エルフの森攻略戦4
「セェッ!」
エルフの男が突撃して来る。
ぼんやりと光る剣を振るい、兵士を切り裂き包囲を突破、隠れて様子を見ていた俺達に接近してくる。
気付かれたか。
「そこにも居たかッ!」
「見つかった!?」
驚く矢鵺歌。その横を走り若萌のセレスティアルフェザーが煌めく。
響く剣撃。セレスティアルフェザーの切れ味でも切り裂けなかった!?
剣同士の連続した接触。死に物狂いで剣を振るエルフの男に、次第若萌が押され始める。
怯える矢鵺歌は使えない。
スケイルは逃げたらしい、見当たらなくなっている。
あのおっさん、ほんとイイ性格してやがるな。
MEYは槍を構えたまま戸惑っている。
多分貫いていいんだろうか、私に出来るんだろうか? みたいな逡巡をみせているんだろう。
やっぱり俺がなんとかするしかないようだ。
叢から飛びだしエルフ男のすぐ隣に移動。
驚くエルフ男の脇腹に拳を叩き込む。
くの字に折れる男の唾が飛び、若萌が咄嗟に横に避けた。
「ごめんっ」
サイドステップで地面を踏みしめ、若萌の剣が煌めく。
剣の腹を思い切り打ちつけエルフ男を吹っ飛ばす。
流石に切りつけるのは躊躇ったか。
「誠!」
あぶなっ!?
エルフ男に意識をしていたせいで危うく顔面に矢が突き刺さる所だった。
ぎりぎり避けたが少し掠った。
「避けられた!? あんな近くで!?」
「矢鵺歌さん、あそこよ! 矢鵺歌さん?」
「ダメだ若萌、矢鵺歌とMEYはしばらく戦闘不能!」
「わかったわ」
二人は使い物にならないと判断した若萌が走る。
無数の矢を飛ばして来るエルフ女へと駆け、迫る矢を悉く打ち払う。
一本の剣では足りないと二本目の剣をアイテムボックスから取り出し、双剣で矢を弾きながら手早くエルフ女へと肉薄した。
「クソッ、人間がっ」
「悪いけど寝てなさい!」
弓の端を思い切り打ち込んできたエルフ女より早く、彼女の脇腹を思い切り打ち抜く若萌。
かはっと息を吐きながら、エルフ女が木から落下。
咄嗟に受け止める。
「あら、あなたも来てたの?」
「一応フォローできればと、敵をフォローしちまったけど」
「その子は男の方と一緒に寝かせときましょ。運が良ければ生き残るでしょ」
言われるまま、うずくまる男の横にエルフ女を連れて行く。
男は信じられないと言った顔で、苦悶混じりに俺を見上げる。
「何を……している? トドメを刺せばいい」
「残念だが、俺達はエルフを殺さない。それより教えてほしい。人間たちと魔族たちの戦争に巻き込まれるのは分かっていたことだろう。なぜこの森から逃げなかった?」
「貴様、人間ではないのか? そうか、何も知らず協力しているのか……ふふ、滑稽だな操り人形め」
「そうだな。だが俺からすればお前らも同じだ。流浪であれ逃げればまだ芽はあるだろうに」
「ソレは……ムリだ。この森にある精霊樹が我等のよりどころ。アレが切られればどの道我等は生き残れぬ。精霊樹と共に生き、精霊樹と共に死ぬ、それが我等エルフだ」
なるほど、精霊樹とやらが切り倒されるとエルフ死ぬのか。だから必死にこの森を守ると。
人間達はこのこと知ってるのか?
知らなかったら奴隷商なんていないか。いや、もしかして知らずに切り倒して消えて驚く。とかありうるかもしれないな。
だが、結局俺にはどうにもできないことだ。
エルフには悪いがこの森から出られないなら脱出を手伝う意味もない。
俺はこの隙に若萌と脱出するしかないだろうな。丁度スケイルもいなくなったみたいだし。
若萌と警戒しながらMEYと矢鵺歌の元へ戻る。
二人の震えもようやく止まりだしたようだ。
ふはぁと緊張を解いた二人が息を吐く。
「おやおや、お二人はお疲れのようですね」
「げっ」
思わず口から洩れた言葉を慌てて手で塞ぐが遅かった。
「なんですかな。私が居ては何か拙いことでも?」
どこかに行っていたはずのスケイルがいつの間にか戻って来ていた。
流石に近くで息を潜めて見られてたか。
MEYと矢鵺歌をフォローしながらだとこいつを振り切るのは難しそうだな。
俺は思わず若萌を見る。
若萌も同じ考えらしく、コクリと頷いて来た。
最悪、MEYと矢鵺歌を放置しないといけないかもしれない。
俺達は無言になりながらゆっくりと進み始める。乱戦の中心に向う程に激戦が繰り広げられている音が響いて来る。
そんな戦場の側面を縫うように移動していると、丁度エルフの別働隊にぶつかった。
どうやら背後に回って挟撃するつもりだったらしい。
数はそれ程多くない。目に見えて10体くらいだ。
人間を見付けて舌打ちしながら剣を引き抜く。
若萌も舌打ちして双剣を構え、MEYが震えながら槍を構える。
矢鵺歌も弓に矢を番え、狙いなど出来ないほどに両手をカタカタと揺らしながら狙いを付ける。
俺も両手を構え、突撃を開始する。さぁ、戦闘開始だ。




