魔王の挨拶回り8
「な、なんだこれは!?」
シャキーンと鋭い角度のギャグを行ったルトラは自分が行った行動に呆然としている。
うん、とりあえずアレができたということは俺の真名命令がちゃんと発動したってことで良さそうだ。
「貴様か!? 貴様が何かをしたのか!」
「って、今の聞いてなかったのか!?」
「ふん。都合の悪いことや雑種の呟きは素通りする高性能な耳だからな僕様の耳は」
なんて性能の悪い耳だ。
『なんか残念感漂う元魔王だなぁ。なんかさ、あの頭に二本くらいアンテナ付けたくね?』
どうでもいいよ。黙ってろつってるだろ武藤。
「クソッ、一体どうやったんだ!? 通常の強制ステータス表示ならば表示されない筈の僕様の真名を!」
「いや、なんかすまん」
ステータス表示は俺の切り札みたいなもんだ。おいそれと教える訳にはいかない。
強制ステータス表示だと相手に表示した事を覚られるみたいだけど、俺のスキルである強制展開はたぶんだけど相手に悟られずに相手のステータスを盗み見ることが出来るスキルだ。
「くふふ。素晴らしい。見たかねラオルゥ、シシルシ」
「うむ。真名無効が無いと気付くや実にスムーズであったな」
「赤いおぢちゃん鬼畜~。でもそこがおもしろい」
三人の変人からは好感触を得たが、ユクリと若萌は頭を抱えて溜息を吐いていた。
「貴様、やってくれたな! 殺してくれる! 悪意之羽!」
黒い球体に羽の生えたような魔法の礫。八つ程生まれたソレが俺に放たれる。
しかし、俺を殺す行動はいかなるものも不可能になっている今、彼が俺を傷付けることなど不可能。
打ち出された弾は全て俺を避けて地面に着弾した。
「バカな!? こんな。こんな雑種に僕様が操られるだと!? この殲滅の魔狂帝と呼ばれたこの僕様が!?」
「とりあえず、主に逆らう家畜には一度痛いお灸をすべきでしょう」
「赤いおぢちゃん、必殺必殺、シシー必殺見たい!」
必殺? まァいいけど。
「んじゃぁ、とりあえず……行くぜ、ジャスティス。打ち砕け、セイバー!」
セイバーを構えて走り出す。
驚くルトラに肉薄し、正義力を溜めた剣を思い切り振る。
「秘奥義・ギルティースマッシャ――――ッ!!」
「ごぶらばっ!?」
脇腹に直撃したルトラがくの字に折れ曲がって倒れた。
すまん。ちょっとやり過ぎたかもしれん。
「あははははっ。弱っ。弱いよルトラちゃん。シシーレベル400に負けるレベル2000初めて見た!」
膝を付き呻くルトラ。反撃を行うべく魔法を唱えるが、俺に当る可能性あったせいか発動すらしなかった。
「バカな、バカなバカなバカなッ、この僕様が! 嘘だッ、この僕様がレベル400程度の雑種風情にぃぃぃっ」
飛空剣。そう唱えた瞬間、ルトラの頭上に浮かび上がる二本のナイフ。
驚いた俺のすぐそばを通過する。
残念ながら俺に当ることはなかった。殺意を持った攻撃だったので俺を避けてしまったらしい。
ただ傷付けるだけなら可能だったかもしれないが、残念だったな。
代わりに立ち上がったルトラの顎を蹴り上げる。
さらに回転して逆足で無防備などてっ腹に一撃。
肉体的ダメージは殆ど無いはずだが、精神的なダメージが凄かったらしい。
もはや倒れたルトラは起き上がることすら出来ずに意味不明の言葉を垂れ流しながら呆然としている。
お、レベルアップだ。成る程相手を行動不能にしたり敗北感を与えるだけでもレベルは上がるらしい。格上だったせいで一気に1205までレベルが上がった。
何度かルトラと闘えばレベル2000越えも可能なんじゃないかな?
「あら? 私のレベルが1205になった」
「なんだと!? 若萌、何もしておらんのになぜお前のレベルが上がるんだ!?」
「……ああ、そっか。私セイバーとパーティー組んだままだった」
「ふむ。パーティーを組めばレベルが勝手に上がるというアレですか。すばらしいですな。そうです。どうせなら我等ともパーティーを組んでみられては?」
「そういえばパーティーを組むのはした事が無かったな。皆我の魔眼を恐れパーティーを組もうなどという存在はいなかったし」
「シシーもないなぁ。なんか特典でもあるの?」
「私の知っている限りでは確か互いに倒した魔物の経験値が10分の7くらいで等分されるのと、互いの簡易ステータスが見れる。後は主の記憶を見た限りでは集団戦闘時に意思のリンクができるようですね。互いに何をしようとしているかがなんとなくわかるようで、背中を確認することなく闘えて援護も的確に可能になるなどですかね」
「シシーには無用な気がして来た」
「我も必要は無さそうだな。強敵自体が見当たらんし。セイバーのレベル上げに重宝する程度か?」
外野が勝手に盛り上がってるとこ悪いんだけどさ、コイツどうしたらいいんだ?




