魔王の挨拶回り2
本日は本年度最後のお仕事。4時頃昨日の仕事が終わって帰還、8時から本日の仕事が……あっるぇ? 就寝時間どこいった?
まぁ、半日らしいし、いっか。
「ん? どうしたジャスティスセイバー。何処を見ている?」
ふいに、ユクリが気付いた。
皆の視線、といっても元魔王と若萌だけだが、の視線が一斉に集まる。
ラオルゥも興味深げに俺を見た。
「ふむ。ステータス表示か何かで我がスキルを見た。といったところか。どうだね、私の実力は?」
「あ、ああ。真名無効持ってる奴いるんだなっと、あとレベルが四ケタは初めて見たな。魔王以上の強さじゃないか」
「それはそうだ。ラオルゥは余が魔王に付く以前からここで封印されたままの神話時代の悪夢だからな」
「別に悪夢と呼ばれる程のことはしていないさ。自分の知り合いを守るために世界を滅ぼしかけただけだよ。さすがにその知り合いにまで恐れられて封印されるとは思わなかったけどね」
「魔族領にはラオルゥと同じように封印された各時代の手に負えない生物がいる。余はこれらを魔神と呼んでいるが、魔族であることには変わりない」
「神だなんて大げさなのさ。ただちょっと殺し過ぎたか壊し過ぎただけだよ。我は仲間と敵の区別がしっかりと線引き出来てる分マシな部類だと思うけどね?」
『でも封印されてるってんだから危険な生物ってことには変わりないよな。そんな生物が、くまさんぱんつか』
止めろ武藤。茶化すな。
ああクソ、こいつがまた無視返すから思わずラオルゥの下半身に視線が……
「セイバー?」
「お、おぅっ!?」
「今、何処見てた?」
「へ? いや、何も、何も見てないよ?」
若萌がじぃっと半目で睨んでいた。
何も悪いことはしてないはずだ。
なのになぜ俺はどもっている? 慌てている?
これじゃぁ疑ってくれと言っているようなものじゃないか。
「ん? なんだ小僧。我に見惚れていたか。ふふん、我が美貌にまた一人虜が増えたらしいな」
『美貌も何もナイチチズンドウで目元眼帯で見えないとか、惚れる要素があるのかね? 俺的には同じナイチチズンドウならヌェルの方が……』
黙ってろボケナス。テメェの趣味なんざ聞いてねぇよ。
「で、本当の所は?」
「いや、くまさんぱんつが……はっ!?」
武藤に返す感覚で若萌の質問に反射的に答える。
気付いた時には既に致命的な言葉を吐いた後だった。
「くま……?」
「なっ。貴様なぜそれをっ!? そのステータス表示はそこまで見えるのか!?」
意味が分からず首を捻る若萌と、過剰反応して鎖を引きちぎり飛び込むように俺の両肩を掴み揺すり出すラオルゥ。
……
…………
……………………?
「「「「「ああああああああああああああああああああああっ!?」」」」」
その瞬間、全員の声がハモった。
元魔王、ユクリ、若萌、俺、そしてラオルゥ。
全員がラオルゥが封印破って俺の肩揺すってる姿を見て思わず叫んだのだ。
「ら、ラオルゥ様!?」
「うわ、あれ? 封印……ありゃぁ、破っちった。てへっ」
「てへっじゃねぇだろ!? なにいきなり普通に破ってんだよ! あんたが出てきたら世界的にいろいろヤバいんじゃねぇの!?」
「いや、我ももう数千年あのままだったから、ずっと封印続いてると思っていたんだけど……どうも長年の封印で封印能力が落ちてたみたいだね、参った参っ……」
不意に気付いたラオルゥ。その視線が俺から自分の身体に向う。
全身を縛っていた鎖が切れ、スポーツブラとくまさんぱんつがこんにちわしている。
ラオルゥの視線に釣られるように俺もそのパンツに視線を向けていた。
「み、見るなぁぁぁッ」
次の瞬間、俺の全身が消し飛んだ、気がした。
振り抜かれた拳が俺の顔面を消し飛ばしたらしい。下半身が残っていた御蔭で血の加護が発動したからよかったが、さすがに全身潰されていたら俺も死んでいただろう。
人魚の血が10回に減った。
復活した俺を驚きの目で見る魔王とユクリ。
若萌は何が起こるか理解していたようでさっと顔を逸らしていたようだ。
「おお、魔王殺したと思ったが、あの状態で復活するのか。種族はトロールか何かか?」
「人間だよ。間違いなくな」
元魔王から奪い取ったマントで全身を隠したラオルゥは俺を消し飛ばしたことなどどうでもいいという様子で俺と対面していた。
さすがは古の魔族というべきか、人一匹殺した程度で罪の呵責などないらしい。
「ほぅ、人間とな。今宵の魔王は人間か。これは面白い」
まじまじと見つめて来るラオルゥ。
ふむっと何かを考えていたようだが、元魔王に向き直る。
「決めたぞギュンター。我もしばらく地上に出る」
ああ、そういえば魔王の名前、一度も呼んでなかったな。彼、ギュンターっていうらしい。レベル確認した時に見ては居たけど真名無効持ってたからどうでもよかったし、魔王っていう固有名詞があったから名前を呼ぼうとも思わなかった。
「バカな!? あなたが外に出ては世界が……」
「別に何かしようというわけではないよ。この魔王が何を成すのかを間近で見てみたくなった。それだけだ。近くには居るが手を出す事はしない」
今。別な意味で手を出されて一回殺されたけどな?
危険生物が俺の見学者になるらしい。殺されないように気を付けないと、折角のコンテニューがこいつの気まぐれで全部消費されかねん。




