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初めての闘い1

 翌朝、俺達は朝早く起こされた。

 騎士二人に連れられて城を出る。

 まずは戦闘を行いレベルを上げろってことらしい。


 意気揚々と大悟が先頭を歩き、やや興奮気味に矢鵺歌がその後を追う。中央を俺と若萌が歩き、眠たい目を擦りながらMEYと玲人が一番後ろを付いて来る。

 朝早いためだろうか? 城を出ると誰もいない石畳の街が出迎える。

 朝靄のかかる街は人気が無く、寒々しい印象を受けた。


 レンガ造りの街は結構入り組んでいるらしい。大通りから少し逸れる小道は曲がりくねったり坂になったりと歩くのにも不便そうな道だった。

 俺達は大通りをゆったりと歩く。

 王族や貴族であれば馬車を使うのだそうだけど、俺達は勇者とはいえ貴族扱いはされないらしい。騎士団のおっさん二人と徒歩で2キロくらい歩かされてようやく街の門まで辿りつく。


 街門の衛兵さんと付いて来た兵士が会話を始め、直ぐに開門される。

 石段を降りて歩くのはかなり整備の悪い下町だ。

 下町特有の臭いなのだろうか、糞尿の混じった臭いが鼻を付くようだ。

 スーツを着たままの俺には臭いなど関係ないのだが、皆が鼻をつまんだり顔を顰めているので俺は変身状態で召喚されて良かったと安堵する。


「酷い臭いだな」


「MORAのドブ臭い体臭より酷過ぎっ。道端に糞でもあるんじゃ……うっげ。あったよ最悪」


 MEYの言葉は的を得ていた。

 否、まさか道端に直で二階から投げ捨てたり川に垂れ流ししてるとは思わなかったけど。

 下町の環境の悪さに思わず閉口する。

 そこから先、俺達に会話はなかった。


 下町を1キロ程歩き外門へと辿りつく。

 正直毎回外出るのにこれを体験するとか無理だと思う。俺以外。

 特に汚物に対しては清潔な世界で生きてきた日本人にはかなりきつい世界だろう。


「別に、下町を通らずとも外には出れるのだ。貴族用の門や我等騎士団が向う場所はこちらの門ではないからな」


「はぁ!? だったらなんでこっち通りやがったんだテメェ!?」


「一番弱い魔物が出るのがここだ。まだ我らより弱い勇者様には他の門は無理だからなァ」


 ひゃっはと玲人に答えたおっさんはちょっと小太りの兵士だ。

 顔が悪どい気がするので小物の悪党だと思う。

 もう一人のおっさんは逆に堅物といった物腰で、隊長とか呼ばれてても不思議が無い顔立ちだ。

 これで一兵卒なんだって。この国、人材を無駄にしてるんじゃないだろうか?


「まずはあの魔物を撃破してレベルを2にするといい。パーティーを組めば10匹倒すだけでレベルが上がる」


 と、歴戦兵士が指し示したのは……毛玉のような生物だった。

 どう表現すればいいのか、雪達磨みたいな体躯につぶらな瞳。ウサギの耳と丸くて小さな尻尾が一つ。

 手も足もなく、ぴょんぴょんと飛び跳ねるウサギモドキは、この平原に大量に存在していた。


「魔物の名はにっちゃう。この世界最弱の魔物だ。攻撃力はないが体当たりで体勢を崩されることはあるから気を付けろ。飛び跳ねるのはただの威嚇だから警戒せずに切ればいい」


 経験を積むために無抵抗の魔物を殺せというのか!?

 俺の驚きをよそに、兵士に言われてパーティーを組んだ大悟が一番に駆け寄る。

 パーティー編成も行えるのか。左上に表示される自分を含めたパーティーメンバーの名前を確認する。これ、兵士達と組んで強い敵倒して貰えばパワーレベリングできるんじゃないのか?


 大悟手にしているのは国から無償で貰ったショートソード。

 草の上をただ跳ねていただけの毛玉を遠慮なく切り裂く。

 にっ!? っと驚きの声を上げて死亡するにっちゃう。

 ソレを見て自分が魔物を倒している、と興奮した大悟が一人逃げるにっちゃうたちを追い掛ける。


「はっ。なんか面白そうだな。俺も混ぜろ!」


 弱い者いじめと気付いた玲人が鉄パイプみたいな杖を手にして走り出す。

 矢鵺歌も恐る恐る借りた弓を引き絞り、ぴひゅん。

 逃げていたにっちゃうを一匹仕留めた。


「倒したにっちゃうに触れてみてください。ボタンはYESです」


 歴戦兵士に言われるまま、若萌が大悟が倒したにっちゃうに触れる。出現したダイアログをYESと押すとにっちゃうの姿が消え去った。


「アイテムが増えているはずです。確認してください」


「薬草と獣肉が入ってます」


「それがドロップアイテムだ。仲間が死んだ場合はアイテム受け取り画面でNOを選択するといい。ただし、1分ごとに画面が出て来るので必ずNOをタッチするように、でなければ仲間を自分が殺す事になるぞ。教会に向えば死体があれば蘇生可能だ」


 成る程、一度死んでも生き返れるのか。

 それだと俺の開放スキルも意味を持って来るな。だからと言って他の誰かを信頼して死亡するとかいやだけどな。余程信頼出来る奴ができたらやってみるのもありかもだが、自分が死ぬというのはかなり恐ろしい。


「つまり、アイテムさえ手に入れればその魔物を完全に倒せるけど、アイテムを取らないと復活する事もあるってことね」


「そういうことだ。理解が早くて助かる」


 若萌の確認にこくりと頷く歴戦兵士。その背後で、面倒臭そうにしているMEYに嫌味なおっさんが声を掛けていた。


「なぁ、嬢ちゃん。これ終わったら二人で食事しねぇ? いい場所知ってんだ俺」


「……」


 MEYはそんなおっさんを無視してスマフォを弄っている。完全に無視されてるのになおも食い下がる兵士。気付いた歴戦兵士が苦い顔をしている。


「なぁ、アレ注意しなくていいの?」


「すまんな。俺は平民の出だ、貴族階級には逆らえん」


 なるほど。あのおっさんは貴族様と。

 正直権力の上に胡坐を掻いてる腐れ野郎はイラつくが、下手にちょっかい出すと面倒なんだよな。

 レベルも低いし下手な関わり方しても無礼打ちされるだけだからな。勇者なのにこの扱い、どうなのこの国。

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