非情なる決闘2
「クックック、頭を垂れ這いつくばり靴底でも舐めるのなら今ならば許してやらん事もないぞ?」
最悪な事をのたまうユクリティアッド。長ったらしいからもう、ユクリって略しちまうか。
ユクリは両手を腰に当ててふんぞり返っている。
尻の辺りから擬人化したミュータンス菌みたいな尻尾が生えていて、ぶんぶんと振られてるのが犬が尻尾振ってるみたいでかわいい。
ちょっと触ってみたい。でもセクハラになりそうだから止めとこう。
ここは駐屯地の練兵場。
丁度良い広さの場所があったので場所を移したのだ。
おお、木に藁巻いた藁人形がある。数本所々欠けてるのが長年使われてる感を醸し出している。
そろそろ新しいのに替えてやれ。
兵士たちも俺達の実力に興味津々らしい。俺達を囲むように魔族が集結し、にやにやと笑みを浮かべている。
アイツ死んだな。とか聞こえるんだけど、俺が簡単に殺される位には目の前のユクリさんは強いらしい。
ふーん、どれどれ?
名前:ユクリティアッド 真名:ユクリティアッド・ミークラトス・フレイアスティラ
Lv:542
状態:ふつう
スキル:ホーンアタック・雷電ホーン・三十六連撃・スタンウィップ・梱包……
魔法:悪意之羽、ディ・ム、ディ・ムナ、ディ・ムナシス、ダ・クネ、ダ・クネム、ダ・クネムロート、呪怨之柱……
装備:魔王のブラ・魔王のショーツ・ブラッディスコーピオ・魔王のマント・反射の腕輪
……装備品が魔王だらけなんだが。
しかもスキルと魔法に【……】というのがある。意識して見ると、どうやら覚えている魔法やスキルが多過ぎるために省略されているらしい。
というか、レベル、レベルが100突破してるじゃないか。俺らまだ30ちょっとだぞ。勝てるわけがない存在だ。そりゃ瞬殺されるとか言われる訳だ。
「ふっ。折角だハンデをやろう。一撃だけ、好きに攻撃すると良い」
「余裕だなユクリティアッド。本当に何でもいいのか」
「構わんよ。朕を倒せるものならやってみるがよい人間。たった一度だけチャンスをやろう」
上から目線のユクリ。仁王立ちして両手を胸の下で組む。巨大な胸が腕に押されて強調された。
『おいおいお嬢さん、こいつにそんな無防備に胸見せちゃダメだぜ。赤い悪魔が増長すっぞ』
黙ってろクソ野郎。戦闘中どうでもいいこと言って来るようだと潰すぞ。
『いや、ナビゲーターを殺せないっつの。まぁ一応、今回は大人しくしておくさ、今回は』
いちいち癇に障る野郎だ。
なぜ俺はこいつをナビゲーター等に選んでしまってるんだろう。ぜひとも別人に交代をお願いしたい。
でも無意識で変化させられるということなので、俺自身がこいつにナビされたいと思ってしまっているという事なのだろう。自分で自分が嫌になる。
「では、戦闘開始! 貴様の力を見せてみろ人間」
ここの隊長格らしいあのデスクの椅子に座っていた男が告げる。
あの後聞いたのだが、スクアーレさんというらしい。
ちなみにユクリの執事みたいな男はバトラというそうだ。
「さぁ、来るがいい」
「まぁ、やるだけやるか」
俺はセイバーをロードする。
若萌が不安げに見て来たが、大丈夫。既に攻略の道は見えている。
というか、一つしかない訳だが。
「行くぜ、ジャスティス。打ち砕け、セイバー!」
ぶぅんとセイバーを振って構える。
輝きを放つセイバーにほぅっと感嘆の息を吐くユクリ。
きっと低レベルにしてはイイ攻撃力だ。とでも思っているのかもしれない。
「秘奥義・ギルティースマッシャ――――ッ!!」
俺は構えたまま走り寄る。
肉薄したユクリに渾身の一撃を叩きつける。
……ように見せかけ耳元に口を寄せた。
「ユクリティアッド・ミークラトス・フレイアスティラに命令する。この一撃を受けた瞬間後方に吹き飛び倒れ、敗北宣言しろ」
「っ!?」
小声で伝えた瞬間、ユクリの目が見開く。
そして、正義力を存分にため込んだセイバーの一撃がユクリに激突した。
「うーわー、やーらーれーたー」
大根役者も真っ青なくらいに棒読みの台詞で倒れるユクリ。
周囲の魔族が呆然とその光景を見つめていた。
そのまま背中からどぅっと倒れたユクリは動かなくなる。
「え? あの……ユクリティアッド様?」
「朕の負けだ。潔く王法に則る」
「え? はぁ? はあぁっ!?」
スクアーレが目を飛びださんばかりに見開き想定外といった声を吐き出す。
敗北宣言を告げた瞬間、命令が解けたユクリもまた呆然と自分の行動を信じられない面持ちで空を見上げていた。
若萌、勝ったぞ。って、おい、なんでそんな頭を抱えている?
『何のためらいもなく使ったな相棒。素手の闘いに核兵器持ち出すようなもんだぞ今のは』
いや、でも、勝てないだろ普通に戦ったら。




