魔王の挨拶回り5
明けましておめでとうございます。
今年も寝正月でよろしくお願いします(>_<)ノシ
「随分と、気に入ったようだなディアリッチオ」
「ラオルゥでしたか? そちらこそ、随分とご執心ではありませんか」
「ふっ、アレの歪さは実に面白いじゃないか。お前はどこまで見透かした?」
「ふむ。つまり、我々二人は同じような楽しみのために集まったということですか。いや、同士が居るとは思いませんでした。ふふ、しかし実によい。本人に自覚が無いところが特に良い」
前を歩くジャスティスセイバーを見ながら、ディアリッチオとラオルゥはにやにやとしていた。
ソレを横目に若萌とユクリが大丈夫だろうかこいつ等。といった視線を向けて来るが、彼らにとってはどうでもいことだった。
「彼の人生というものを見せてもらいましたが、なかなかに面白いですよ」
「そんなことができるのか。我の魔眼では過去視はムリだからなぁ。羨ましい限りだ」
「よければ映像を流そうかね? 気に入ると思いますよ」
「ふむ。暇つぶしに良さそうだ。貰うとしよう」
「ではどうぞ」
身体に触れることなく意識内でやり取りする二人。もはや高レベル過ぎて何をしているのかすらわからない若萌は、とりあえず無視しておくことにした。
彼らがどのような思惑で自分たちに付いて来たのか理解に苦しむところだが、とりあえずジャスティスセイバーに忠誠を誓っている訳ではなく、彼が面白いからその行動を側で見たいという身勝手な理由であることは理解できた。
だからどういうという訳ではないが、彼らを信用し過ぎるのは危険だと理解できる。
つまり、あまり虎の威を借る行動をしすぎると、彼らの不評を買いかねないということだ。
それはつまり、いつでも簡単に魔王の座を奪われる可能性があると言う事でもある。
ソレを理解できているのかいないのか、ジャスティスセイバーはギュンターと二人、南の封印地へと向かう。
結構な距離のはずだが、魔王専用馬車を使う事でほぼほぼ時間を掛けずに横断出来た。
魔王領が本土に比べると小さいことも理由だが。この馬車の速度が速いのだ。
人間が操る馬車と違い、この魔王領の馬車を引くのは八本足のスレイプニルという馬が二頭。
これがまた無駄に速い。
御者台に乗るギュンターと俺、ジャスティスセイバーは、内部にいる他の四人の会話を聞くことなく南の封印地まで二時間程で辿りつくのだった。
馬車から降り、封印地の洞窟へと向かう。
洞窟は薄暗いだけでなく、観音扉が一つ。
取っ手を鎖でぐるぐるに巻いていかにも封印していますといった様相の部屋が一つあるだけの小さな洞窟だった。
「ここが同族殺しシシルシの封印地だ」
「シシルシ?」
鎖を解いた魔王が扉を開く。
暗い洞窟内の中央で、扉が開かれた音に視線を向けて来る一人の少女が居た。
普通の女の子に見えなくもない少女。
だが、確実に違う物が額に付いていた。
第三の眼。
「ほぅ、三眼族か! もう絶滅したと思ったが生きておったのだな」
「三眼族ですか。私が外に出ていた時代でしたらかなり居たはずですが、いつの間に絶滅に? いえ、ここに居るので絶滅ではないのでしょうが」
「うむ。我が封印される少し前にな、とある小娘により一族郎党皆殺しになってな。ああ、そうか。その生き残りがこの娘か」
年端もいかない少女は立ち上がると、入ってきた面々を不思議そうに見回す。
「おぢちゃんたち、だぁれ?」
可愛らしい声で尋ね、小首を傾げるシシルシ。
ずっと切ってない髪は好き放題に伸び、引きずる程に長くなっていて、衣類は長年着たままなせいかボロボロになっている。
無垢な少女は無防備に彼等に近づくと、両手を背後で組んで覗くように俺を見上げた。
「こんにちわ赤いおぢちゃん。シシーに何のごよぉ」
もしも予備知識無く彼女と出会っていれば。俺もただのいたいけな子供だと勘違いしていただろう。
しかし、彼女は腐っても魔神と呼ばれる存在。
とりあえずステータスを確認しておこう。真名が使えるなら使っておかないと……
名前:シシルシ 真名:シシルシ・パルパティ・カーヤン
Lv:5993
二つ名:無垢なる虐殺姫
スキル:真名無効、隠蔽とのレベル差があり過ぎて表示できません
魔法:隠蔽とのレベル差があり過ぎて表示できません
装備:隠蔽とのレベル差があり過ぎて表示できません
ラオルゥのステータスは見られたのに他の二人が見れない不思議。
俺は頭を掻きながらも少女を見降ろす。
真名無効、付いてるし……
「それで、シシルシはなぜここにいるんだ?」
「あのね、青いおぢちゃんがね、ここにいたら安全だよって言ってくれたの。迎えに来るまで待っててね。って。だいぶ前は食事持ってきてくれたんだけど、最近は来てくれないからこれ食べてるよ」
と、地面によいしょっとしゃがんで土を掴み取ると、ジャスティスセイバーに主張するように見せびらかす。
「土?」
「うん。土ぃ。慣れれば美味しいよ?」
不憫過ぎるシシルシは、朗らかな笑みを微笑んでいた。




