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魔王暗殺計画2

「えー、というわけで、こんな感じになりました」


 結局、魔将たちが会議で決めたのは、自分たちの手を汚さず、もし露見してもコルデラ一人の責任になるよう、投降を装った色仕掛けで俺を籠絡して隙を見せた瞬間短刀で喉を切り裂き殺せ。というものだった。

 一応、コルデラ一人で俺を倒したという面目はあるわけだし、次期魔王となってもコルデラへの不満はでないだろうが、他人任せと言うのが褒められたことじゃないな。


「北方四騎将全員、南方十二将も八人全員が集結しておりました。あとは各士族長ですね。実力主義なメンバーは軒並み参加していました。私が関知するところで参加していなかったのは妖精族とゴブリン族ですね」


「妖精族は温厚そうだから分からなくもないが、ゴブリンもか?」


「彼らは考える能がありませんから。基本上司が挿げ変わろうが一番上の存在から命令という形があれば誰であれ従うようです。順位は魔王を最上級にしてあるので相手が魔王と認識されていれば必ず従います。ただ、欲望に忠実なのでしっかりと釘を刺しても暴走しますが」


 使い勝手が悪そうな部隊だ。ゴブリン族は蹂躙戦ぐらいにしか役立たないだろう。どうしてもかたくなな国を見せしめに破壊するとかでない限り温存しておこう。俺ゴブリン嫌いだし。


『ゴブリンっていやぁ凌辱ゲームの定番だよな。俺あいつら嫌い。俺は一人で楽しみたいタイプだ』


 テメェのタイプなんざ聞いちゃいねぇよ。

 しかし、忠誠誓ってくれてそうなところが一つも無いって言うのが何とも言えないな。

 妖精族についても自分たちに危害が無ければ誰が魔王でも問題無いって様子らしいし。


「そうだコルデラ。お前の士族の中に絵が上手い奴は居るか?」


「絵ですか? そういうのは書いたことはありませんが。何か成されるので?」


「魔大陸の地図を作りたい。作成チームを数チーム適当に見繕ってほしい。欲しい地図の正確さは決まったメンバーを集めてから説明する」


「初のお仕事でございますね。謹んでお受けいたします」


 臣下の礼を取ったコルデラが立ち上がる。

 もう報告が無いので帰るようだ。

 そんな彼女をああ。と声を出して引きとめる。


「そうだ。最後に今回の首謀者は誰か決まっているかな?」


「首謀者ですか? 確か北方四騎将の一人、知略のサイモンだったかと」


 サイモン。真名は確かサイモン・ダイン・パルミテリムだったか。ザッインテリといった顔立ちの魔族だった気がする。額から二本の角が生えた執事服。背中からは蝙蝠羽。メガネこそかけてなかったが、書物を持ったその姿は確かにはかりごとの好きそうな男に見えた。


 コルデラが帰ったのを確認して俺は部屋から出る。

 謁見の間に向い護衛用の兵の一人にサイモンを呼び出すように告げる。

 一応、彼のレベルなら魔王の力を貰った俺でも倒せるだろう。反抗されても撃退出来ると思う。


「それとユクリ、昨日連れて来て貰った悪魔神官、連れて来てくれないか?」


「う、うむ。やるのだな。ああ、なんという恐ろしい男だ。まさに赤い悪魔。ふふ、朕の夫に相応しい」


 戦慄した顔をしながらもニヤリと笑みを浮かべるユクリ。なぜだろう。知り合いの顔がチラついてしまうのは。

 ユクリが悪魔神官を呼びに向ったため、謁見の間には俺と若萌と護衛騎士が三人になる。

 この護衛兵は元魔王様がわざわざ選んでくれたお墨付きの人選だ。俺が人間だからと下に見るようなことはなく、ただただ忠実に魔王を守る剣であり盾であるようだ。


 そのため会話に参加してくる事も無く、受け答えすらもしてくれない。

 今日はいい天気ですね。と会話を試みても無視された。

 どうやらそうするように魔王に鍛えられているらしい。困らせるのも悪いので俺は彼らを放置することにした。




「魔王陛下。お呼びであるとか、サイモン、ただいま参上つかまつりました」


「よい、面を上げよ」


 玉座に座った俺に、階下で臣下の礼を取るサイモンが顔を上げる。

 その顔に、今回呼ばれたことに対する疑問も恐れもない。

 ただただ事務的に仕事をこなす出来る男の顔があった。


「さて、こういうことはあまりしたくはないのだが、サイモン・ダイン・パルミテリムに命令する。包み隠さず魔王殺害計画を述べよ」


「なっ!?」


 真名があるので遠慮なしに直で聞く。

 呆然としたままだったサイモンだったが、自分の口から先程コルデラが話した内容を話し始めたのに気付き、諦めた表情、そして次に堂々とした顔で俺を見ながら魔王殺害計画を事細かに説明する。

 やはりというべきか、コルデラはただの手段で、事が済み次第暗殺、あるいは誰かが殺す予定だったようだ。


「参りましたね。やはり真名を握られては謀もままなりませんか。それに、コルデラが早々にそちらに付いたというのが、可能性はありましたから驚きはしませんが、随分と早かったですね」


「彼女は己の身を庇っただけだ。結果的にお前達を切り捨てた訳だがな。さて、彼女の言葉ではお前が計画の中核だそうだが?」


「はい。計画自体を考えたのは私でございます。この頭脳を持ち、裏切り者さえ出なければ完璧すぎる作戦ではなかったかと。サキュバスの手練手管が味わえるのです。魔王様も死んで本望でございましょう?」


「悪びれた様子もなしか」


「元より我等魔族にとって裏切りは華。むしろ常に裏切られることを念頭にソレをねじ伏せる術を持たねば魔王は務まりません。そう言う意味で、今回のことは良い薬になったのではありませんか?」


 ニヤリと笑みを浮かべ、こちらを値踏みするようにサイモンが告げる。

 自分の知略で俺を傀儡にするかどうかでも考えているのかな?

 でも、悪いが君には俺を魔王と認めさせるための処刑執行者になって貰う。覚悟してくれサイモン。

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