ぼされるだろう。いわば押したら最後、世界を滅ぼす核弾頭と一緒なのである。


「おぢちゃん、一緒に寝よー」


 不意に、考えを中断させるようにベッドに押し倒される。

 鳩尾にダイレクトアタックをかけてきたシシルシのせいだ。


「ふむ。ならば我は隣をいただくとするか。若萌はどうする?」


「遠慮しておくわ。あと、あまり遊んであげないで、壊れたらあまり替えが利くものではないので」


 そう言って早々布団を被って寝入る若萌。

 待ってくれ。壊れたらってどういう意味だ? なぁ、俺壊されるのか!?


『とりあえず、明日は昨晩はお楽しみでしたね。とでも言えばいいのか?』


 ふざけんな武藤ッ、俺は今スーツ状態だっての。というか、なんでテメェは黙らないんだよッ。なんかもうムカついたので次に本物にあったら思い切り殴り飛ばす事を心のメモに書き加えた俺だった。

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