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魔王の挨拶回り1

 暗殺計画の方はある程度片付いた。

 もう、アレは放置でいいだろう。

 暗殺されたらされた時だ。まだ11回までなら生き返れる。


「さて、じゃあ早速最古参の長老連中への挨拶回りと行こうか。まずは中央の地下だっけ?」


「うむ。案内しよう」


 魔王に連れられて、俺と若萌、ついでにユクリが付いて来る。

 ユクリは必要なかったのだが、なぜか俺から離れようとしないので、仕方無く連れて来ることにした。

 自称妻を名乗る元魔王候補は若萌と人間族領での出来事を話のネタにして俺の後ろを歩いている。

 代わりに護衛用の魔族さんは休暇になった。できるだけ少人数にしたかったらしい魔王により留守を言い付けられたのだ。まぁ魔王がいるし実力的には最強パーティーみたいなものだから護衛必要無いってのもあるけどな。


 魔王城の廊下は寒い。

 今は夏なのか冬なのかはわからないが、多分年中こんな感じなのだろう。

 俺はスーツ着てるからいいのだけれど、どうにも廊下が大き過ぎて冷たさが際立つというか、スーツ着てても寒々しい雰囲気だけは感じてしまう。

 魔族はそこまで寒さを感じている訳ではないようで、ユクリに聞いてみれば、もう慣れたと言う事らしい。


 隠し階段を開き地下へ。

 こんな場所に地下があったのかと感心するユクリ。魔王の力が無ければ開ける事が出来ないと言われてちょっと落ち込んでいた。

 おそらく後で探検したかったのだろう。


 絶対に断ろう。魔王の力を持っているのは今のところ俺だけなので、ユクリが期待に満ちた顔で俺を見ている。

 地下のダンジョンにはかなり強力な魔物が出現するそうなので、ユクリが闘いたいようでワクワクしているのだ。

 というか、本当に率先して殴りかかって行ったな。


 哀れ、地下を徘徊していた3メートルくらいの大柄の一つ目鬼が泣きながら撲殺されていった。

 アレって魔族じゃないのか?

 元魔王に聞いてみたところ、意思のない魔物なのだそうだ。違いが分からなくて困る。


 地下に放たれている侵入者撃退用の魔物を撃破しながら最下層へ。

 結構時間がかかった。

 多分二時間くらいはダンジョン内を歩いたと思う。


 やってきたのは石室の牢屋の群れ。

 魔族の中でも数千年単位で食事を必要としない種族の中であまりにも危険な生物だけを拘束する牢屋らしい。

 今のところ一つしか使われてないらしいが。こんなところまで連行しようと思う気すらしないな。俺の代でもまず使わないだろう。


「ここだ」


「ふむふむ。父よ。なぜ今まで朕に秘匿していたのだ! この魔廊は最高ではないか。暇つぶしに丁度良いし、ペットにしたい奴も沢山いるぞ!」


「バカ者。これは侵入者撃退用だ。殺しまくれば数が減るのだ。そんな無駄遣いをするな。全く」


 脳筋娘を窘め、元魔王が扉を開く。

 石造りの小さな部屋は窓すらなく暗い。

 そんな闇の中から、恐ろしいまでの濃密な魔力とでもいうんだろうか? 謎の気配が漂ってきている。


 部屋の中に居る誰かもこちらを歓迎していないようで、入って来るなとばかりに濃密な魔力を放っているようだ。

 気圧される若萌とユクリを放置して、元魔王がずかずかと入り込む。

 俺もできるだけ恐れを隠して室内へと踏み入った。


「ほぅ、今代魔王よ。随分と弱くなったな。もう委譲の時期か?」


 年若い女の声が聞こえた。気のせいかと思ったが、相手の姿を見て納得する。

 そこには十代にしか見えない女性がいた。

 目を謎の紋様が入った黒い布で隠し、全身を黒い鎖で巻き付け拘束された状態の女性が。


「いや、委譲したのなら生きているはずもなしか」


「いや、あっている。今日は委譲の報告に来た。隣に居るのが次の魔王だ。正式に委譲したのだが生き返されてな、挨拶回りをし始めたところだ」


「ほぅ、ずいぶんとぬるいじゃないか次期魔王。否、既に魔王か」


「ああ、初めまして、それで……貴女は?」


「ほぅ、名を聞いておらぬか? 我が名はラオルゥ。世間では破滅の魔眼公と呼ばれているよ」


 ニタリと口元に笑みを浮かべるラオルゥ。

 黒とプラチナを混ぜたような煌めく髪が印象的な魔族だ。否、肌色の瑞々しい肌を持つ彼女は果たして魔族と言っていいのだろうか?


「しかし、変わった魔力を持っているな。いや、魔力ではないな。なんだこの力は?」


 俺に視線……というか黒い布に覆われたままの目を向けた彼女は、不思議そうに首を捻る。


「見える、のか?」


「私は目が封じられているからな。代わりに魔力で世界を見ている。魔王よ。お前の内部に存在する魔力はあまりないが、不思議な光り輝く力がある。同時にソレを飲み込まんとするどす黒い力も同居している。実に興味深い存在だ」


 俺はそんな彼女を強制ステータス閲覧で見てみる。


 名前:ラオルゥ 真名:ラオルゥ・セフィララ・ゴッドイーター

 Lv:6382

 二つ名:破滅の魔眼公

 状態:封絶

 スキル:破壊眼、即死眼、爆裂眼、破滅眼、真名無効

 魔法:魔闘鎧マギカアーマメント魔吸マジックアブソーブ魂喰ソウルイート

 装備:スポーツブラ・くまさんぱんつ・封絶の鎖・封印の眼帯


 スキルが少ない。真名で縛るのも難しそうだ。いや、それ以前にレベルがおかしい。

 魔王ですら999だったのに、そこを限界突破して6000の大台とか、もはや青天井のレベル差だ。

 というか……くまさん、ぱんつ?


 俺は思わずソコに視線が向ってしまうのを止めることが出来なかった。

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