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エピローグ

 ……ろ……おき……

 何かが、聞こえた気がした。

 まどろみに沈む意識が少しずつ覚醒していく。


 ずっと、このままで居たい。

 現実など、もう見ていたくない。

 そう、思っていた。でも、声に誘われるように、そいつの意識は覚醒してしまう。


 黒い世界から、光溢れる現実へ。

 ぼやけた視界に映るのは青空。

 まるで今までの事が夢のように、晴れやかに冴えわたっている。


 鳥の群れが飛行する、そんな空を見つめていた。

 自分の体は横たわっているようだ。

 ただ横になっている訳じゃない。冷たい。


 身体の半分以上を包み込むような水が、周囲にあった。

 飾りを解かれた髪が水に浮かんでたゆたっている。

 女はぼーっと、ただただ空を見上げていた。


 なぜ、自分は生きているのだろう。

 なぜ、死んで無いのだろう。

 ゆっくりと上げた手で腹を撫でる。

 血はなかった。傷もなかった。

 あの出来事は全て嘘だったかのように、ただ、彼女は湖の上で空を見上げて生きていた。


「ようやく目覚めたか」


「……え?」


 不意に聞こえた声に、身体を持ち上げる。

 身体を動かしたことで水に沈んでしまい焦ったが、直ぐに水底に尻が付いて上半身を起こせた。思ったより水嵩は少なかったようだ。


「運がいいというべきか、生き汚ないというべきか」


 視界が動き、周囲を映す。

 ようやく彼女は現状を把握した。

 彼女のすぐ近くに、呆れた顔の子供がいる。短パン姿の少年は、女が自分を見たことでようやく息を吐いた。


「僕様が来た時に丁度アイテム入手ボックスが出たからな。運が良かったな。僕様が復活魔法を知っていてな!」


 ふふん。と告げる少年は、見たことのある人物だった。


「えっと……ルトラ……だっけ?」


「そう、魔神ルトラ様だ! お前は確か、MEYだったか?」


 問われ、MEYはこくりと頷く。


「なんで、私生きて?」


「僕様に聞かれても困るぞ。そうだな。しいていうなれば、湖に落下して、溺れ死ぬより先にディア様の一撃で森と共に湖の水嵩が消し飛んだのだろうな。その御蔭で溺れ死ぬこともなく、水の御蔭でディア様の魔法によるダメージも極限まで減ったのだろう。あとはお前を生かすためにそいつが頑張っていたくらいか」


 そいつ。と言われて傍らを見る。

 そこには小さな木があった。

 若木と呼べる小さな、枝のような木が、水溜りの中に一本だけ突き立っている。


「霊樹の若木か。お前はよほどそいつに愛されているらしい」


「霊樹……ラオラ、なのかな」


 ふふっと笑みが零れた。力無く、若木に触れてみる。

 なぜだろう、凄く愛おしいもののように感じる。


「まぁいい。生きていたならさっさと帰れ。セイバー共は既に引き上げてしまったぞ。神どもなら定期的に見に来るらしいからギュンターの所に行って厄介になっていろ。しばらくしたら異世界とやらに戻れるぞ」


 そう告げて、ルトラは立ち去る。

 と、思ったのだが、彼は湖の近くにしゃがみ込むと、何かを土に埋め始めた。

 起き上がったMEYは立ち上がり、彼の側へと向かう。


「何を、してるの?」


「ディア様の森を再生させるのさ。僕様がこの森を再生する。いつかディア様が戻ってきた時に、胸張って紹介出来るようにな」


「土に埋めるだけじゃダメでしょ……ねぇ、それ、私も手伝っていいかな?」


「うむ? 構わんが……面白くもなんともないぞ? 何年も掛かるし」


「それでも、ラオラの居た森が戻るなら、手伝わせて」


 一人の魔神と一人の人間が植林を始める。

 共に故人を偲ぶように、寄り添いながら荒れ地に緑を植えていくのだった。

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