六人の勇者4
「わ、私ですね」
名前:弓羅矢鵺歌 真名:???
Lv:1
状態:ふつう
スキル:弓術Lv1・命中強化Lv2・風魔法Lv1・危機察知Lv21・矢補充・速射・2連射・???
装備:服?・靴?・ボウガン・専用矢×10
矢鵺歌のステータス。やはり偽名なのだろう。真名の欄が???になっているし、スキルが一つ隠されている。
全体的に弓専用のスキルが多い。名前にあるように弓矢が好きなのだろうか。
「おい弓羅。テメェ何スキル隠してんだよ」
「だ、だって。奥の手は隠すべきだもん。ボス戦でお披露目なんだもんっ!」
玲人に言われて涙目で告げる。
多分このまま玲人が見せろといえば、しぶしぶ開示するんだろう。
そうなる前に俺は動いた。
まぁ、見せたくないのを見せさせるのも可哀想だしな。
「まぁ、人に見せたくないスキルだってあるだろ。次は俺でいいのか?」
「チッ」
俺が急かしたので玲人は舌打ちしてそっぽを向いた。
明らかにほっとした顔の矢鵺歌がこちらに小さくありがとうとジェスチャーするのを視界の隅に収めつつ、俺はステータスを開く。真名は隠しておこう。
名前:武藤誠 真名:???
Lv:1
状態:ふつう
スキル:変身・開放・???
装備:変身ブレスレット
「オイコラ。お前も偽名かよ!?」
「いや、正義の味方としての名前を告げるのもこの世界じゃ意味がなさそうだしな。一応ジャスティスセイバーというんだけど……あ、いや。知らないなら良い。やっぱ真名は無しで武藤誠の方で頼む」
「開放ってスキルは何? 奥の手かな?」
大悟に言われ、俺はスキル欄の詳細を見る。
開放:HPが0になった瞬間発動。ハンディキャップを無くしスキル全てを開放する。
……死亡してからのチートスキルかよ!?
ダメじゃん。多分この開放で俺の正義の味方としてのスキルが開放されるんだろう。
残念ながら、俺は一度死ぬまで使えないみたいだけどな。
そして死んだらそこで終わりだけどな。
あまりのショックに項垂れた俺。矢鵺歌があわあわと俺を元気づけようとしているが何をすればいいのか分からずあたふたしている。
代わりに、若萌がスキルを表示した。
名前:河上若萌 真名:河上若萌
Lv:1
状態:ふつう
スキル:剣術Lv1・光魔法Lv1・???・???・???
マジック:???・???・???
装備:服?・靴?・???・???・弓紋章のブレスレット
「オイコラ!? 殆ど全部何もねぇじゃねぇか! 隠し過ぎだろテメェは!?」
「あら。女は秘密が多いモノよ。それに、見知らぬ他人に自分のスキルを教える方が私には不思議だわ。これは自分の奥の手よ。相手が知ってれば対策をされるかもしれない。出来るだけ秘匿した方がいいのよ」
そうでしょ? と不敵に微笑む若萌。大悟も玲人もそれ以上彼女の開示を求めようとはしなかった。
多分どれだけ凄んだところで彼女が開示する事が無いとわかったのだろう。
そんな若萌は俺に視線を向ける。
「どうした?」
「いいえ、何でも無いわ正義の味方さん……ええ。なんでもないの」
どこか見覚えのある横顔を見せ、彼女は視線を逸らす。
この世界に召喚される前、俺に手を伸ばした少女の横顔に似ている気がした。
自己紹介とステータスの開示が済むと、次に行うのはこの世界と自分たちを取り巻く環境に付いて。
「当然。魔王退治だよね!」
張り切る大悟と控えめながらノリノリな矢鵺歌。二人はゲーム脳というべきか厨二病というべきか。夢に生きていた彼らにとって夢が現実になったのだからテンションが上がるのはいい。でも、そういうゲーム脳だからこそ裏も考えてほしい。
「魔王なんざ良く分からないモンに喧嘩売るのかよ。俺は嫌だぞ」
「あたしもぱ~す」
反対派は玲人とMEY。二人は自由人なのでこの世界で生きる気は無くさっさと帰りたい。でも帰るのに魔王退治とか面倒なことしたくもない。
そんな感じでここでゆったりしとくからあんたたちで倒してきたら。という主張である。
護衛の兵士達が思わず全員で事に当ってくださいと苦言を言う程にやる気がなかった。
「それはいいけど冨加津くん、弓羅さん。本当に魔王退治すれば元の世界に戻れるのかも、この国が正しく魔王が敵なのかも分かっていないのに安請け合いしていいのかしら?」
「うぐ。それはそうだけどさ。ほら、いきなり奴隷の首輪付けられたりしたわけじゃないし、ステータスを確認させろとかも言われてないし、結構僕ら自由じゃないか。それってそれなりにこの国が信頼できると思わない?」
「た、確かに情報収集は大切だけど、とりあえずはこの国にいるんだし、わざわざ反発する必要ないと思う、です」
まぁ、この国の闇を目撃したわけでもないのだから普通にこの国に従っといても問題無い気はしなくもない。
現状は世界情勢もわからないから、ひとまず今日はこの城に泊り、明日から少しづつ情報を収集する。ということで俺達は纏まった。
そして、与えられた部屋で俺達は眠ることにした。