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初めての闘い2

「なぁ、せめて名前教えてくれよぉ」


「MEY」


 うざったそうにそう告げるMEY。

 すると貴族の兵士君はにやりと笑みを浮かべる。


「命令だMEY。俺に股開け」


「はぁ? 死ね」


 いきなり命令してきた兵士の股間を思い切り蹴りつけるMEY。

 残念ながら前垂のようなガードが付いていたのでダメージはなかったが、押されて倒された兵士はあれ? と不思議そうな顔をしている。


「ゼーガス。さすがにそろそろ上に報告せねばならなくなるぞ」


「チッ」


 厳ついおっさんが告げると、ゼーガスと呼ばれた貴族系兵士が面白く無さそうに立ち上がる。


「偽名かよ。くそったれ」


 その言葉はとても小さくて、でもスーツにより強化された聴覚が俺に声を届けた。

 偽名だったからダメ。なら、真名を教えていたら……?

 矢鵺歌は偽名だからどうでもいいが、若萌は本名だ。

 俺は即座に若萌のもとへ向うと、耳打ちする。


「若萌。どうも本名は名乗らない方が良さそうだ。これから出会う奴には出来るだけ偽名を使っておけ」


「偽名? ええ。分かった。でも他の人にも伝えた方がいいんじゃない? そちらから洩れる可能性はあるわ」


 なんだか面倒なことになりそうな気がするな。

 俺はにっちゃうを撃破している玲人のもとへ向い、偽名を言い合うように告げる。

 納得はしてないようだったが、どうせゲームみたいな世界ならロールプレイしようと告げると仕方ねぇな。と同意してくれた。


 名字を言わないようにするだけでも効果的だろうということで、俺達はこの時から名前で呼び合うことになったのだ。

 もちろん、大悟の方にも伝えたが、彼はむしろ喜んで納得してくれた。

 ゲーム脳はこういう時楽でいい。


 慣れてきた面々はスキルを使ってにっちゃう狩りを始めていた。

 自分たちが覚えたスキルを確認するのにもうってつけな、反撃して来ないにっちゃうという魔物が彼らにとっては丁度いい練習相手になるようだ。


 練習がてらに殺される方は堪ったものではないだろうけどな。

 最終的には若萌やMEYも自分のスキルを確認するためににっちゃう殺しを始めていた。

 俺は? なんだかにっちゃうが可哀想で攻撃できなかった。


「おい誠、テメェだけ休んでんじゃねぇよ!」


「そうだぞ誠っ。確かに何もしなくても問題無くレベル上がるけど少しは手伝えよ!」


 そう言われても、俺に無抵抗な相手を殴れと?

 変身ヒーローならそのままで充分闘えるだろとか言われたけど、残念ながら開放スキルが発動しない限り俺のヒーローとしての力は全く使えない。

 武器を貰ってくればよかったか。明日はショートソードでも貰っておこう。


 仕方が無いので森の方に向いながらにっちゃうを探すふりをする。

 しばらく歩いていると、兎が出現した。

 両手にボクサーグローブを填めたウサギだ。


 折角なので唯一まともに使えるスキル、強制ステータス閲覧を使ってみる。

 どうやらこのスキルは相手のスキルを閲覧するスキルのようだ。

 ステータス強制表示とどこが違うのだろう?

 おそらく見られていることが相手に伝わらないというところだろう。


 俺がこのウサギ、パンチャーラビットのスキルを見ているのに気付いた様子もなくシャドーボクシングでこちらを威嚇している。敵対して来る相手なら……戦える。

 動きは素早い。左右のステップがかなり高速だ。

 でも、反応出来ない動きじゃない。


 飛び込んできたウサギの腕を捉えて思い切り真上に振りあげ、後方に叩きつける。

 きゅぅっと声を鳴らして大ダメージを受けたウサギの頭上に、アイテム入手のダイアログボックスが浮かびあがる。

 YESを押すと、布のグローブとウサミミ、獣肉が手に入った。

 どうやら自動でアイテムボックスに入れられるらしい。


 アイテムボックスがゲーム仕様なのに驚くが、この世界はこういうものなのだと納得してアイテムの欄を表示、操作する。

 布のグローブを取り出すと、なぜか自分の腕に填められる大きさのグローブが現れた。

 先程のウサギのアイテムだったならまず間違いなく小さ過ぎて使えなかったはずなのだが、どうやら相手から入手したアイテムは自分が使いやすいようになってくれるらしい。


 アイテムボックスにグローブをしまい、森を歩く。

 森の中には様々な魔物が存在するらしく、鹿の魔物やイノシシの魔物が時折見られたが、俺が近づくと逃げてしまって闘いにはならなかった。


 しばらく放浪していると、がさがさと叢が揺れる。

 拳を握り警戒する。草をかき分けそいつはゆっくりと姿を露わした。

 森の……熊さんである。


 子供大の熊のぬいぐるみが包丁持って現れた。

 つぶらな瞳の魔物の名称はティディスベア。ステータスを見るとかなり強力な魔物らしい。

 そいつは俺を見つめてやぁ。とばかりに左腕を上げる。


 警戒しながらも同じく左腕を上げた瞬間だった。ティディスベアが隙アリ。とばかりに包丁を向けて斬りかかってきた。

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